第7話 いざ、五番棟へ

なし崩し的に元カノである田中咲たなかさきを加え一緒に団地へ行くことになった。まぁ後輩達、特に須永に元カノという事を伝えると面倒なので黙っているが。


「へ〜、ここが噂の五番棟なんだ〜」

五番棟を前にして田中さんは呑気にそんなことを言っている。

「田中さん、無理して来なくても良いんですよ」

「須永さん気を遣わなくても大丈夫だよ、私一人だと怖くて行けなかったけど眞上君と一緒だったら平気」

なんか知らんが二人の間で火花が飛び交っている。

「先輩も隅に置けないっすね〜」

羽原はニヤニヤしながら面白がって何やら言っているが無視無視。

「よし、じゃあ中入るぞ。まだ夕方だが、中の電灯は切れてるみたいだし懐中電灯を使って探索するぞ」

「私、持っていないんだけどどうすればいい?」

「田中さんは急遽だから仕方ないな。絶対に皆とはぐれないようにしてくれ」

「分かった、そしたら眞上君の手を繋いでいるね♪︎」

と言うと、急に田中さんは俺の左手を掴んだ。

「へ?」

「だ、ダメですよ!!田中さんは私とくっ付いて行きましょう」

須永は無理矢理その手を引き剥がし無理矢理手を繋いだ。ちなみに須永は怖いのが苦手という訳では無いがビビりなのでこういう場合、羽原に引っ付いてる事が多い。まぁこれで穏便に済むなら良いだろう。

「え〜、じゃあ私が空いちゃうんで先輩と腕組んで良いっすか?」

羽原な自分の腕を俺の腕に絡ませてきた。羽原…、丸く収まろうとしてるんだから火種を産まないでくれ…。

「む、むむ、しいちゃんなら仕方ないかな…」

意外にも羽原は許すそうだ。

「あー、もう決まりなら、さっさと入るぞ。夜になったらヤバそうな匂いがプンプンする」


そうしてようやく中に入り出した。通路は予想通り電灯がついていないので気を付けて進む。廃墟化してるだけあり通路は割れたガラスやゴミなどが散乱している。

「お前ら、気を付けて進めよ。転んでガラスとかに切ったら危ないからな」

「わ、分かってますよ、先輩。舐めないでください」

とビビりの須永は早速テンパっているようだ。横の田中さんを見ると須永の様子を見て苦笑いをしている。


「あーあ、入っちゃダメって言ったのに」

何処からか呟く声に俺達は全く気付かなかった。

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心霊現象と恋愛の修羅場が怖い件。 @rook0819

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