第4話 エピローグ

 目が覚めたときにはヘリオス駅の医務室のベッドの上だった。

 列車が駅に到着してからはいろいろあったそうだ。

 まず鉄道警備隊によって、乗客たちは駅から各々の家まで護衛された。

 次に清掃部隊によって車両内の清掃が行われた。もちろん悪魔達の残骸もだ。

 最後に亡くなった方々への弔いのために町の僧侶たちが祈りを捧げた。


 あれから僕は負傷した右腕を治療するため町の病院へ移り、一週間入院した。


「……右腕は大丈夫かね?」

「おかげさまで。普段通り動くようになりました。」

「そうか。それはよかった。」


 医者によるとひとまず明日には退院できそうだということだ。


(退院したら兄さんに会いに行くか。)


 そうぼんやりと考えながら自分の病室に戻ると、ポールさんが居た。

 なにやら神妙な面持ちだ。


「あの時は僕の代わりに悪魔を倒していただいて、本当にありがとうございます。」

「いや!!お礼はいいんだ!!それよりトキオ君、君はお兄さんに会うためにこの街に来たんだったね?」

「はい。そうですけど。」

「実は君のお兄さんから伝言を頼まれてね。」

「え!!??」


 兄からの伝言によると、兄もこの街で「悪魔狩り」をやっていて、様々な悪魔討伐の依頼をこなしていたらしい。そんななか、上司たちに今までの悪魔討伐の実績を買われた兄は、最も地上に近い大都市「セントラル」の中央警備隊に推薦され、ちょうど一週間前の便でヘリオスを発ったそうだ。


「じゃあ僕が怪我していなかったら、兄さんに会えたかもしれなかったんですね……」

「まあそうなるね。だがそれは仕方ないじゃないか。命を落とさなかっただけ幸運だよ。」

「それもそうですね。」

「いいではないか!!お兄さんは、君が意識が戻らない間なのにわざわざ発つ前に伝言をしてくれたんだ!」

「……」


 大都市「セントラル」は地上に一番近いだけあって、常に悪魔の侵略の危機に晒されている。それこそ他の都市と比べものにならない危険度だ。そんな都市の警備隊に呼ばれた兄と比べて、僕は……


「トキオ君!!今より強くなればいいのだよ!!」

「ポールさん……」

「君のお兄さんもこの街で強くなった。ならば君もきっと兄さんのようになれるはずだ!!そうすればいずれお兄さんに会えるさ!!」

「……そう、ですね。そうですよね。これから強くなっていけばいつかクニオ兄さんに会えますよね。」

「ああ、そのとおりさ!!」


 それから僕は無事退院したが、マロニエには戻らずこの街で暮らすことにした。

そして「悪魔狩り」としてもっと強くなるために、この街の様々な悪魔討伐の依頼をこなしていくのであった。

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悪魔狩りをしてた僕が、明るい僧侶と地下鉄に乗って生き別れの兄に会いにいく アイスティー・ポン太 @icetea_ponta

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