第3話 耐えろ!!!
乗車して4時間が経過した。あと1時間だ。さすがに悪魔の襲来はないだろう。
と、思った矢先に緊急ベルが鳴った。後方の10号車からだ。
緊張が走る。
「……ポールさんっ!!」
悪魔が襲撃してるかもしれないという状況なのに、この僧侶は呑気に
寝ている。起こしても起きない。なんて男だ。
「早くいかなきゃ……!」
仕方がないので、自分1人で10号車へ向かった。
向かっていく途中で、大勢の人が悲鳴を上げながら前方の車両に逃げていく。
10号車に着くと、そこには数名の遺体が転がっていた。「悪魔」にやられた乗客達だろう。
「……!!」
急激に吐き気を催した。血の匂いのせいか、それともこの無残な光景のせいか。
悪魔はガーゴイル型が2体、ケルベロス型が3体いた。
ガーゴイル型は去年と3年前に一人で、ケルベロス型は8年前と5年前にニコライおじさんと共に討伐したことがあるが、いずれも相手が単体だった。こんな数の悪魔は相手をしたことがない。
……これは厳しい。だけどやらなくてはならない。
銃を持つ手が震えるが、ひとまずケルベロス型の一体に発砲する。銃声が響く。
「!!!」
悪魔たちが僕に気づいた。
撃たれたケルベロス型一体は後方に吹き飛んだが、残りの悪魔達は一斉に僕のほうに向かってきた。
まずい。怖い。
僕は無我夢中で発砲した。何体かに銃弾が命中したが、銃弾を避けて襲いかかる一体のガーゴイル型の突き出した槍が右腕を掠めた。
「……っつ!!!」
幸い致命傷にはならなかったが、痛さと恐怖でもう動けなかった。その時だった。
「トキオ!!逃げろ!!走れ!!」
という声がする方向から2本の短剣を手にしたポールさんが走ってきた。
「あと40分だ!!もう少しで駅に着く!!あと40分耐えれば大丈夫だ!!だから逃げろ!!」
そう叫びながらポールさんは二体の悪魔を必死で切り付ける。
本当は今にも走って逃げたいのに体が動かない。右腕から流れる血を見ると余計に怖くなってしまった。
「動けないんです!!!怖くて!!!」
「じゃあ動くな!!私が倒すまで耐えろ!!」
その時ほど、僕は自分自身のことをとても情けない奴だと感じたことはない。
同時にポールさんがこれほど頼もしく感じたことも無い。
ポールさんは飛びかかってくるケルベロス型の喉を目がけて右手の短剣を思いっきり突き刺した。次の瞬間にガーゴイル型の槍がポールさんを襲うが、ポールさんはその槍を掴み、逆に引き寄せてそいつの頭上に左手の短剣を深々と刺した。
そうしている間に先ほど僕の銃弾を受けた悪魔達が起き上がり、こちらへ向かってくる。
「トキオくん!上出来だ!!君の銃弾のおかげでまとめて仕留められる!!」
そうポールさんが叫ぶと、懐からまた2本の短剣を取り出し、向かってくる悪魔達を切り付ける。悪魔達は悲鳴を上げながら車両の床に倒れ、もうどの悪魔も動いていない。
「これで全部だろう!40分も耐える必要はなかったなトキオ君!」
その声を聴いた後、急に目の前が暗くなって倒れた。恐らく気絶してしまったのだろう。
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