第2話 : 虚無

彼女の名前は朝比奈 美麗。名前負けしない整った容姿に透き通るような白い肌、櫛なんて必要ないかのような綺麗な髪。あぁ神様って不平等だな、そう思わずにはいられなかった。大人しい性格とは裏腹に、はっきりと自分の意見は言える強さも持っている。同性から見ても、魅力のある人間だなぁと思ってしまう。


そんな神崎カップルは完全に神崎君が尻に敷かれていると言っても過言ではないだろう。神崎君はスマホに彼女の写真フォルダを作ってしまう程、彼女のことが好きらしい。間違いなく彼らは学校でうらやましがられる、お似合いのカップルだった。


私自身、今となってはどうして彼のことが好きなのか、わからなくなっていた。負け戦はしない。そんなの当たり前のことなのに。そもそも彼女持ちを好きになるなんてどうかしてる。自分でもそう思っていた。けど、気づけばいつも視線の先にいるのはなぜか彼なのだ。


「消しゴム貸して!」

不意に神崎君が私の顔を覗き込む。あぁ忘れてた、今私好きな人と席となりだったんだった。

「もぅ また?」

呆れた顔を作りながらも、実は私の筆箱の中には消しゴムが二つ。こんな風に話かけてくれることでさえも楽しみにしてしまう私。きっと、彼に溺愛されている彼女にはわからないんだろうなぁ。なんて思いながら消しゴムを渡す。

「あざす!ほんといつも助かるわ~」

なんて、彼は今日も無責任な笑顔を向けてくる。



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君は高嶺の花 桔梗 栞 @kikyo_000

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