10話.[離したくないわ]

「純華っ、こんな時間までどこに行っていたのっ」

「遊びに行くって言っていたじゃない」


 自分のベッドに寝転んであたしは悪くないわよという態度で言ってくる姉にむかついた。

 むかついたので真上にダイブしてそのまま着地する。


「ぐぇっ!? な、なによ……」

「……お母さんに言った」

「知っているわよー……、聞かれたからね」


 してもらってばかりだから自分が頑張らなければならないと思った。

 でも、だからって勇気を出している間に遊ばれるのは複雑というか……。


「痛い痛い……、なんでそんな強く抱きしめるの?」

「あんたって馬鹿だよね」


 なんで罵倒されているのか。


「……別にあんたを選んだのは同情とかじゃないのよ?」

「そうなの?」

「当たり前じゃない、……少しでもそういう気持ちがなければ妹に告白なんてしないわ」


 そうだったんだ。

 一時期はあれだったけど、基本的に優しかったから今回もそれだと考えていたんだけど。


「途中で帰りたかったわよ、あんたをこうして抱きしめたかった」

「帰ってきてくれれば良かったのに」

「あたしはまだ2年だからね。3年だったらどうせすぐ関わらなくなるからって適当な態度で接しても問題ないんだけど、残念ながらそうではないから。あたしだって同学年に友達がいてほしいのよ、あんたにとっての由乃と縞のように」

「そうなんだ」

「うん。でも、あんたを放っておくことになったのは反省してる」


 いや、今日のはあくまで帰宅時間が遅かったから文句を言いたかっただけ。

 束縛なんかするつもりはない、お友達を優先してくれればいい――って考えているけど実際のところは難しかった。


「……あと、嬉しかったわ、大好きだって言い切ってくれて。あたしは怖くてお母さんに言えなかったから……余計にね」

「適当に付き合っているわけじゃないよ、だから堂々としてやろうと思ったの」

「うん」


 実際は後ろめたいことをしているようで嫌だった。

 あと、母の前ではお姉ちゃん呼びや、距離感を戻さなければならなかったから大変だったというのもある。

 急に入ってきたときなんかには心臓が飛び出そうになったし。


「きっかけなんかどうでもいい、私は純華のことが大好きだからっ」

「うん、ありがと」

「だから……、純華はいつかやめるつもりなのかもしれないけどさ、私はずっとこの関係でいたい――」


 ああ……、これではまるでそうしてほしくて言ったみたいじゃないかと内で呟く。


「大丈夫よ、あんたがやめたくなるときまではこうしておいてあげる」

「ありがと」

「いまは間違いなくあんたを離したくないわ」

「大丈夫だよ」

「あはは、それならいいけど」


 大丈夫、悪いようにはならない。

 将来どうなるのかは分からないけど、いまは絶対に。

 もっと、もっと仲良くなれればいいなって私は考えた。

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35作品目 Rinora @rianora_

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