ロングケープアイランド王国第3皇女スタンフォード・アリア。それは現実世界で下位カーストに所属する田中瞳が、せめてネット上ではカースト最上位を演じたいとの願いを叶えるため作り上げたVTuberの姿だった。そして今宵も演じるのだ。わがまま気ままな皇女アリアを。
なによりもまず、リアル! 設定はもちろん、瞳さんがアリアさんを作り上げた事情も不調な滑り出しも彼女の苦悩も、なにもかも。
VTuber業界はとにかく個人勢の新規参入が困難な世界です。加えて瞳さんの生きる現実世界は辛くつまらない。でも、それらがしかと敷かれているからこそ、瞳さんの挑戦は物語としての熱を宿し、彼女とは真逆なアリアさんを通して得ていくものに説得力が生み出されるのです。
そしてこのアリアさんですよ。瞳さんであり、瞳さんではない「理想のアイドル」として機能する、キャラクターでもあり舞台装置でもある存在、すばらしいのひと言です。
VTuberとしての挑戦劇とひとりの女性の成長劇、同時に味わえる素敵なお話です。
(「次元の狭間に輝くVTuber」4選/文=高橋 剛)