第4話 Daughter

「フミルのアニキ、大丈夫でしたか?」

「流石にマズイぞ。ログハウスが吹っ飛んだからなぁ」

「もしかして、アニキが一枚噛んでるんですか?」

 自宅で震えながら電話しているのはスケイレだ。彼はメモ用に取ったペンで何かを書くことわけでもなく、クルクル回すばかりである。

「ああ。俺が関わっているというか、俺が裏で糸を引いている」

「はぁ」

 間髪入れずにフミルは続ける。

「今、お前の家に表向きの責任者が向かっているから、匿っておいてくれ。良いな」

「いや、それは無理で......」

「誰がファミリーに入れてあげてやったと思ってる?」

「はぃ」

 どんどん声が小さくなるスケイレ。彼の額には脂汗が溢れていた。フミルに断ることもなく電話を切られ、どうしようもなくなっている現状がスケイレに訪れている。スケイレは落ち着くためにタバコに火をつけようとするも、ライターの火はで消えてしまった。


 -1時間後

「すみません。フミルさんの紹介で来たトッシュという者です。連れはいません」

「とりあえず、入れ」

 スケイレはコップに水を注いで、トッシュに出した。トッシュこそが、ログハウスでの一件を高台から見ていた張本人である。

 コンコンとドアを叩く音が聞こえてきた。

「連れがいるのか?」

「いや、連れは街の方に逃しているので、ありえないかと」

 鳴り止まないノック音。仕方なくスケイレがドアを開けに行くと、開ける直前で

 ───ドアが真っ二つに切れた。


「お邪魔します、スケイレさん」

 入ってきたのはグリーズだった。彼はずんずんと室内に入ってくる。すると、トッシュの方が待ち切れずに、拳銃をグリーズへ向けた。

「お前は昼の野郎だな。こうなりゃ、ぶっ殺すしかねぇ」

「待て待て。コイツは俺の部下だ。グリーズ、まずは話をしよう」

 割って入るスケイレが一番動揺している。トッシュは未だに銃を構えたままであった。そして、グリーズがイスに座るふりを挟み、もう一度剣を召喚した時、トッシュはその引き金を引いた。

テンペスタ


「うっ。な、なんで俺を」

 地面に倒れたのはスケイレの方であった。トッシュは目の前で起きたことを理解出来ず、呆然としている。

「スケイレさん...... まぁ、この剣の風が原因なんだけど」

 トッシュが放った銃弾は剣が纏う風に弾き返されたのだが、グリーズはその反射の角度をスケイレへ合わせていたのだ。

「このバケモノめ!」

 トッシュが叫びながら拳銃を数発放つも、全くもって当たる気配はなかった。トッシュの手は震えていて照準が定まらないのである。

「あんまりうるさくしないでくれ。変に警察とか来たら困るんだよ」

 そう言いながら、グリーズはトッシュに剣を振り下ろし、辺りに血が飛び散った。


 それから数十分して、マローナとロッソがやってきた。グリーズは必死にスケイレを手当てしている待っていたのだった。

「これは?」

「もう遅かったようだ」

「一応、私は捕まえることに成功したわ。ロッソは焼き殺したみたいだけど」

「火加減間違えたんだっつーの。そんなに責めないでくれよ」

「後は本部の方に頼んでおいたから大丈夫よ。私たちはローザちゃんのところへ行きましょ。話があるの」


 -翌日

「おはよう、ローザちゃん」

 朝日が差し込む民宿の一部屋。ここはマローナがローザを泊めるべく、顔の効くこの民宿を手配したのだった。

「おはよー。マローナお姉ちゃん」

 二人が朝食のシリアルを食べ終わったところで、ロッソとグリーズも別の部屋からやってきた。

「どうも〜」

「やあ......」

「あんたたちも、レプちゃん。じゃなかった、姉さんの部下だったのね」

「マローナと違って、俺らは部下ですか」

 眠たそうなロッソと昨日のことが少し気がかりなグリーズ。話のネタは、ローザの刻証マークについてだった。

「ローザちゃん自身は大きな薔薇について何か知ってる?」

「よくわかんないけど、寝ている時になんか背中から出てくるのは知ってる」

 ローザは足をぷらぷらさせながら、うつむき加減で呟く。ロッソはそんな彼女の心境を無視して、

「じゃあよ。その薔薇ってのは自分で使いこなせないってことか。使い勝手わりぃな」

「やめなさいよ、ロッソ。まだ幼いんだから」

「まぁ、本人が意識せずってことは自己防衛に特化してるわけだな。とはいえ、さらわれたことを考えるとちゃんとした護衛をつけるべきだったんじゃないか?」

「わたしの知らない話しないでよ!」

 ローザを落ち着かせてから、グリーズだけマローナに別室へ呼ばれた。


「あの子にはいきなり話し過ぎたわね。気づいていると思うけど、ローザちゃんは刻者マーカーよ」

「そうなんだな。一応、ボスの血縁者なんだろ。それならボスの元へ連れて行く流れになるんじゃないか?」

「そうよ。詳しくは私も知らないんだけど」

(いいや、あなたは知っている。彼女ローザがボスの娘であることを。そうでなければ、彼女ローザがその名前レプティルを出してくることはないからな)

「彼女の母親は?」

「無事よ。今ごろ保護されているはずよ」

「それなら良かった。まだ母親が恋しくなる年齢だからな。それで、いつ、どこで受け渡すんだ?」

「明日の朝、ロッソの運転で行くの。あなたには護衛を頼むわ」

「わかった」


<次回予告> byマローナ

ついに次回はボスに会いに行くわ、緊張するけど楽しみだわ。

ローザちゃんを誘拐しようとしてたフミル地区長はじめ、その一派は綺麗に丸ごと掃除されたみたい。


明日は、朝が早いからこれで失礼しますわ

次回もどうぞよろしく!

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