第2話 Fellow

「あなたがグリーズくん?」

「は、はい」

(随分派手な女だ)

「それじゃあ、この店から出て駐車場に停まってる車に乗り込んで」

「わかりました」

 昨日の喫茶店で待ち合わせだったのだが、声をかけてきたのが金髪の目立つ女性だったために、グリーズは少しばかりビックリした。


 駐車場には、これまた派手な赤色のセダンが停まっている。運転手側の窓をノックすると、快く車に乗せてくれた。その後すぐに、先程の女性が助手席に乗り込み、

「とりあえず、西日の高台まで」

(待てよ。そこは......)

「うぃっす。じゃないや。わかりました、姉御!」

 グリーズは動揺のあまり、運転手の何処とない軽さに気づかない。なぜなら、行き先である西日の高台とは、スケイレにところだと教えられていたからだ。

(もうバレているのか?)


「着いたわよ。さて、降りて降りて」

 運転手と共に降ろされた。

「そんなにビビらなくて、大丈夫よ。それとも何か隠し事でもあるの?」

 笑いながら緊張をほぐそうとしてきたが、依然としてグリーズの警戒は張りつめたままだ。

「なかなかの美人っすよね。俺が狙っているんで、そこんところ理解よろしくっす」

(とりあえず、コイツは馬鹿だ)

「いやいやロッソ、あなた恋することは絶対にないから。ふざけて言っているなら、頭ぶち抜くわよ」

 ぶち抜くという彼女の手には、六連のリボルバーが握られている。しかしながら、彼女のショートパンツにはホルスターが付いていない。

(いつのまに、銃を)


「なになに?あなたも変態系なの?」

「いや、そういうわけではない......です」

(意識するな)

 突然の指摘に動揺が隠せないグリーズ。

「まぁ、いいわ。私はマローナ・スミス。あなたが気になっているコレは、私の刻証マークよ」

 彼女はくるりくるりとリボルバーを回し、太腿まで持ってくると、綺麗にリボルバーの姿が消えた。そして、彼女の右太腿には消えたリボルバーと同じマークが現れていた。


「俺がロッソな。俺もマーカーなんだぜ」

 そう言うと彼は長袖パーカーの袖を捲って、

 マークを見せてきた。彼のマークは右手首にあり、ブレスレット状で炎ような形をしている。

「お前もマーカーなんだろ?」

「はい」

 少々マークを見せるのに抵抗があったが、大人しくシャツを脱ぎ、マークを見せた。

「すっごい」

「立派なマークだこと」

(やっぱり恥ずかしい)

 少しばかり頬を赤らめるグリーズ。

「まぁ、これくらいにして仕事の話をするわよ」


 結局、時間がないということで移動中の車内で、仕事の概要が話されることになった。

「ロッソさんは、聞かなくて良いんですか?」

「タメ語で良いぞ」

「私もタメ口で大丈夫。あとアイツは聞いてもわかんないから、気にしないで」

 さっぱりと切り捨てられたロッソはさておき、仕事についての話が始まった。

「仕事は聞いての通り、少女の救出。残念ながら、もう殺されているかもしれない。そうだとしても、私たちは仕事だからやるしかない。まぁ、その子にはお金がかけられるみたいだから、きっと大丈夫よ。とりあえず、アジトに向かうから準備しといて」

 マローナから渡されたアタッシュケースには、ハンドガンが一丁とその弾丸が入っている。手早く弾を入れ、マローナから細かな注意点を聞いたところで、敵のアジトに着いた。



 アジトはスケイレの隣の地区に位置し、庭園が付いている二階建てのログハウスだった。立派な別荘だと聞いていたが、思っていたより数段大きい。

「ここなら、別に地区長のフミルさんがやれば良かったんじゃないですか?」

「そこは


 近くの茂みに車を隠し、三人揃って観察を始めた。

「どこから入るんだ?」

「うーん。一人ずつコレで撃ち殺していくかな」

 そう言って自らのマークをポンと叩くマローナ。ロッソもやる気に満ち溢れているようで、マークから炎をチラつかせている。

「結構な人数がいるぞ、いっそのこと俺が家ごと燃やした方が早いんじゃね?」

「あんたさ、女の子助けに行くって言ったでしょうが!」

「そろそろ真面目に」

 グリーズの一言でやっと落ち着いた。


 ログハウスの窓からも護衛の姿がちらほら見える。見れば見るほど、ログハウスの警備の厚さに怖気付いてきた。

「とりあえず、俺の剣で門の二人を斬り捨てます。そしたら、あの噴水の影まで走って下さい」

 グリーズは後頭部へ手を伸ばし、勢いよくその手を振り下ろして剣を顕現させた。それからホコリを払うように刀身を撫で、剣に文字を浮かび上がらせる。

テンペスタ

 言葉を発するのと同時に、剣が旋風つむじかぜのようなものに包まれた。グリーズはその剣を手に、門へ向かって走り込み

「散れ、〜一陣之風ヴェント・ドンノーラ〜」

 一瞬にして吹き荒れる突風。刃のように鋭い風は門にいた護衛たちを飲み込んでいく。

「うわぁ」

「クソぉ」

 護衛たちは散り散りに吹き飛ばされ、門自体もバラバラになっている。車が突っ込んだの如きログハウスへの道が開けた。


「ド派手な大技だったわね」

「俺が倒すはずの第二陣の皆さん出てこねぇし」

 あまりの威力に引いている二人マローナとロッソ。変に敵が逆上して人質を殺さないか心配になるグリーズとロッソであった。

「さてさて入りましょうか」

 マローナはささっとリボルバーを召喚し、ログハウスへ入ろうした。しかし、そんな彼女をグリーズが止める。

「ちょっと待て」



 -ログハウスを見下ろせる高台

「凄いマーカーをよこしてきたもんだ」

彼女アレが無ければ、俺たち死んでましたね」

「まぁな。あいつら、何をためらってるんだ。早く入れっての。どうせそこには、よ」

 高台には十数人のマフィアたちがいた。

「奴らが死んだら、後処理に行くぞ。準備しておけ!」



 -ログハウス

「なんで止めるの?」

「タバコにまだ。てことは、俺の攻撃を受けてない奴がいるってことだ」

「今、車の音がしたぜ。逃げたんじゃねぇの?」

 改めて細心の注意を払い、ログハウスに侵入する三人。ほんのりがする建物内は静かであった。強盗にあったように家具や食器が荒れてはいるのだが。

「誰もいない」

「やっぱ、逃げたんだって」

「急いでいる割にはし、意外と近くに潜んでいるかもしれない」

 まわりを細かく確認していく。すると、グリーズがテーブルに置かれたカップを手にした。

「まだ暖かい」

「そりゃ、急いで逃げればそうなるだろ」

「それはそうなんだが」

(まさか誘いこまれているのか)



 <次回予告> byマローナ

前回の予告はロッソがやってたけど、今回は私マローナが担当するわ。

誰もいなそうなログハウスだけど、本当に敵は逃げたのかしら?

出てきたところで、全員撃ち殺すから良いんだけどね。

えっ、撃つなって!?

どういうことよ、グリーズ!


もう尺がないみたい

次回もどうぞよろしく頼むわ!

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