(什弌)
「お呼びにより
「うん。君達にやって貰いたい事があるんだ」
「はっ、何なりとお申し付けください」
この幕僚達、裨将、校尉達は、耀勝を慕ってきたり、お金で集めたりした、人材であった。出自も、出身国もバラバラであったが、とても有能な者達でもあった。
「さて、ここにいても囲まれて終わりなので、出ることにしました。ただ、出るだけだとつまらないので、帝国に嫌がらせしましょう」
「はっ」
「泉水には、我が軍と、
鷹豪将軍とは、元々泉水を守備する将軍で、耀勝曰く、ただ真面目だけの男なのだそうだ。
「そこで、我が軍の食料と、泉水の食料品店の食料を買い占めて、北河対岸の防衛施設に運びます。なに、帝国皇帝は、人道的な人だと言います。泉水の民を飢えさせることは、しないでしょう」
「はっ」
「これは、わたしと幕僚達で行います」
そう言って、幕僚達を見回す。
「次に
「はっ」
校尉達に、話し始める。
「あなた達には、大変な仕事をやって貰います。まず、この5箇所に帝国軍の補給庫を確認しました」
そう言いながら、耀勝は、地図の5箇所を指差す。
「これを焼き払って貰いたいのですが、我が軍は、負けるので、逃げる時間稼ぎの為です」
そして、また地図を指差す。
「帝国軍の何軍かは、こう森の中を通って、泉水の近くに来ると思います。で、あなた達は、森の中等に潜んでやり過ごしてください」
「で、その軍の背後を突くんですか?」
ついに何か言いたくてしょうがなかったのか、若い校尉、穂蘭が口をはさむ。
「いいえ、無駄なことは、しません。それに敵は、少なくても十万、こちらは、2万5千しかいないのですから、勝負になりませんよ。役目はそっと近づいて、補給庫を焼き払う事だけを考えてください。ただし、無茶はしないで下さい」
「はっ」
「で、焼き払ったら、追撃を受けるかもしれないので、全力で北への街道を抜け」
再び、地図を指差す。場所は、街道直上の北河、南岸。
「ここに、裨将達が、船を停泊させておきますので、乗って逃げてきて下さい。では、行きますか」
「はっ!」
「そうですか。読まれてましたか。見事なものです」
「本当に、申し訳ありません」
「いえいえ、4箇所も燃やせば上出来ですよ。お疲れ様でした」
耀勝は、校尉達から、報告を受けていた。その中に1人項垂れる亜典。しかし、耀勝は、本当に満足していた。帝国の追撃は止まった。これで、この国の寿命はのびた。後は。
「策が読まれていた上に、追撃を受けて、あの損害。さすが柔軟な思考を持つ亜典ですよ。うんうん」
「おのれ! 愚か者め! いや、すまぬ、
皇帝、
「でだ。凱炎の補給庫は、燃やされずにすんだのだったな」
「はい、陛下。詳細は、ここにいる王仁に聞いてください」
凱炎の後ろに隠れるように立っていた、王仁が恐る恐る進み出る。
「見事だった。で、どうやって防いだのだ?」
「えと、部下に、来るかもしれないと言われまして」
「襲撃がか?」
「はい」
「ふーん。
「はい。そんな感じでした」
「其奴の名は?」
「は、はい、趙武であります」
「凱炎。その者は呼べるか?」
「はい、直ぐに使いを出します」
「ああ」
しばらく待っていると、天幕が開いて趙武が入ってきた。その姿に、岑英は、少し驚いた。まだ、若年だし、位もまだまだのはずだが。銀髪碧眼の長身で眉目秀麗の趙武は、優雅に、そして堂々と歩いてきた。そして、眼前で片膝を付き、頭を下げると、
「お呼びにより
「ああ、良く来た。早速だが、趙武、お前が、王仁に襲撃を予測して伝えたそうだな」
趙武は、チラリと、王仁の方を見た後
「いえ、予測と言う程では無く、可能性の話しでした」
「可能性か?」
「はい、補給庫周辺に怪しい者達が現れ、敵軍は敗れ逃げ始めた、その帝国軍は追撃を開始した。その追撃を止める為にはどうするかと考えました」
「なるほど。襲撃の可能性があって、それを王仁に伝え、王仁は襲撃に備えたと」
「はい、左様でございます」
「うむ。わかった。
「はっ」
岑英は、何やら耳打ちをする。
「はっ、かしこまりました」
「では、泉水の攻略だ。追撃は諦めたぞ。そして、
「はっ!」
「うむ。王仁、趙武ご苦労だった、下がって良いぞ」
「はっ!」
「では、かかれ!」
泉水の
降伏勧告をしたのだが、守将鷹豪は拒否。こうして、開戦した。大岑帝国軍は、初日、投石機や火矢を城壁や、城壁の上の兵士に向かって打ち込み続けた。圧倒的等な数の暴力が、城壁の上の兵士に降り注いだ。
そして、その1日の攻防で泉水は開城したのだった。
翌早朝、攻撃を開始しようとした。その時、城門が開き、守将鷹豪の首を捧げながら、数名の男達が出てきた。鷹豪将軍配下の、裨将1人と、校尉3人だった。
初日の戦いで、多くの死者を出し、1人校尉も戦死。それでも、抗戦を主張する鷹豪と話し合いが揉め、斬り合いになり、鷹豪を殺したそうだ。
「手厚く葬ってやれ」
岑英は、降伏を受け入れると共に、こう言った。
そして、泉水に入城するのだが、ここでも食料不足に遭遇する。商店に何故か食料が無く、住民の食料が不足していたのだ。岑英は、直ぐに、城の、食料庫を開放し住民に分け与えると共に、本国からの輸送を急がせた。
「全く、
おそらく、同じ人間によるものだろう、岑英は如親王国に
大岑帝国軍は、近衛軍一軍と、大将軍と、裨将軍、将軍、上級幕僚達。そして、論功行賞を受ける者だけの入城を許可し、他の者は、城外に野営することになった。
泉水街中での、
趙武は、
趙武が、いろんな場所を見学しながら歩いていると、懐かしい声が聞こえてきた。
「おい!
「うるさい!
趙武は、声のした方に歩く。最後に会ったのは、軍官大学校2年だから、自分が20歳の時。それから、4年。雷厳との手紙も、途中宛先不明になり、それ以来途絶えていた。
「雷厳! 至恩!」
声を聞いて振り返る2人。
「おお、趙武! 元気だったか?」
「久しぶりだな趙武」
3人は、そのまま近くの
雷厳は、幹部候補生学校卒業後、やはり、1年間教導部に所属、伯長として、呂鵬大将軍の下、龍海王国との戦争に参戦して、武功をたて、屯長に。そして、今回も武功をたて論功行賞に呼ばれたようだ。
至恩は、父親の近衛東方将軍至霊の下。英才教育を続行されたそうで、
「これが意外と大変なんだよ」
で、今回始めて戦場に出て武功を上げた。
「まあ、階級的には、雷厳と同じだけどな」
だそうである。趙武も、自分のここまでの、経歴を話す。
「そっか、すでに
「軍司馬って、そんなに良いのか?」
「雷厳にとっては退屈な階級じゃない?」
等と。そして、楽しい再会は、夜更まで、続き。店を、追い出されると、宿泊施設でも続いた。
そして、
「凱炎大将軍府崙閲軍王仁部趙武軍候!」
「はっ!」
「
「はっ、謹んでお受け致します」
「励めよ」
「はっ、有難き幸せ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます