(捌)
趙武は、馬に乗って、東に向かった。最後に訓練した、五千人の兵士も一緒だった。
自分の配下の
1人は、叩き上げの伯長の1人、
1か月で、前線というよりは、次の任地の駐屯地に到着。
だが、準備期間と言う名目で、1週間の休みが与えられた。そして、その駐屯地で2人の懐かしい人物と出会う事となった。まあ、1人は、1年前に別れたばかりだっだが。
「ん?」
駐屯地をふらふら歩いていると、前方に見たことのあるシルエットを見つけた。趙武は、歩くスピードを上げると、肩を叩く。
「よっ、久しぶり、
「あっ、お久しぶりです、趙武さん」
幹部候補生学校の飲み仲間との再会だった。
「あっ、そう言えば、趙武さん、俺の上官みたいですね。よろしくおねがいします」
「ん? そうなの? まだ、辞令受けてないから知らなかった。じゃ、これからよろしく。で、どう? 今から飲む時間ある?」
龍雲の顔がパアッと明るくなる。
「はい、是非!」
趙武達は、適当な酒家を見つけ中に入る。そして、料理を数品頼むと共に、清酒を頼む。すると、龍雲は懐から巾着袋を取り出すと。
「今度からは、俺もちゃんと払いますよ。と、言うか幹部候補生学校時代の趙武さんの給金にようやく追いついたんですが、結構貰ってたんですね」
「そうかもね。でも、今も屯長だから、まだ、僕の方が給金は多いよ」
等と、話しつつ、幹部候補生学校卒業後の話題に自然となった。
龍雲は、北部にある騎兵教導部で、
そして、なぜ趙武が上官かわかったかと言うと、
「
「ああ、そう言えばそうだね」
赴任して、荷物などがすぐに置けるように、すぐに住める屋敷が与えられるのだが、その時、
その割符に所属が書いてあって、趙武の場合は、
と言うことは、
「そこに凱炎大将軍府崙閲軍王仁部趙武曲と書かれていたので」
「なるほどな」
その後も、休みの間、龍雲は、趙武の屋敷に入り浸って、酒を飲むことになるのだが、そろそろ休暇も終ろうとする、そんなある日、来客があった。
「失礼する」
「はい」
趙武が、屋敷の扉を開けると。そこには
「呂亜先輩。お久しぶりです。どうして、ここに? ああ、そうだ。中に入って下さい」
「ああ、久しぶり趙武。では、上がらせて貰うよ」
趙武は、呂亜を案内して、龍雲と呑んでいた居間に向かう。龍雲も呂亜の身なりを見て、上官と悟ったのか立ち上がり、上座に当たる場所を片付ける。
「これは、失礼。先客がいたのだな。えーと」
「趙武さんと、幹部候補生学校の同級生で、飲み仲間の龍雲です。よろしくおねがいします」
「飲み仲間? 俺は、軍官大学校時代の趙武の先輩で、ここでは、
三人は
「良く、ここがわかりましたね」
「ああ、一応ある程度の官職にある人間の、着任の噂は流れてくるからね。そして、訪ねようとしてたんだけど、なかなか忙しくてね」
「そうでしたか。忙しいんですか」
「ああ、趙武達も、着任したら大変だぞ。覚悟しておけよ」
どうやら出兵の準備をしているようだ。呂亜の話によれば、大岑帝国は、2年前ロンホイ湾に面した大都市、
そして、今度は、その北にある
「皇帝陛下自ら親征されるそうだよ。まあ、陛下は、ほとんどの戦いで親征されるんだけどね」
大岑帝国皇帝、
「凱炎大将軍も、その戦いに参加されるんですね?」
趙武は、まだ会ったことは無いが、噂に聞く、大将軍を思い描きながら訊ねた。呂鵬大将軍ほどの若さでは無かったが、近年大将軍になった、武の化身。現在48歳。
「ああ、皇帝陛下の覚えめでたいからね」
「覚えめでたいと言えば、
龍雲が、知ってか知らずか、呂亜に聞く。
「そうかもね。だから、今度の戦いにも参加するしね」
話しにくそうに、話す呂亜を見て、趙武が話を変える。
「そう言えば、呂亜先輩は、呂鵬大将軍の下に配属されなかったんですね?」
「ハハハハ、答えにくい事を次々に聞くな」
「すみません」
「いや、良いよ。軍の人事はそうしようとしたらしいんだが、父が反対したそうだよ。そして、信頼している大将軍の凱炎大将軍に預けたと、言われたよ」
「そうなんですか。良いお父さんですね」
「お前が、言うな龍雲」
趙武が、たしなめる。
「ハハハハ、良いコンビだな。それに、楽しいぞ。俺も今後飲み仲間に入れて貰おう」
「是非」
休暇も終わり、再び曹掾の元に行き、辞令を受ける。
「趙武さんは、崙閲将軍の麾下の王仁校尉の下で、
「はっ。誠心誠意勤めさせて頂きます」
こうして、辞令を受けて、大将軍府に向かう。そして、大将軍府の広間壇上中央に凱炎大将軍が立ち。その左右に
「俺が、大将軍の凱炎だ。いよいよ、如親王国との戦いも迫っている。皆、頑張ってくれ!」
凱炎大将軍。現在7人いる大将軍の1人で、武神だの、戦神だのと呼ばれている。まあ、本人は、その呼び名を嫌っているそうだが。
実際に見るのは始めてだったが、雷厳と同じく金色の髪に、金色の目、そして、日焼けしているので、ややピンク色にも見えるが、白い肌の北方民族だった。
そして、何より堂々たる
さらに、その威圧感は、半端なく、背後に炎でも纏っていそうだ。眼力も強く。気の弱い人間なら、目をそらしたくなる。
「ああ、そうだ。余計な挨拶周りとか、するなよ。あんなの時間の無駄だ。以上解散!」
と、あっさりと終わった。さて、どうしようかと、趙武が考えていると。前方から、1人の将校が歩いて来て。
「えーと、趙武君ですね。わたしは、軍司馬の
「はっ」
趙武は、軍司馬の唐慈の後ろについて歩き始めた。軍司馬とは、五千人率いる部内で、2人いて、校尉の副将的役割や、別働隊を率いたりするのが仕事だ。
しばらく歩くと、大将軍府内の一つの部屋にたどり着いた。
「唐慈です」
「よし入れ」
部屋に入るとそこは執務室だった。趙武が、挨拶しようとすると。
「ああ、挨拶はけっこう。凱炎大将軍も言ってたでしょ」
「はい、失礼しました!」
「で、用件だけど、出陣も近いから自分の曲で兵を把握して、準備急いでね。まあ、評判だと、そういうの得意なそうだけど」
「はい、ありがとうございます」
「で、次の戦いで、
「はっ」
趙武は、次の戦いでは、あまり活躍の場はなさそうだなと、思った。
「荷駄隊の護衛も重要な任務だよ、うん」
王仁は、自分に言い聞かせるように言った。
「その分、兵科も臨機応変に対処できる編成になっているしね」
「はい」
「以上かな? ああ、それと軍候からは、副官付くから上手く使ってね。えーと、名前は、
「はっ」
「じゃあ、頑張って。ああ、部屋は大将軍府じゃ無くて、練兵場の方にあるからね」
「はい、では、失礼します!」
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