第4話教会戦
「こりゃあ一杯食わされたか……」
わざとらしく驚いて見せてから鞘走らせる。やはりこの女への忠誠心、信頼は凄まじく厚い。今まで葬り去って来たもの達とは何か違う。
「この人数に対抗出来るとでも思ってんのか?」
「それはコチラが聞きたいね?その人数で何ができる!? まあどの道、対抗しなかったら死ぬんだ。なら悪足掻き──」
踵を返し、動作を最小限にする為、摺り足で男性一人の懐に入り込む。一瞬の出来事に反応が遅れたであろう男性を、身をかがめたジルドは見上げながら──
「なっ!?」
「するさ!」
みぞを柄で抉り、体がくの字になった瞬間に後頭部を手で押さえ付け、膝で顎を蹴り飛ばす。
「グハッ……」
脳は揺れ、光を宿していた瞳はグルリと上を向き、そのまま倒れ込む。
──まずは一人。
「クソ野郎! 良くも俺らを騙しやがったな」
「騙されるのが悪いんだよ、チャド」
「お前みたいな人間以下が俺の名を呼ぶんじゃねーよ」
こめかみに青筋を立て、
それはさながら、巨大な壁。凄まじい圧力に威圧感を漂わせる、筋骨隆々としたこの男を倒すには、流石に剣を──
いいや。
「吹き飛びやがれ」
暴風がチャドを中心に吹き荒れ、天井には大きな風穴が空いた。横目で周りの連中を見てみれば、平然と立つ不気味な女性の他は各々、慌てふためきながら対処はしているようだ。
「「
可視化出来るほどの風を纏った右腕が容赦なく振り下ろされた。鈍い音が鼓膜を激しく揺さぶる中で、ジルドの体は台風に引き込まれるかのように、逃げること叶わない。後ろや左右に跳躍も出来ない絶体絶命の状況下に於いて、無属性者の男が浮かべたものは。
──笑みだった。
その刹那、チャドの攻撃はジルドへ直撃。炸裂音と共に床には穴が開き、埃が視界を掠める。そんな中、苦悶の表情を浮かべ膝をついたのは、チャドだった。
「グッ……指が二本折れやがった……お前、一体何を」
冷や汗を額から垂らし、見上げる先にたつは無傷で
「俺の一族は他と比べ、属性値が低くてな。故に編み出した武術がある。今のは初歩的技だよ」
ジルドは相手の勢いを活かし、柄を巧みに使い指の骨を砕いていた。
「ゆっくり眠れ」と、ジルドは顎に掌底を食らわせ、チャドの意識を飛ばす。
「うそ……だろ。意図も簡単に……?」
彼の姿を見たもの達は皆、驚き戸惑いの渦中へと落ちているようだ。
「初歩的って……あの速さの中で的確に指を折るのがどれだけ困難だと思ってんだよ」
「チャドの属性は風。つまり、この男も風属性であり、相殺したってことか?」
「それしかねぇ。つか、チャドってハインズに続いて二番目に強い筈だよな……」
「俺達、勝てるのか……?」
「…………」
攻めあぐねてる時、一人の男は声を轟かせた。
「馬鹿野郎! 勝てる負けるじゃねぇ! クリスを護れ!」
「お、おう。そうだった。俺達が駄目でも……クリスだけが生きてさえ居ればまだ希望はあるんだ!」
バラバラな位置にいた者たちは、クリスとジルドを隔てる様に立ち構える。
「馬鹿かテメェら! オレなら大丈夫だ。自分の事を大切にしやがれ!」
「次代に繋ぐ為に犠牲になると」
「あたりめぇだ!」
好かれているのだろう。このような者が王なら時代は変わるのかもしれない。
「おるぁぁぁあ!!」
「隙だらけだ」
「まだまだぁぁあ!! 協力技でいくぞ!」「おうよ!」
「…………」
飛び交う魔法や剣技を躱し、その度にジルドは的確に相手の急所を穿つ。
一人また一人と数は減り、深呼吸をする頃には既に数人となっていた。
「うあああああ!!」
また一人が剣を構えた瞬間、教会の扉が開け放された。
「そいつに手を出すな! その男は──死神だ!」
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