※ 白昼夢

 ゆるりと意識が浮き上がってきた。レースのカーテンから陽が差し込む部屋は真っ白くて、そのなかでとろとろと微睡むのは気持ちがいい。目を閉じれば、瞼に透ける優しい光が穏やかな眠気を再び誘う。

 温かくてふかふかな布団にくるまり、ひとつ寝返り。

 隣にいるマスミの脚に自分のを絡める。すべすべした肌が触れるのが嬉しくて、彼女に抱きついた。


「……どうした?」


 マスミも眠そうな掠れ声で尋ねてきた。それには明瞭に返事もせず、温もりにまたうとうとしながら頬を寄せる。


「あったかいね」


 すると、マスミはぎゅっと私を抱きしめ返してくれた。その柔らかさに安心して、夢と現の狭間を揺蕩う。

 夢よりも確かで、現実よりも穏やかな世界にひたるのは心地よくて、このまま融けてしまいたくなる。……融けてしまいたい。理不尽も悲しみも忘れて。


 髪の毛をを撫でる彼女の手が愛しい。じくじくと痛んでいた心が少しずつ癒えてゆくのが分かる。


「もう少し、寝ようよ」

「ん……」


 二度と目覚めないでいられますように

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隣の魔法使い すみれ屋 @sumireya

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