いつでも空は青く澄んでいる。


お気に入りのマフラーを首に巻き、私は学校の屋上にやってきた。


屋上を取り囲むフェンスの向こう側で、幼馴染の優樹が振り向いた。彼はとても優しく、私はいつも頼っていた。今日も彼に相談があってやってきた。しかし彼は私に笑って見せて、地面のない大空へと足を進め、次の世界に飛び込んだ。


私は彼の頬に流れる涙を見つけた。


かすかに光る涙の軌跡が、私の心を貫いて、私の世界は動きを止める。


彼が飛び降りたその瞬間、私の中で何かが弾けてきらりと光った。


弾けて、飛んで、きらめいて。世界を光で照らしたら、目の前が真っ白になって世界の色は消えていた。


彼は世界の中心で、私の心は彼でいっぱい。


灰色の世界にただ一人、きらめく彼を私は見ていた。


私は世界に色を付ける。


空は深い深い黒にして、たくさん星を輝かせるの。彼は夜空が好きだから。


地面は緑の草原で、丘の上には木を生やす。彼は静かな自然が好きだから。


学校は白で塗りつぶし、存在自体を消し去ろう。ここは彼を傷つけるから。


そうして作った理想の世界に私はいないほうがいいのかも。


彼の砕けた心を拾っても、直ることはないのだろう。


男と女は相いれず、すれ違って傷つけあう。


だから、私は彼を追い越し、次の世界へ向かって飛び出すの。


そして時間は動き出す。新しい輪廻の下で。




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ちょっとだけ哀愁に浸りたい貴方へ。 朝乃雨音 @asano-amane281

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