月面戦争:FinalRound

39.FinalRound Side「葛城イルカ」

 こんにちは。葛城かつらぎイルカです。

 今日は、2027年11月1日。日本時間、午後7時25分です。

 月面戦争:Round6、開始35分前です。


 そして敬語は苦手なので、とっとと、いつもの自分に戻ります。


「えへ、私がんばっちゃう!」


 突然だけど、私は今、混乱している。

 とても混乱している。


 なぜなら、遊梨ユウリ↓卜術ぼくじゅつの的中率が96%もあるからだ。

 ちょっと意味がからない。

 なぜ、上がるんだ?


 現段階での仮説は3つ。



 【仮説A:蘇我そがテンジが月面パイロットの関連任務についた】


 なんだろう? ドローンパイロットの教官とかが妥当かな?? 

 だって、直接パイロットをやるなら的中率はもっと上がるし……うん! そう考えるのがだ。


 だけど……あんな気持ちの悪い操縦テクニックを、他の人が習得なんてできるのかなぁ……ぶっちゃけちょっと考えられない。現実性がなさすぎる。



【仮説B:十流九トルクが、月面パイロットの任務についた】


 これが本命。

 十流九トルクだけが月面パイロットの任につけば、的中率96%は妥当な数字だ。


 こっちのプログラム解析任務とかが妥当かな?

 いいかげん、オルカMarcIIIの能力の全容はバレただろうから、柔軟宮四角形ファーストドーターの視覚ステルスからのロマン砲、固着宮四角形シックスドーターを警戒しているのかもしれない。

 まあ、バレたところで、防ぎようないけど。

 だって、固着宮四角形シックスドーターの火力を相殺できるには『バスケットボール』をぶつけるくらいしか無いハズだから。


 とはいえ、卜術ぼくじゅつで手の内を読まれても、こっちの戦術を予測して、被害を最小限にくい止めるのが一番良い。

 十流九トルクなら、そう考えるはずだ。うん、絶対にモアベターを選択する。

 月面戦争の戦局が完全に硬直した今だったら、絶対そっちの方が良い。


 月面戦争は、もう長期戦になるしか無いんだ。


 だったら、被害を最小限にして、一戦あたりのランディングコストを下げた方がいい。はそう考える。



 で、一応最後の仮説。


【仮説C:遊梨ユウリ↓が、あっちの地球の月面戦争関係者と接触した】


 一応、的中率96%の意味を考えるなら、これが一番だ。

 でもまあ、そもそも接触禁止の条約があるから、ありえないんだけど。


 ・

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 うーん、わかんない、仮説Aと仮説B、どっちだろう。

 これ以上は考えてもわかんないや。

 これ以上は、遊梨ユウリ↓のおっぱいがないとわかんないや。

 心をスッキリさせないと、わかんないや。


「ねぇ、遊梨ゆうり↓、ちょっと早いけど、おっぱいさわらせて。調べてもらいたいことがある」


「コホッ……ええよ……知らんけど……コホッコホッ」


 わたしは、今日も遊梨ユウリ↓頼みだ。

 私は遊梨ゆうり↓に頼ってばかりだ。私は一体、いつになったら、遊梨ゆうり↓に恩返しができるのだろう……。


 わたしはいつもの通り、遊梨ユウリの目の前までくると、遊梨ユウリのブラウスの下から両手を突っ込んだ。

 そして、おもむろにブラジャーを引っ張りあげた。


 ブラウスの中が「たゆん」と揺れた。

 ブラウスの中のおっぱいが「たゆんたゆん」と揺れた。

 ブラジャーによって、必死に重力にあらがっていたおっぱいが「たゆんたゆんたゆん」と揺れた。


 私は、両手で真剣に「たゆんたゆん」を優しく握った。


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 熱い!

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 ・


 え? ちょっとまって、じゃ無い。これ、40℃くらい発熱してない??


 ぺしん!


 私がおっぱいを握ったとたん、遊梨ゆうり↓は迷わずタロットを1枚めくった。


  〜  13『死神しにがみ』の正位置  〜

    −意味キーワードは『終末』。


「コホッ……なんやぁこれ? 訳わからん……コホッ。そもそも誰? ゴホッ……才覚をらなあかん……ゴホッゴホッ」


  〜  12『るされた男』 の正位置  〜

    −意味キーワードは『犠牲』。


「……ゴホッ! ゴホッゴホッゴホッゴホッ。」


遊梨ゆうり↓!?」


 なんだこれ? じゃ無い。じゃ絶対に考えられない。


 ・

 ・

 ・

 まさか! まさか!! まさか!!!

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 ・


 私はおもむろに、遊梨ゆうり↓のブラウスを剥がした。ひっぺがした。

 遊梨ユウリ↓のおっぱいがあらになった。


 わたしは、おもむろに遊梨ゆうり↓おっぱいを押し上げて、わきっちょを見た。脇の下を診察した。


 リンパ節が腫れている。そしてうっすら黒ずんでいる。

 間違いない! ユウリは黒死病だ。つまり「ペスト」に感染している!!


 なんで? なんで?? なんで??? 


 なんで、ペスト?

 なんでこっちの地球にない感染症に疾患してるの??

 そして、今、私も感染している???

 濃厚接触者の私も感染の疑いがある????


 ペストだけじゃない。

 こっちの地球には存在しない、流行性感冒や、スパイクタンパク質を有した感染症に疾患している恐れもある。

 つまり、インフルエンザや、に感染している可能性も十二分に考えられる。


 おちつけ!

 おちつけ葛城かつらぎイルカ!!


 私は今、何をするべき?

 私は今、なにができる??

 遊梨ゆうり↓のために、なにができる???


 何もできない!

 何もできない!!

 医療に詳しく無い私にできる事なんて、何ひとつない!!!

 私が今できることは、ここから先、自分の、そして遊梨ゆうり↓以外の全人類の、感染リスクを少しでも下げることだ!!!!


 私は、遊梨ゆうり↓からできるだけ離れた。

 そして、遊梨ゆうり↓には聞こえない声のボリュームで、シャチのぬいぐるみのオルカに「ひそひそ」と語りかけた。


「Hey……オルカ! 父さんに電話をつないで!(ひそひそ)」

「OK…………プルルルル……プルルルル……プルルルル……プルルルル……ガチャリ……どうしたんだい? 私の可愛いイルカ」


「父さん。遊梨ゆうり↓があっちの地球の感染症に疾患している(ひそひそ)」


「どういうことだい? 私の可愛いイルカ!」


「そういうことだよ!(ひそひそ)

 遊梨ゆうり↓はあっちの地球のだれかと接触した!!(ひそひそ)」


「わかった、すぐに医療チームを手配する。完全に完璧な感染症対策をほどこした医療チームを手配する。

 私の可愛いイルカも、そして私もすぐさま隔離されるべきだろう。

 今日の月面戦争は、私のスタッフに任せよう」


「うん!(ひそひそ)

 そうだよね!!(ひそひそ)

 そうするしかないよね!!!(めそめそ)」


「その通りだよ。 私の可愛いイルカ!」


「でも、私……ほんとは、遊梨ゆうり↓を看病したい(ひそひそ)

 苦しそうに咳き込んでる遊梨ゆうり↓の背中をさすってあげたい!(めそめそ)」


「それはダメだよ。私の可愛いイルカ。

 絶対にダメだよ。私の可愛いイルカ」


「うん、わかってる。(ひそひそ)

 わかってるよ父さん……そんなこと絶対やっちゃだめってわかってるよ……父さん。(ひそひそ)

 でも……苦しんでいる遊梨ゆうり↓をただ見てるだけなのが、怖くてしょうがないんだ。(めそめそ)

自分が冷酷れいこくな人間に見えないか……遊梨ゆうり↓薄情はくじょうだって思われないか、怖くてしかたがないんだ(めそめそ)」


「それはわかるよ。私の可愛いイルカ。

 痛いほどわかるよ。私の可愛いイルカ」


 私が、父さんとひたすら、ひそひそ、めそめそ話しをしていると、おもむろに遊梨ゆうり↓がしゃべった。

 息をきらしながら、のんびーりとした、関西弁でしゃべった。


「なんやぁ……ゴホゴホッ……イルカちゃん……めそめそして」


遊梨ゆうり↓

 ごめん、ごめんなさい!

 私が遊梨ゆうり↓を巻き込んだからこんなことに!!」


「ひゅー……なんやぁ……ゴホゴホッ……イルカちゃん……ひゅー……ちょっとなにいってるか、わからん……ゴホゴホッゴホッ」


遊梨ゆうり↓! しゃべったらダメ!!」


「ひゅー……いやや!

 ひゅー……ひゅー……これだけは言う、絶対言う……ゴホゴホッ……!!

 ひゅー……ひゅー……ひゅー……ワタシに、なんやしらん病気うつしたんは……ゴホゴホッゴホゴホッ……!!

 ひゅー……ひゅー……ひゅー……ひゅー……あっちの地球におる、イルカちゃんのお父さんや!!! ……ゴホゴホッゴホゴホッゴホゴホッ……!!!!」


「な、なんだってーーーーー!」

「な、なんだってーーーーー!」


 私とシャチのぬいぐるみのオルカは、ガッツリハモった。

 ガッツリハモって、死神の正体に愕然とした。


 くるってる。

 あっちの地球の父さんは、くるってる。

 人の命をなんだと思ってるんだ!!

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