40.FinalRound Side「十流九トルク」

 こんにちは。十流九トルクトルクや。

 今日は、2027年11月1日。日本時間、午後7時35分や。

 月面戦争:Round6、開始25分前や。


 そう、日本時間や。僕は今、日本におる。

 そんでもって、蘇我そがの家におる。蘇我そがの部屋で、ガチャガチャガチャガチャキーボードを叩いとる。


 YouTubeの生配信するために、設営準備やっとる。

 四元中継の生配信するために、設営準備やっとる。必死こいてやっとる。


 蘇我そがの無茶振りに答えるため、必死こいて頑張っとる。

 必死こいてハッキングを頑張っとる。

 

 ・

 ・

 ・


 よし、忍び込んだった!

 かわいいかわいい、シャチのぬいぐるみに潜り込んでやった!!


 そして、めっちゃ驚いた。シャチのぬいぐるみの搭載された、カメラの映像を見てめっちゃおどろいた。


 スカートの中がまる見えやったからや。


 シャチのぬいぐるみは、葛城かつらぎイルカのスカートの中を大映しにうつしとった。バッチリハッキリ、淡くて青いボーダーのパンツを映しとった。


 僕は、思わず「ふいッ」と目を背けた。

 正確には、ハッキングしとるシャチのぬいぐるみを「クイッ」と操作した。

 180℃回れ右をした。

 見てはいけないモノ見た思うたからや、本当に悪いことしとる気分になってもうたからや。盗撮しとる気分になってしもうたからや。


 そしたら、もっと、とんでもないものを見てもうた。

 おっぱい丸出しのカワイイ女の子を見てもうた。

 おっぱい丸出しで、苦しそうに息しとる女の子を見てもうた。


 クソ! 一歩遅かったんや!


 葛城イルマ、つまり、こっちの地球の葛城かつらぎイルカの父親は、もうホンマにどうしようもないクズな作戦を実行済みやったんや。


 これはあかん。ホンマにアカン。プランCに変更や!


 と、なるとだ。僕はこれから、あっちの世界の葛城かつらぎイルカとの接触が必須となった。あっちの地球にいってもうた蘇我そがの説得が必須となった。


 僕は覚悟を決めた。覚悟を決めて、どうしても目に入ってしまう、葛城かつらぎイルカの淡くて青いボーダーのパンツを見ながら、務めてを装って声をかけた。


蘇我そがぁ! さがしたで〜」


 僕は、シャチのぬいぐるみ越しに話しかけた。あっちの地球で、葛城かつらぎイルカになった、蘇我そがに話しかけた。


 葛城かつらぎイルカは、顔を上げた。涙ではれた目を僕にむけてきた。


「……十流九トルク?」


 可愛い……めっちゃ可愛い……可愛すぎて……死ぬ! 


 なんやこの美少女? めっちゃカワイイ美少女!! こいつがホンマに蘇我そがか??

 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女やないか!


「ホントに十流九トルク? ホントにホントに十流九トルク?」


 僕は高鳴る心臓を押さえながら、務めてに返事をした。


「なんやぁ、アホみたいに背が高かったのに、随分とちぃちゃくなったやんけ」


「ホントだ! ホントにホントに十流九トルクだ!

 うわーん! 十流九トルク〜〜〜〜〜!!」


 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女は、おもむろに抱きついてきた。

 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女の顔が、おもむろに大映しになった。


 れる……めっちゃれる……可愛すぎてれ殺される!!


「ユウリが! ユウリが大変なんだ!! 抗細菌薬が無いと大変なんだ!!

 ペストの致死率はそっちの地球だと10%弱だけど、こっちの地球には抗細菌薬はまだ開発されてないんだ!

 このままじゃ、ユウリが死んじゃう!」


 僕は、ほっぺたをグリグリと押さえつけてくるパーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女の顔にメロメロになりながらも、務めてに、平静を装って返事をした。


「安心しぃ。抗細菌薬は、今、月を飛んどる。

 ついでに、抗ウイルス薬も、少ないけど感染症のワクチン一式も月を飛んどる。

 おまえと入れ替わった蘇我そがが、輸送船に忍び込んで、月の衛星軌道上におる。月面戦争の物資を運び終えたら、チャラっと僕が輸送船をハッキングする。

 残っとる荷物は、蘇我そがと医療用品だけや。めっちゃ身軽や。かっ飛ばして軌道エレベーターまで、2日もかからん!」


「ホント!? よーーかったーー」


 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女は、へなへなと腰砕けになった。

 ヒックヒックと涙をしゃくり上げながら腰砕けになった。


 えぇヤツや。


 蘇我そがは、あっちの地球にいってもホンマえぇヤツや。

 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女になっても、ホンマえぇヤツや。

 えぇヤツすぎて、悪いやつに騙されんか心配になるくらい、ホンマ、クソ真面目にえぇヤツや。

 そんな蘇我そがが、僕はやっぱり好きや! 倒し甲斐のある最高のライバルや!


 でもって。


 僕はめっちゃ怒っとる。ガチギレとる。

 僕と、パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女との会話のやりとりを、さっきからずっと聞いとる蘇我そがも、イヤホン越しにガチギレとる。

 でもって多分、一番ガチギレしとるんは、おっぱい丸出しで苦しんどる親友を目の当たりにして、自分の無力さに打ち震えて、淡くて青いボーダーのパンツを丸出しにして泣いとった、パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女のハズや。

 秘学ひがく、中でも占術せんじゅつ情報処理の第一人者。葛城かつらぎイルカのハズや。


 僕は、務めてを装って、クソ真面目を挑発した。


「このまま、クソみたいな大人に、好きな様にされたまま黙っとるお前や無いやろ?」


 ・

 ・

 ・


 僕は、蘇我そがと一緒に考えた、とびきりの悪巧みをパーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女に話した。

 パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女は、シャチのイルカのまん前(つまり僕の前)で、内股体育座り(膝はくっつけて、足首は外に開くヤツや)して、つまりは、僕の目の前で、淡くて青いボーダーのパンツを丸出しにして、口に手を当てて、クソ真面目に僕の話を聞いとった。


「…………を、ちょっとだけ手放してもらう必要があるんやけど……平気か?」


 淡くて青いボーダーのパンツ丸出しでずっと僕の話を聞いていた、パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女は、手を口から「しゅるん」と離すと、ポツリとつぶやいた。


「ウン、わかった……悪く無いだろう」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る