作戦会議:Side「アルテミス」

28.「アルテミス」には得意科目がないからだ。by テンジ

 こんにちは、蘇我そがテンジです。

 今日は2027年6月2日。そう、月面戦争:Round1の翌日です。

 あやうく開始3分で敗北しそうになった、月面戦争:Round1の翌日です。


 オレがしゃべるのは久しぶりなので、ちょっと違和感があります。ぶっちゃけチョットめんどくさいです。


「アホほどめんどくさい」


 うーん、やっぱり敬語はちょっと苦手だな……やっぱり素の自分で語らせてもらいます。ぶっちゃけ、もう限界なんでどうか許してください。こんなオレを許してください。


「……はぁ、アホほどめんどくさかった」


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 オレは、環境に適応するのが得意だ、だいだい3日もあれば完全に適応できる。このアホほど背の高い体にも、3日で完全に馴染んだ。オレはもうとっくの昔に、ワタシオレになっている。


 オレがしゃべるのが得意だ。とても得意だ。理由は、オレが緊張しないからだ。

 全く緊張しないで、言いたいことが言えるからだ。他人が代わりに代弁して欲しい事や、代わりにやって欲しい事を、オレは一切緊張しないで躊躇ちゅうちょなくやり切ってしまえるからだ。


 ただ苦手はことはある。しゃべるのが苦手なジャンルもある。それは「オレが知っているけど、相手が知らないこと」だ。

 オレがに知っているのに、相手が知らないことは、話すのが、自分の思いを伝えるのがとても難しい。


 なぜならオレはじゃエンジンがかからない。目の前に障害がないとエンジンがかからない。のことは、に、初めから知っておいて欲しいと思うからだ。話していると、ぶっちゃけイライラしてくるからだ。


 そんな訳でオレは、NASAのフィールドセンターのひとつ、アメリカのフロリダ州の「ケネディ宇宙センター」の一室で、トルく↑にしぶしぶ説明している。

 あっちの地球のをしぶしぶ説明している。

 あっちの地球では、義務教育でもに習う、占術せんじゅつについてトルく↑にしぶしぶ説明している。


「つまりは、あっちの地球は、太陽系の惑星の力で、チートできるっちゅうことか……って! なんやねんそれぇ!!」


 オレはもう何回、トルく↑のノリツッコミを聞かされただろう。


「そう。で、そのチート能力? を、あっちの地球は無理やり使っている。あの王道十二星座をかたどったエレメントの塊に、惑星情報をアホみたいに無理やり書き込んで、アホみたいに無理やりスクエアを描いて、アホみたいな『エネルギーの拡大解釈』を使っている」


「な、なんやってー!」


 オレはもう何回、このリアクション芸を見せられただろう。

 何回見たか、わからない


「いやしかしこれはヤバイな。これはほんまヤバイな。

 ホンマやったら、あっちの地球ではあと30年はかかりそうなを、あっちの地球に行った厨二病が、無理やり作りよったちゅう話や!」


 そう言うと、トルく↑は、キーボード付きタブレットをアホほどガシャガシャ言わし始めた。


 うん、やっぱりすごい。このトルく↑はアホほどすごい。

 アホで、おっぱい大好きのぶっちゃけちょっと気持ちが悪いヤツだけど、こっちの地球とあっちの地球の違いの事だけは、に理解する。


 そんな訳でオレは今、あっちの地球のを説明するレポートを、トルく↑にまとめてもらっているのだ。

 NASA、そんでもって国連の上層部に提出するレポートを、まとめてもらっているのだ。


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「ま、占術せんじゅつについては、こんなもんで良えやろ。

 ……ほい!

 送信したった! で、次は、卜術ぼくじゅつについて教えてくれ!」


「うーん……オレはぶっちゃけ卜術ぼくじゅつは赤点だったからなあ」


「なんや、結局お前の得意科目は占術せんじゅつだけやないか。どうせ他は「永遠の0」なんやろ?」


 ぐ、痛いことろをつく。本当に痛いところをつく。トルく↑は本当に性格が悪い。そしてとても要領が良い。しゃべらなければ、しゃべりさえしなければ、とてつもなく優秀なヤツなのだ。


「図星やな。ま、しゃーない。「永遠の0」のお前から、占術せんじゅつの仕組みを聞き出せただけでも値千金なんや。

 とりあえず、なんでも良えから教えてくれ、そうやなぁ……とりあえず、お前の親友だった遊梨ゆうりユウリのこと教えてくれ」


「親友!? 違う! ユウリはオレの大事な! ……い、いやなんでもない」


 オレは顔が赤くなるのに気がついた。耳まで赤くなっているのに気がついた。

 そして、トルく↑がニヤニヤしているのに気がついた。これ以上ない性格の悪そうな顔で、ニヤニヤしているのに気がついた。


「ほんならその、お前の大事な! 愛しい愛しい遊梨ゆうりユウリちゃんと、お前のノロケ話を聞かせてくれ」


 そう言うと、トルく↑は、ニヤけるのをやめて、急に「スンッ」っと真顔になるとキーボード付きのタブレットに向かった。


 そう、オレはユウリに恋をしていた。


 オレがあっちの地球で女の子だった時は、全く気づかなかったけど、オレはこっちの地球に来た3日後に、はっきり自覚した。ワタシオレにすっかり馴染んだ時にハッキリと気がついた。


 そう、オレはユウリに恋をしていたんだ。

 友情だと思っていたあの感情は、に恋愛感情だったんだ。

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