作戦会議:Side「かぐや姫」

22.「かぐや姫」のお帰りや! by ユウリ

 こんにちは。遊梨ゆうりユウリです。


 今は2027年です。4月25日です。イルカちゃんの誕生日です。

 イルカちゃんがお月様に行ってもうて、ちょうど一年です。


 ワタシは、今、軌道エレベーターの入り口にいます。

 赤道から「にゅううう」と宇宙まで伸びた軌道エレベーター使って、イルカちゃんがお月様から戻って来る日です。


「Hey!オルカ! 今、何時?」

「タダイマ、マレーシア ジカンデ ゴゴ11ジ53プン53ビョウ、デス」


 もう、ぬいぐるみの「オルカ」ちゃんに、時刻を何回聞いたかわかりません。

 イルカちゃんが乗っている軌道エレベーターは、ちょうど正午に到着する予定です。


「Hey!オルカ! 今、何時?」

「タダイマ、マレーシア ジカンデ ゴゴ11ジ54プン13ビョウ、デス」


 ワタシは、軌道エレベーターを見上げました。雲ひとつない青空に、軌道エレベータは「にゅううう」って生えてました。先っぽは全く見えません。アホみたいに「にゅううう」って生えてます。


 この軌道エレベーターができたのは、三年前のことです。なんや、ワタシが生まれた頃から建設を初めて、ワタシがつかまり立ちできるようになった頃には東京タワーくらいになって、ワタシが幼稚園入る頃には、富士山くらいの高さになったらしいです。それが、小学校に入学するころには、エレベストくらいになって、中学校に入学する頃には成層圏? を超えて、中学3年の時に完成してました。


 なんやアホみたいにあっという間に信じられんくらいの高さになりました。竹みたいに、信じられんスピードで高くなりました。


「Hey!オルカ! 今、何時?」

「タダイマ、マレーシア ジカンデ ゴゴ11ジ56プン43ビョウ、デス」


 なんや時間が全然すすみません。ソワソワして、全然時間がすすみません。

 ソワソワしとるんには、ふたつ理由があります。


 ひとつめは、イルカちゃんに一年ぶりに会えるからです。可愛い可愛いイルカちゃんに一年ぶりに会えるんやから、ソワソワするんはしゃーないと思います。


「Hey!オルカ! 今、何時?」

「タダイマ、マレーシア ジカンデ ゴゴ11ジ57フン03ビョウ、デス」


 ふたつめの理由は、割とちょっと深刻です。結構深刻な問題です。実は今日、ワタシはイルカちゃんの服装チェックをしてません。


 この八ヶ月ほど、ワタシはイルカちゃんを厳しく厳しく指導しました。

 この八ヶ月ほど、ワタシはイルカちゃんが自分だけの力で可愛く尊くなれるように、自分でに服のコーディネートができるように、厳しく厳しく指導しました。


 イルカちゃんは、毎朝、ワタシが厳しく厳しく指導している間、ずっとヘラヘラ、テレテレしてました。どんなに厳しく指導しても、「えへ、教えてくれてありがとう!」って、ずっとずっとヘラヘラ、テレテレしてました。


 可愛い! めっちゃ可愛い! 可愛すぎて死ぬ! 


 あんまり可愛いんで、ついつい甘めになりそうやったけど、ワタシは心を鬼にして、イルカちゃんが自分でに可愛く尊く服のコーディネートができるように、厳しく厳しく指導してきました。


「Hey!オルカ! 今、何時?」

「タダイマ、マレーシア ジカンデ ゴゴ11ジ59フン33ビョウ、デス」


 いよいよや!


「Hey!オルカ! 正午までカウントダウンお願い!」

「OK……23……22……21……」


 ドキドキします。

 めっちゃドキドキします。

 この八ヶ月間の成果、ちゃんと出てるんやろか。


「……17……16……15……」


 アカン!

 緊張しすぎて、息が止まりそうや!

 今のうちに深呼吸や!

 スゥゥゥーハァァァー……スゥゥゥーハァァァー……。


「……7……6……5……」


 くる!


「……4……3……」


 くる!!


「……2……1……」


 ついにくる!!


 来たーーーーーーーーーーー!


 軌道エレベーターのドアが、「ぱっかーん!」って開きました。

 まるで竹みたいに「にゅううう」って生えた軌道エレベーターのドアが、「ぱっかーん!」て開きました。


 ついに、ついに来た。お月様に行った「かぐや姫」のご帰還や!

 お月様で「かぐや姫計画」ちゅう、なんやムズイプロジェクトやっとった、お姫様のお出ましや! 可愛い可愛いお姫様のお出ましや!


 ……ん?


 なんやハッキリ見えません。

 シルエットになっとる。めっちゃシルエットになっとる。なんや逆光でまぶしくて見えへん。シルエットになって、どんな服着とるかハッキリ見えへん。


遊梨ユウリ↓〜!」


 ワタシは、イルカちゃんの声を聞きながら目をシバシバさせてると、イルカちゃの「たったった」って掛けてくる音が聞こえました。


 ワタシは、やっと目がシバシバしとったんが治りました。ようやく治ってイルカちゃんをくっきりハッキリ見ることができました。

 

 か

 ・

 ・

 ・

 かっ

 ・

 ・

 ・

 かっっ

 ・

 ・

 ・

 か!

 わ!!

 い!!!

 い!!!!


 完璧でした。完璧な可愛いロリータ少女がワタシに手を振って走って来ました。

 イルカちゃんにお似合いの、淡くてオレンジの、あっまあっまのフッリフッリのドレス着てました。赤道直下のアッツアッツの太陽の中、しっかりと純白のフッリフッリの日傘をさして走って来ました。


 尊い! めっちゃ尊い! 尊すぎで死ぬ! 悶え死ぬ!


 ワタシは、走り出しました。一刻も早くイルカちゃんを「ぎゅ!」ってしたくて、走り出しました。思いっっっっっきり「ぎゅ!」ってしたくて走り出しました。

 ……あと、ちょっと悪い予感したんで、ちょっと心配になったんで、本気で走りました。ワリとガチ目に走りました。


 ていん!


 予想通りでした。うっかり出してもうたイルカちゃんは、うっかり転びました。


 ワタシは、うっかり転んだイルカちゃんを「ぎゅ!」って抱きしめました。

 思わず地面におでこをぶつけそうになったイルカちゃんを「ぎゅ!」って抱きしめました。

 イルカちゃんの顔に思い切りおっぱい押し付けて「ぎゅ!」って抱きしめました。


 そしてワタシは、大きな声できました。


「お帰り! イルカちゃん!」


 イルカちゃんは、返事をしませんでした。ワタシのおっぱいで「ぎゅ!」となったイルカちゃんは、苦しくて声が出せんみたいでした。


 ワタシは慌てて、イルカちゃんをおっぱいから引き剥がすと、イルカちゃんはちょっと肩で息をしながら言いました。


「えへ、ただいま。遊梨ユウリ↓!」」

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