13:オルカちゃんがしゃべったからや。byユウリ

 こんにちは。遊梨ゆうりユウリです。

 今は夏休みです。8月10日です。今日はワタシの誕生日です。

 そしてめっちゃ暑いです。


 めっちゃ暑いから、私は日傘をさしています。日傘をさして、自然派ナチュラルファッションで、イルカちゃんのおうちに向かっています。


 なんや、イルカちゃんが、ワタシのお誕生日パーティーしてくれるらしいです。

 そんでもって、ワタシに見せたいものがあるらしいです……知らんけど。


 気になる。めっちゃ気になる。


 なんや、夏休みになってから、イルカちゃんはずっと家におります。

 あんまり家から出てこんから、今から三日前に、家でずっと机にかじりついてお勉強しているイルカちゃんを机からひっぺがして、一緒にショッピング行きました。


 そん時に聞いた話やと、なんやもう、図書館の本はに読み尽くしてもうたらしくて、あとは自分で考えなアカン、言うてました。

 イルカちゃんは、めっちゃお勉強熱心です……知らんけど。


 ワタシは、イルカちゃんの家の前についたんで、家のインターホン鳴らしました。

 インターホン鳴らして出てきたんは、イルカちゃんじゃなくて「オルカ」ちゃんでした。


 オルカちゃんは、ワタシがイルカちゃんの誕生日にプレゼントした、シャチのぬいぐるみです。

 イルカちゃんが、「オルカ」って名前をつけた、シャチのぬいぐるみが、宙に浮いてました。そして、


「ユウリ、オタンジョウビ、オメデトウ」


「しゃべった!! なんで? ……知らんけど」


なんや知らんでけど、ぬいぐるいのオルカちゃんは、宙に浮いてしゃべりました。あと、よくよく考えたら、ドアがに開きました。


 オルカちゃんが開けたん? なんで? どうなっとるん?


「えへ、びっくりした?」


 イルカちゃんが、玄関に出てきました。可愛い。

 なんや、おうちの中でも、まるで普段着みたいに、にロリータ服を着てました。可愛い。

 ワタシが三日前に、買ってあげた服でした。淡くてピンク色の、フワフワのロリータ服でした。


 可愛い! めっちゃ可愛い! 可愛すぎて死ぬ! 


 そして気付きました。ワタシは気づいてしまいました。「えへ、びっくりした?」って言うた後、可愛いイルカちゃんは、いきなり黙りこくったのに気がついてしまいました。

 可愛い可愛いイルカちゃんは、ずっと黙ったまま、顔真っ赤にしながら、でもめっちゃ褒められたそうに、お勉強の自慢したそうに、ワタシと、オルカちゃんのこと交互にチラチラ見てました……可愛い。


 ワタシは、しゃーないな思って、イルカちゃんが聞いて欲しそうなこと、あくまでを装って聞きました。


「オルカちゃん浮いとる! しゃべっとる! まさかイルカちゃんの仕業しわざ

 知らんけど……知らんけど……スゴイ! めっちゃスゴイ!」


 そう言うと、イルカちゃんは、めっちゃ嬉しそうにテレテレしながら、淡くてピンク色の、フワフワのロリータ服のスカートの裾を掴んでめっちゃ早口になって言いました。


「えへへ、まだテスト中なんだけどね。オルカにモノポール重電器じゅうでんきを搭載してスマート家電の機能を追加したんだ。とりあえず日本の電力系統図は登録したから今日中にリモートで日本の電子機器は操作できる様になると思う。これでようやくこっちの地球の「かぐや姫計画」の進捗とあっちの地球の「アルテミス計画」との交渉状況を確認できるよ。今のところは法律には抵触しないから今のうちに最低限の情報は把握しないと。父さんにも並行して論文の公開準備をしてもらってるしここは並列処理で進めたい。あとこれはやっぱり説明した方がいいよね。音声認識は私と遊梨ゆうり↓の会話を常時録音した音声データをフィードバックさせてAIの構築を・・・」 


 アカン!!


 ワタシは、めっちゃ興奮して、めっちゃ早口に独り言をつぶやき始めたイルカちゃんのことを、おもむろに「ぎゅ!」って抱きしめました。


「すっごい! イルカちゃん、めっちゃスゴイ! あと可愛い! 可愛すぎて死ぬ!」


 ワタシは、とりあえずイルカちゃんを「ぎゅ!」ってしました。

 そうしないと、独り言が無限に続くからです。

 この状態になったイルカちゃん止めるには、「ぎゅ!」ってするんが一番です。ちょっとだけおっぱい押し付けるのがコツです。

 あ、「可愛い」は別に言わんでもええです。これは、うっかりワタシの感情がダダモレになっただけです。気にせんといてください。

  

「そ、そうかな? アリガト……」


 イルカちゃんは、に戻ったみたいです。興奮がおさまったみたいです。我にかえったみたいです。良かった。ほんま良かった。

 イルカちゃんが興奮して早口になると、その話を、ぼけーって聞いとっただけでに日が暮れてしまいます。

 に戻ったイルカちゃんは、ワタシをダイニングに案内してくれました。

 テーブルには、めっちゃ豪華なたくさんの料理と、めっちゃ可愛いケーキが置いてありました。


「えへへへ、お母さんと、いっぱい作ったんだ!」

 

 イルカちゃんは、めっちゃ不器用だけど、料理はに得意です。めっちゃスゴイ包丁さばきです。あと、細かい作業は得意です。なんや訳わからん機械をいじくるんはめっちゃ得意です。

 でも、自転車はいつも「よたよた」乗ってるし、スケボーは乗った瞬間に「ぽてりん」とすっころびます。

 イルカちゃんが言うには「作る」のは器用やけど「動かす」んは、めっちゃ不器用みたいです。


 まあ、人それぞれやし、しゃーない。思います。

 でも、なんやあっちの地球に行ったイルカちゃんと正反対なんは、オモロイなって思います。


「『Hey!オルカ!』例の曲、歌って」


「OK……

 ♪ハッピーバスデー トゥーユー

 ♪ハッピーバスデー トゥーユー

 ♪ハッピーバスデー ディア ユウリー

 ♪ハッピーバスデー トゥーユー♪」


 イルカちゃんがおもむろに叫ぶと、なんや、ぬいぐるみのオルカちゃんが歌い始めました。

 空中で、クルクル宙返りしながら、歌って踊り初めました。

 そして、同時に、レコードがかかりました。レコードが勝手に動いて、曲が流れました。


 なんで?


 多分、イルカちゃんの発明や思います……知らんけど。  

 間違いなくイルカちゃんの発明や思うけど、うっかり質問すると、また日が暮れるピンチが訪れるんで、気にせんといてください。どうか受け流してください。


 ぬいぐるみのオルカちゃんの歌と踊りが終わると、イルカちゃんがいそいそとプレゼントを出してきました。

 顔を真っ赤にしながら、モジモジしながら、いそいそとプレゼントを出してきました。


「えへへ、遊梨ゆうり↓、16歳のお誕生日、おめでとう!!」


 尊い! めちゃ尊い! 尊すぎで死ぬ! 悶え死ぬ!


 ワタシは、あくまでを装って、のんびりした高いトーンの声で言いました。


「めっちゃ嬉しい。開けてええ?」


 ワタシは、心臓バクバク言わせながら、ラッピングを素早くほどきました。

 出てきたんは、リボンカチューシャでした。

 ゴッリゴリのゴスロリのリボンカチューシャでした。


 三日前にイルカちゃんの服を買った時、イルカちゃん、なんやコソコソしとる思っとったけど。やったんやをコソコソうてたんや……。


 ワタシが、いつも自然派ナチュラルファッションなんは、男の人におっぱいみられるんが恥ずかしいからです。体型目立ちにくい服しか、に着る勇気ないからです。


 ワタシが、イルカちゃんに服を買うんは、ワタシだと、絶対に似合わんからです。


 に考えて、ワタシなんかには絶対に似合わんから、どうしようも無くワタシに似合わんから、代わりにイルカちゃんに着てもらってるんです。可愛く尊く着てもらってるんです。


 せやから、似合わんの……知っとるけど。


 ワタシには、ゴッリゴリのゴスロリのリボンカチューシャ似合わんの……めっちゃ知っとるけど……イルカちゃんのプレゼント、嬉しい。めっちゃ嬉しい。


 ワタシは思いました。心の底から思いました。ワタシはアホウなカザミドリや思いました。

 だからきました。大きな声できました。


「ありがとうイルカちゃん! ワタシ、めっちゃウレシイ!! 大切にするね!!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る