12:蘇我が賢いけど鈍臭いからや。byトルク

 こんにちは。僕の名前は十流九とるくトルク、高校一年生や。

 ここまで読んでもらって、ホンマありがとうございます。ホンマおおきに。


 僕がこれから独り言をしゃべくるんは、ふたりの天才の事を知ってもらいたいからや。

 凡人の僕が目の当たりにした、ちょっとやない、ふたりの天才の事を知ってもらいたいからや。


 天才の名前は奇しくもおんなじ名前や。

 どっちの名前も、蘇我そがテンジ。


 そう。ひとりはあっちの地球に行ってもうた蘇我そがテンジや。

 もうひとりは、代わりにこっちの地球に来た蘇我そがテンジや。


 うーん、どっちの蘇我そがから話そう。

 うーん、やっぱりは付き合いが長い方からやな。あっちの地球に行ってもうた蘇我そがからやな、うん。そうしよう。


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 蘇我そがと出会うたんは、中学からや。この中高一貫の学校通うようになってからや。

 それまでは、僕は、自分の事をに天才や思うてた。神童や思うてた。

 けど、上には上がおった。蘇我そががおった。学校の成績で、蘇我には逆立ちしても叶わんかった。


 そんな蘇我そが仲良なかようなったんは、中二の時や、同じクラスになったからや。僕とアイツは、中二やった。そして厨二やった。

 蘇我そがと僕は、とんでもない厨二やった。病気やった。厨二病やった。


 僕はアニメに夢中やった。二次元に夢中やった。

 押しに弱い、はち切れんばかりのおっぱいの、フリッフリのメイド服のドジっ子少女に夢中やった。(今もや)


 そんでもって、蘇我そがは、僕なんかでは足もとにも及ばない、厨二病の中の厨二病だった。

 なぜなら、アイツは一切学校のお勉強はやってなかったからや。

 魔法や、超能力みたいなオカルトの勉強? ばっかして、学校ののお勉強は一切やってなかったからや。

 そんな蘇我そがに、僕は学校の成績で逆立ちしても叶わんかった。僕以外の人間も、誰も叶わんかった。


 アイツは天才や。大天才や。とんでもない賢いヤツや。


 ただ、友達になって気づいた。アイツはとんでもなく賢いけど、とんでもない鈍臭どんくさいヤツやった。ちょっとでは考えれんくらい鈍臭どんくさいヤツやった。


 蘇我そがは、とにかく良く転んだ。走っただけで事んだ。なんでも無い所でに転んだ。

 ちなみに、アイツの中学ん時のあだ名は「捕虜」や。


 僕は中学の頃、良く、クラスの連中と昼休みの休憩時間にバスケをやっとった。

 組み分けは、毎回くじ引きで決めたキャプテンが、チームメイトをドラフトで選ぶ形でやっとった。

 そんでもって、蘇我そがは必ず最後までに売れ残った。戦力にならんからや。蘇我を獲るんは「捕虜」を獲るんとおんなじや。いっさいがっさいの役立たずや。


 一応、背がめっちゃ高いから、リバウンドをに獲る事くらいはできたから、それだけやっとった。

 何が楽しいかわからんけど、それだけやっとった。必死になってやっとった。


 中三のとき、僕と蘇我そがはドローンを買った。正しくは、僕が遊びたいから、蘇我そがを巻き込んだ。結局、蘇我そがは、ドローンを動かした途端に「ドゴーン!」言わせて壁にしたたかぶつけて以来、箱すら開けんようになったけど。


 で、まあ、そんなとんでもなく賢くて、とんでもなく鈍臭どんくさ蘇我そが相手に、僕は、一度でいいから勝ってみたかった。蘇我そがの得意分野で、どうにかこうにか一糸を報いたかった。

 めっちゃ勉強して、やない努力もして、中三の三学期の期末で初めてアイツを抜き去った。

 僕は、お勉強で出し抜いた。めっちゃ努力して僕が学年一位になった。


 蘇我そがが片手間にやってるお勉強を、僕はめっちゃ努力して、ようやく一位になった。

 正直言って、もう、一方的に独断的に、僕が蘇我そがのことを勝手にライバル視していただけだ。

 に考えたら、めっちゃダサい。

 でも、嬉しかった。蘇我そがの得意分野で勝った事がめっちゃ嬉しかった。

 でも、めっちゃ自慢しようとしたら、蘇我そがはあっちの地球に行ってもうた。


 なんなん? ホンマなんなん? めっちゃアホらし。

 でもまあ、あっちの地球行ってもうたんはしゃーない。諦めるしかない。

 諦めるしかない。


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 さて、すっぱりキッパリ諦めた所で、もうひとりの天才の話に切り替えさせてもらう。

 あっちの地球に行ってもうた蘇我そがの代わりに、こっちの地球に来た蘇我そがの話に切り替えさせてもらう。


 とんでもなく賢くて、とんでもなく鈍臭いヤツの話の代わりにこっちの地球に来た、とんでもなくアホで、とんでもなくさといヤツの話に切り替えさせてもらう。

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