得意科目ができました。

11:イルカちゃんが可愛いからや。byユウリ

 ワタシが待ち合わせ場所の甘味処かんみどころで、ちょうど豆カンを食べ終わったとき、ほんの10分だけ遅刻したイルカちゃんは、大慌てで、息切らして、チョコマカと歩いて来ました。可愛い。


 ちょっと寝癖できてて、上下、ガラモンの、ちょっとでは考えられへん、絶妙に微妙なコーディネートで、息切らして、チョコマカと歩いて来ました。可愛い。


 そしてイルカちゃんは、ワタシに目を合わせるなり、思いっきり頭下げて言いました。


「ごめん! この埋め合わせになんだってする!」


 ワタシは、胸がきゅうううんってなりました。

 可愛い。めっちゃ可愛い。

 ワタシは落ち着くために、とりあえずさくらんぼを食べました。豆かんに入っていた、自然な甘さのさくらんぼを食べました。


 ゆっくり落ち着いてさくらんぼを食べて、あくまでを装って、のんびりした高いトーンの声で言いました。


「ほんまに? ほんまに、ほんまに、なんだってする?」


 イルカちゃんは、黙って「こくん」とうなづきました。

 可愛い。めっちゃ可愛い。


 ワタシは、とりあえず落ち着くためにに、さくらんぼのタネを、ゆっくりゆっくううり吐き出して、あくまでを装って、のんびりした高いトーンの声で言いました。


「じゃあ、お買い物つき会ってくれへん?」


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 ワタシは、イルカちゃんをお洋服のお店に連れて行きました。ロリータ服の専門店に連れて行きました。


 でもって、お人形みたいなイルカちゃんの服をひっぺがして、お人形みたいなイルカちゃんにフワフワのペチコートはかせて、お人形みたいなイルカちゃんに、あっまあっまのフッリフッリのドレス着させてあげました。

 イルカちゃんにお似合いの、淡くて青い、あっまあっまのフッリフッリのドレス着させてあげました。


 でもって、リボンカチューシャか、ヘッドドレスかを悩んで、悩んで悩んで悩みぬいて、ヘッドドレスにしました。淡くて青い、あっまあっまのフッリフッリのヘッドドレス着けてあげました。


 可愛い! めっちゃ可愛い! 可愛すぎて死ぬ! 


 ワタシが、悶え死にをしそうになっていると、イルカちゃんは鏡の前でボーッとしてました。


「なんやわからん」 


 みたいな顔して、鏡の前でボーッとしてました。

 ワタシは、おそるおそる聞きました。


「あくまで、ワタシの勝手な意見やけど……めっちゃ似合う思う。どない?」


 そう言うと、イルカちゃんは顔を真っ赤にしました。耳まで真っ赤にしました。

 そして、ちょっとモジモジと口を押さえて考えてから。ポツリと言いました。


「……うん」


 尊い! めっちゃ尊い! 尊すぎで死ぬ! 悶え死ぬ!


 ワタシが尊すぎで悶え死にそうになっていると、イルカちゃんは悲しい顔してました。そして、悲しい声で言いました。


「可愛いけど、こんな高い服、買えないよ……」

「ワタシが買う!」


 ワタシは秒で答えました。秒で言い切りました。


「でも……高いよ……ものすごく高いよ」

「ええんや! ワタシが稼いだお金、ワタシが自由に使うだけや!」


 そう言って、ワタシは秒でカードを出しました。真っ黒のカードをショップ店員さんに突き出しました。

 ワタシは、オロオロしているイルカちゃんめっちゃ可愛い思いながら、努めてを装って、のんびりした高いトーンの声で言いました。


「なんや知らんエライおっさんたちに、卜術ぼくじゅつしてあげて、ワタシがに稼いだお金や。ワタシの好きに使わせて♪ ・・・知らんけど」


 ワタシは、卜術ぼくじゅつ家です。

 なんや知らんエライおっさん達に、おっさん自身をってもらう、本当の自分をってもらう手伝いをする卜術ぼくじゅつ家です。

 卜術ぼくじゅつで、なんや知らんエライおっさん達の灰汁あくを取り除いて、にお礼にお金貰ってる卜術ぼくじゅつ家です。


 あ! これはとっても大事なことなんで、キッパリハッキリうとくけど、おっぱいは触らせません!! ビタ一文、触らせません!!!

 なんや知らんエライおっさん達には、に手を握ってあげるだけです。

 ワタシのおっぱい触ってええのは、握ってええんは、「たゆんたゆん」させてええのは、イルカちゃんだけです!!!!

 そこんとこ、キッパリハッキリうときます。


 ・

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 ワタシがお会計を済ませると、イルカちゃんはとってもすまなそうな顔してました……なんで?


「ありがとう。私なんかのために、こっちの地球に来ちゃった、私なんかのために、ここまで……」


 泣いてました。イルカちゃんは泣いてました。ワタシは、ワタシのわがままに、イルカちゃん付き合わせとるだけなのに、イルカちゃんは泣いてました。


 可愛い……めっちゃ可愛い……可愛すぎて……死ぬ! 


 ワタシは泣いてるイルカちゃんを「ぎゅ!」ってしました。

 イルカちゃんのちぃちゃい体を「ぎゅ!」ってしました。

 ワタシは泣きながら、ちぃちゃいイルカちゃんを体を「ぎゅ!」ってしました。


 尊い……めっちゃ尊い……尊すぎで死ぬ……もだえ死ぬ!


 そしてワタシは思い出しました。大事なことをに忘れとるの思い出しました。

 ワタシはまだ、誕生日プレゼントを渡してませんでした。


 ワタシは、いそいそと、でっかいトートバックから、プレゼントを取り出しました。バスケットボールくらいの大きさの、ラッピングされたプレゼントを取り出しました。

 そして、あくまでを装って、のんびりした高いトーンの声で言いました。


「イルカちゃん、これ、誕生日プレゼント!」


 イルカちゃんは、キョトンとしながら言いました。めっちゃ可愛く言いました。


「え? まだプレゼントあるの?」


 めっちゃ可愛い。


「ええから、ええから。開けて」


 イルカちゃんは、プレゼントのラッピングを開けました。なんやちぃちゃい手で、モタもたモタもたモタしながら開けました。


 可愛い! めっちゃ可愛い! モタもたモタもたモタして可愛すぎて尊すぎて死ぬ! 


 イルカちゃんは、どうにかこうにかプレゼントのラッピングをほどくと、プレゼントを取り出しました。


 ワタシは、胸を張って言いました。胸を「たゆん」と、張って言いました。


「イルカのぬいぐるみや!」


 ワタシが自信満々で言うと、イルカちゃんは顔を真っ赤にしました。耳まで真っ赤にしました。

 そして、ちょっとモジモジと口を押さえて考えてから。ポツリと言いました。


「これ、シャチだよ・・・オルカ」


 ワタシは思いました。心の底から思いました。ワタシはアホウなカザミドリや思いました。

 だからきました。大きな声できました。


「イルカちゃん! 16歳のお誕生日、おめでとう!!」

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