09:丁寧に教わったからだ。byテンジ

「まぁこんな感じやな。とりあえず、LINEとYouTube使えて、インスタとTwitter使えて、ググるか#ハッシュダグ検索できればに使えるやろ。検索するんに街中で大声出すんは流石にハズいしな。

 あと、ゲームは、お前の趣味がまだわからん。蘇我そがの好きなん勝手に落とせ」


 ワタシは、トルク↑にスマホの説明を受けた。丁寧ていねいに教わった。

 スマホのことを、丁寧ていねいに教わって衝撃を受けていた。


 一番衝撃を受けたのは、そもそも、このスマホが電話だったことだ。

 みんながみんな、に電話を持ち歩いている事がとにかく衝撃的だった。


 電話を携帯して持ち歩くなんて、よっぽどの事だ。じゃない。

 よっぽどの事なんで、芸人さんがネタにするくらいだ。女芸人さんが自前の小道具を作って、肩からかけてネタにするくらいだ。「しもしも〜」ってネタにするくらいだ。

 それを、こっちの地球は、全員もれなくに持ち歩いてるんだから、それはもう衝撃的だった。


 そして、電話なのに、電話として使っていないことが衝撃的だった。電話なんて、は滅多にしないらしい。はLINE? で済ませるらしい。はスタンプ? で済ませるらしい。


 あと、テレビなんては見ないと言われたのも衝撃的だった。YouTube? で勝手に好きな番組を見れば良いらしい。しかも勝手に作っても良いらしい。勝手に全世界に公開して良いらしい。自分で作って勝手に全世界の人に観てもらえるってのが、トンデモなく衝撃的だった。


 そして何より、ググる? が衝撃的だった。似たような言葉なら聞いたことがある。「めくる」なら聞いたことある。やたらと休載する漫画で聞いたことある。

 でも、アレって漫画の世界の話だよ?

 しかも走ったり、ブタ捕まえたり、卵取ったり、塔を攻略したり、鬼ごっこしたり、不平等なトーナメントで戦ってやっと手に入れる事ができるライセンスでようやっと使える事ができる特権だよ?

 そのライセンスを、この世界ではみんなに持ち歩いて、に使っている。衝撃的だった。もうトンデモなく大衝撃だった。


 そしてこんなトンデモない世界で、飛んでるドローン? が衝撃的だった。じゃなかった。


 なんでアレは、空を飛ぶんだ?

 なんでアレは、手元で操作して動くんだ?

 なんでアレは、ちょっとレバーを倒しただけでアホほど動くんだ?

 なんでアレは、すぐにぶつかって落っこちるんだ?

 そしてアレは、そもそもなんだ? じゃない。


 ワタシは聞いた。ドローン? の入った箱を持って、訳がわからないからトルク↑に聞いた。


「ねえ、このドローン? って、なんで飛んでんの? に浮けば良いのに……」


「はぁああ!?」


 トルク↑は、アホな返事をした。無茶苦茶マヌケな返事をした。全く要領を得ない、カンが悪い返事をした。


 あんまりにカンが悪いもんだから、同じ質問を三回した、そして四回目に、


「はぁああはぁああはぁああはぁああ!?」


と、パニックになった。トルク↑は、パニックになった。


「おいおいおいおい! 『浮く』やと、飛行機も電車も船も自動車も自転車も、は、みーんな浮いとるやと!?」


「そりゃ浮くでしょ、。重力使えば良いんだもん」


「はぁああはぁああはぁああはぁああはぁああ!?

 重力は落ちるもんや、地球に引っ張られて落ちるもんや! なんで浮くねん!!」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


「それはこっちのセリフやぁ!!」


 ・

 ・

 ・


 どうやら、こっちは飛ぶのがらしい。いや、飛ぶのも結構スゴいらしい。電車や自動車や自転車はのが普通らしい。

 船に至っては、わざわざらしい。なんで? 水の中を進むのって、アホほど大変じゃない?


 ワタシは、泳ぐのも得意だからわかる。に得意だからわかる。水の抵抗ってめちゃくちゃ重くない? ワタシはとってもスレンダーだったから、水の抵抗はそんなにキツくないけど、ユウリは大変そうだった。それはもう、羨ましいくらい、恨めしいくらい大変そうだった。


 ……まあ、そんなことはどうでも良いとして、なんでわざわざ水の中に入るの? 水に浮くの? スポーツじゃあるまいし。に考えて、無茶苦茶効率悪くない??


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 ワタシは、今日何回このセリフを言っただろう。ちょっと何回言ったかわからない。


 トルク↑は、頭を抱えた。そして、アホみたいにわしゃわしゃと頭をかきむしった。

 そして、おもむろにスマホをいじくって、おもむろにある映画のワンシーンを見せてきた。


「なぁ、蘇我そが……あっちの地球に、これはあるか?」


 『浮いているスケボー』に、乗ってるシーンだった。


「あぁ、懐かしい! それ、幼稚園の時にサンタさんにプレゼントしてもらった!」


「……サンタにプレゼントしてもろたんは……2015年で合ってるか?」


 ワタシは、自分の生まれた日、2009年4月25日から、指を折って数えた。指が全部手のひらにおさまった後、人差し指を一本立てて、自信を持って答えた。


「うん、間違いない!」


「やっぱり!!」


 トルく↑トルクは、天を仰いだ。そして、目頭を押さえながら、消えいりそうな声でつぶやいた。


「……めっちゃウラヤマしい……」


 ちょっとなにいってるか、わからなかった。ワタシは、ちょっとなにいってるか、わからないから、そのまま聞いた。


「ちょっとなにいってるか、わからない」


「あっちに行った蘇我そがは知った……重力の真理を知った……僕を置き去りにして……反重力の真理を知った」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 トルく↑はワタシの言葉をガン無視して、ぶつぶつ独り言を始めた。なんだか訳のわからない独り言を始めた。


「多分やけど、重力波そのものを作り出す方法があっちの地球にはある。任意の方向に発生させた重力波で、重力の作用を打ち消せるはずや。

 そんでもって、その装置の小型化も実現できとる。モバリティも実現できとる。商用化できとる。反重力をみんながに使えるようになっとる。

 リチウム電池くらい小型化できとる。多分、モノポールや! モノポールを実用化できとるはずや!!」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 ……なんだコイツ……でも、ちょっと、カッコイイ?


 トルク↑は、ひとしきりブツクサ言うと、真面目な顔して話しかけてきた。

まぁ、まあまあなイケメンがワタシに話しかけてきた。


蘇我そが、お前がもといたあっちの地球は、こっちの地球と物理法則が違う。根本的に違う。

 いや……厳密には、解釈かいしゃくが違う。

 こっちの地球とあっちの地球やと『重力』、あと多分『電磁気力』の解釈かいしゃくが違う」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 トルク↑は、頭を抱えた。そして、アホみたいにわしゃわしゃと頭をかきむしった。

 そして、おもむろにスマホをいじくって、おもむろにとある有名人の白黒写真を見せてきた。舌を出したアホほど有名なアホほど賢い人を見せてきた。


「多分やけど……このおっさんの……やない大天才の、物理法則の解釈かいしゃくの違いが、地球を

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