07:もう少し知る必要があるからだ。byテンジ

 オレは、自分から喋って正体をバラした。

 オレがワタシだとバラした。


 オレの友達(らしい)十流九とるくトルクにバラした。


 パニックになった十流九とるくトルクに、ワタシの今の状況を叩き込む為、オレは、コイツを自宅に引っ張りこんだ。

 そしてオレワタシになって、ワタシの説明をした。


 ・

 ・

 ・


「そっかー、蘇我そがは、あっちの地球にいってもうたんか……ってそんなん信じるかぁ!」


 十流九とるくトルクは、ワタシの深刻な悩みを、ノリツッコミにして受け流した。


「しかも、あっちの地球では、オマエが女子だった?? んなアホな!!」


 十流九とるくトルクは、ワタシの深刻な悩みを、かぶせツッコミで受け流した。そして、ハッとした顔をした。

 ハッとした顔をして、瞬く間に顔が真っ赤になった。耳まで真っ赤になった。


 そして、ならすぐに理解できそうなことを、いまさら大声で叫んだ。


「てことは、蘇我そがは、あっちの地球で、女子になっとるって事か!!??」


 十流九とるくトルクは、天を仰いだ。そして、目頭を押さえながら、消えいりそうな声でつぶやいた。


「……めっちゃウラヤマしい……」


 ちょっとなにいってるか、わからなかった。ワタシは、ちょっとなにいってるか、わからないから、そのまま聞いた。


「ちょっとなにいってるか、わからない」


「あっちに行った蘇我そがは知った……女の子の神秘を知った……僕を置き去りにして……女体にょたいの神秘を知った」


「ちょっとなにいってるか、わからない」


 ちょっとなにいってるか、わからなかったので、ワタシは、この後、同じ質問を三回聞いた。

 そして、四回目で、どうやら、コイツが女子の体に興味津々である非モテ野郎である事を理解した。


 理解したところで、改めて言った。


「ちょっとなにいってるか、わからない」


「わからんやろうなぁ……女子だったお前に、の男子の気持ちがわかってたまるか!!」


 うん、わからん。

 わからんが、なんとなく、ワタシはコイツのことを、十流九とるくトルクの事を、雑に扱っていいような気がした。にいじっても平気なタイプな気がした。


 いじってもいい気がしたので、こっちの地球に来てその存在を初めて知った、スマホ? に語りかけた。とある女優さんの画像を探して欲しくて語りかけた。


 小さい頃から、もうマルマル十年以上、芸能界の第一線でモリモリ活躍している、ワタシよりちょっと年上で、本が好きで、ワタシよりちょっと背が高くて、ワタシよりちょっとだけバストがある……ウソついた。ワタシよりは遥かに豊かだけど、よりはちょっとだけささやかなバストで、顔はワタシといい勝負の女優さんの画像を探して欲しくて語りかけた。


 スマホ? は、それがだと言わんばかりに、当然だと言わんばかりに、アホみたいに素早く、その女優さんの写真を画面に写した。アホほどたくさん写した。でもって、ちょうど、今のワタシと同じくらいの年頃の時に撮影した、制服に着ている写真が見つかったから、それを叩いて画面を大きくした。


 さあ、驚くがいい!

 非モテ野郎の十流九とるくトルクよ、驚くがいい!

 葛城かつらぎイルカがではないことに驚くが良い! 絶世の美少女である事を知って、驚くがいい!


「これ、(バスト以外は)ワタシに似てる女優さん」


「……ふーん」


 十流九とるくトルクは、特になんの感情も抱かず、にスマホ? の画面を見ていた。


 ……なんだコイツ、ムカつく! アホほどムカつく!!


 ワタシは十流九とるくトルクにムカつきながら、スマホ? の画面をスワイプ? していると、ワタシにそっくりな女優さんに混じって、あるアイドルが目に止まった。水着姿のアイドルが目に止まった。そして、うっかり口をすべらせた。


「あ、この娘、ユウリに似てる」


「な、なんやってー!」


 十流九とるくトルクは、ワタシからスマホ? を奪い去ると、スマホの画面をひととおり、上から下まで舐め回すように見た後、画面を拡大? して、バストのアップを食いいるように見た。


 ……なんだコイツ、キモい! アホほどキモい!!


 十流九とるくトルクは、しばしスマホ? に写ったバストのアップをしばしば見て、それから欲望があふれんばかりのタメ息をついた。そして、一言、


「いいなぁ、蘇我そが……」


と、つぶやいた。


 ……なんだコイツ、キモい! アホほどキモい!!


 でも、まぁ、良かった。

 ワタシはコイツと入れ替わらなくて本当に良かった。ユウリが危うく大変なメにあうところだった。

 ユウリの「たゆんたゆん」を、コイツに「たゆんたゆん」されるところだった。


 そして、実のところ、ワタシはコイツが、この十流九とるくトルクが、蘇我そがテンジの親友だったことに心底感謝していた。


 なぜなら、こことあっちの地球の違いの事だけは、に理解してくれたからだ。


「で、トルク、このスマホ? なんだけど」


十流九とるくや、名前で呼ぶんやめぇ!

 蘇我そがの顔して、下の名前で呼ぶんやめぇ!

 に苗字で呼べぇ!

 『トルク↓』やのうて、『十流九とるく↑』や!」


「じゃあ。トルく↑……」


 ワタシは、このめんどくさいやりとりが、本当にめんどくさかったから、最後のひと文字だけ、苗字で呼ぶことにした。


「それで、ええ! これで今からお前は、蘇我そがや!

 でもって、スマホの説明やな!」


 ワタシは、このスマホ? と言う便利な機械の説明を受けながら、次はドローン? の事を聞こうと思っていた。


 ワタシは、ドローン? にとても興味があった。

 ドローン? はなぜ、わざわざ飛ぶのか。

 そもそも、こっちの地球の乗り物は、なぜのか、とても興味があった。


 なぜ、スマホ? みたいなアホほど便利な道具があるのに、なぜこっちの地球の乗り物はのか。

 なぜドローン? は、すぐ壁にぶつかるのか、とても、とても興味があった。


 ワタシは、こっちの地球の事を、もう少し知る必要があると思った。あっちの地球とは、常識が随分と違っていたからだ。


 それを、このアホでアホほどキモいけど、アホほど賢いトルく↑なら、に教えてくれると思ったからだ。アホほどわかり易く、に説明してくれると思ったからだ。

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