06:もう少し識る必要があるからだ。byイルカ

 私は、おっぱいを触って正体がばれた。

 私僕だとバレた。


 私の友達(らしい)遊梨ゆうりユウリにバレた。


 遊梨ゆうりユウリに詰められた私は、彼女を自宅に連れてきて、私僕になって、僕の説明をした。


 ・

 ・

 ・


「そっかー、イルカちゃん、あっちの地球にいってもうたんや……」


 遊梨ゆうりユウリは、寂しそうにつぶやいた。


「しかも、あっちの地球で男の子になってもうたんや……」


 遊梨ゆうりユウリは、寂しそうにつぶやいた。そして、ハッとした顔をした。

 ハッとした顔をして、瞬く間に顔が真っ赤になった。耳まで真っ赤になった。


 そして、今頃になって、ようやくじゃ考えられない自分の行動を、大きな声で叫んだ。


「ワタシ、男の子におっぱい触らしてもうた!!」


 遊梨ゆうりユウリは、両手で顔を覆い隠して恥ずかしがった。自分がしでかしたことを、大いに恥ずかしがった。

 そして、消えいりそうな声でつぶやいた。


「……めっちゃハズい……」


 遊梨ゆうりユウリは、驚異的な胸囲を僕に触られたことを、に恥ずかしがった。

 「たゆんたゆん」を僕にわしづかみにされたのを、両手で顔を覆って、しきり恥ずかしがった。


 そして、ひとりしきり恥ずかしがると、顔を覆った両手を剥がして、コロコロと笑った。


「ま、しゃーない」


と、コロコロと笑った。


「減るもんやないし、こっから先は、君がイルカちゃんなんやし」


 あっけらかんとコロコロ笑った。そして、おもむろにしゃべり始めた。


「ま、しゃーない。入れ替わったんはしゃーない。でも、なんで入れ替わったかはる必要ある。卜術ぼくじゅつ家として、る必要ある……知らんけど」


 遊梨ゆうりユウリは、おもむろにタロットカードを取り出して、おもむろにシャフルを始めた。シャフルしながら、しゃべり続けた。


「うーん……どーせ、イルカちゃんと入れ替わったんや。に考えたら、こんだけしか使わんでええやろ……知らんけど」


 そう言うと、シャフルしていたタロットのおしりを、「ていん」と叩いた。

 カードの束から、3分の1程度のカードが、僕の部屋の畳間にバラバラと落ちた。


「占い?」


 僕が畳の上に散らばったタロットカードを見ながらつぶやくと、


占術せんじゅつやない! 卜術ぼくじゅつや!」


と、語気強めの返事が戻ってきた。


「全然違う。占術せんじゅつ卜術ぼくじゅつは全然違う。

 占術せんじゅつは答えが決まっとるや。生まれた瞬間からこよみが決まっとる。こよみは絶対や。絶対の答えから、その人の可能性を探るや。


 対して卜術ぼくじゅつは答えが無い。答えが無いんに答えを出すや。

 悩んで悩んで、ごった煮になって、灰汁あくだらけになった心から、灰汁あくを取り除く技術や。心をすっきりさせるや。


 そんなのこと、なんで知らんのや……知らんけど」


 僕は思った。これは、【数学すうがく統計学とうけいがくの違い】と全く一緒だ。怖いくらい一緒だ。


 数学は、は答えが決まっている。絶対に答えが決まっているだ。

 絶対に答えが決まった定理を、様々な分野に活用するだ。


 対して、統計学はは答えがない。答えがない答えに、仮説を立てるだ。

 統計を調査して、余分ノイジー灰汁マイノリティをできるだけきれいに取り除いて、純粋サイレント情報マジョリティに切り分けるだ。


「手ぇ、貸して」


 僕は、遊梨ゆうりユウリに言われるがまま、手を差し出した。

 遊梨ゆうりユウリは僕の手をとると、瞳を閉じて集中した。

 どうやらこれが、僕の灰汁あくを取り除く儀式のようだ。


 遊梨ゆうりユウリは、目を閉じて「むむむ」と集中した。

 遊梨ゆうりユウリは、眉間にシワを寄せて「むむむむ」と集中した。

 遊梨ゆうりユウリは、首をかしげて「むむむむむ」と集中した。


 そして一言、


「わからん!」


と叫んだ。


「やっぱあかん、手やあかん!

 イルカちゃんにりん五行ごぎょうを、ワタシが貸さなあかん!」


 そして、僕をにらんだ!


「あとそれから君は、遊梨ゆうりユウリ言うんやめぇ!

 頭の中で遊梨ゆうりユウリ言うんやめぇ!!

 ワタシとイルカちゃんは親友なんや!

 大親友なんや!!

 、大親友のことフルネームで呼ばんやろ!!!」


「あ、えっと……ごめん。遊梨ゆうり……さん」


「苗字でさん付けはやめえ!」


「じゃ、じゃあ。遊梨ゆうり……」


「苗字やめえ!! そのイントネーションやめえ! 『遊梨ゆうり↑』やのうて『ユウリ↓』や!」


「えっと、じゃあ、遊梨ゆうり↓……」


 僕は、初対面の女の子の名前を呼び捨てるのは、どうしてもはばかられた。とても照れくさかった。仕方がないので、苗字のイントネーションを変えることした。


「うんうん! これで君とワタシは親友や!!

 君は今日から、イルカちゃんや!! ……知らんけど」


 そう言うと、遊梨ゆうり↓は、ニコニコしながら、口を「しゅるり」と拭った。

 そして、口を「しゅるり」と拭った手で、おもむろに胸元に突っ込んで、おもむろにインナーシャツを引っ掴んで、おもむろに引っ張り上げた。


 制服の中が「たゆん」と揺れた。

 制服の中のおっぱいが「たゆんたゆん」と揺れた。

 ブラジャーによって、必死に重力にあらがっていたおっぱいが「たゆんたゆんたゆん」と揺れた。


 そして、じゃ考えられないことをした。さっきから握り続けている僕の手を、おもむろに「たゆんたゆん」に押し込んだ。


 そして、「にへら」と笑った。


「はぁ、ようわかる。君のことようわかる。

 イルカちゃんになった、君のことがようわかる。

 やっぱり、おっぱい触ってもらわんと、におっぱい握ってもらわんと。

 イルカちゃんにりん五行ごぎょうを、ワタシが貸さなあかん……」


 そう言うと、「にへらにへら」と笑っていた遊梨ゆうり↓は、再び、目を閉じた。

 再び目を閉じて、遊梨ゆうり↓は、「むむむ」と集中した。




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