05:やっぱりここからだ。byテンジ

 さて、どこから話せばいいんだろう。


 やっぱりここからだ。ここからだよな……オレは、結構な進学校の、次席入学者だった。


 オレの学校は、結構な進学校だったから、入学早々、に実力テストがあった。だが問題は結構わからなかった……ごめん、ウソついた。さっぱりわからなかった。これぽっちもわからなかった。


 ちょっと意味がわからない。問題の意味が全くわからない。じゃ考えらない難しさだ。

 そもそもオレの苗字が結構難しかった。蘇我そがの「」の字がなかなかに難しかった。


 あまりの問題の難しさと、「」の字の結構な難しさに、ストレスがピークに達した。

 だから今、オレは体育館にいる。


 体育館で一人でバスケをしている。


 オレは、アホみたいな大きな手で、バスケットボールを「ダムダム」とドリブルして、「ブワァ」とボールを放り投げて、空中で「バシィ」と取って、そのままアリウープで「ガシャコン」とボールをリングにたたき込んだ。スラムダンクでたたき込んでやった。


 ……つまらん。思った以上につまらん。


 わかってる。これは多分、試合じゃないからだ。こんなにアホみたいに背が高いんだ。ダンクだって、アリウープだって、対戦相手がいなければ、にリングに入るのは当然だ。


 そして決まっている。オレはバスケ部に入るに決まっている。なぜならテストが限りなく「永遠の0」に決まっているからだ。

 この学校にバスケットボール部があってよかった。バスケの強豪校でよかった。スポーツ特待の制度があってよかった。そうじゃないとオレはに考えてこの高校を永遠に卒業できそうもない。


 とはいえ、正直な所、乗り気ではなかった。バスケにあまり乗り気ではなかった。オレは、じゃエンジンがかからない。目の前に傷害がないとエンジンがかからない。一度チラッとこの学校の練習をみたけれど、申し訳ないけど、ちょっとエンジンがかかる気はしなかった。だった。ライバルになりそうな相手はいなかった。つまりは流川楓るかわかえではいなかった。


 これなら、ドローン? の方が楽しくね?


 アレはちょっと意味がわからない。じゃない。


 なんでアレは、空を飛ぶんだ?

 なんでアレは、手元で操作して動くんだ?

 なんでアレは、ちょっとレバーを倒しただけでアホほど動くんだ?

 なんでアレは、すぐにぶつかって落っこちるんだ?

 そしてアレは、そもそもなんだ? 飛ぶなんて考えられない。


 アホほど意味がわからないから、アホほど真剣に考えていたら、かるーい声が聞こえてきた。かっる〜いトーンの関西弁が聞こえてきた。


蘇我そがぁ! さがしたで〜」


「あ〜?」


 オレが答えると、そいつは、転がっていたバスケットボールを思いっきりぶん投げてきた。オレがに「バシィ」と片手で掴み取ると、そいつは驚いた顔をしていた。


 ソイツは、まあ、の背で、まあ、ちょっとだけ色を抜いた短髪で、二重ふたえだけどまあ、の目で、まあ、本当にの鼻と口をした、ソイツは、まあ、まあまあのイケメンだった。


 オレは、まあ、まあまあのイケメンを特になんの感情も抱かずに見ていると、あっちはアホみたいに驚いていた。かっる〜い関西弁で驚いていた。


「バスケットボール片手で捕るて、お前、凄ない?」


「何が?」


 オレは、まあ、まあまあのイケメンに、ボールを思いっきり投げつけた。


「おわぁ!!」


 まあ、まあまあのイケメンは、ボールを受け損なって、受け損なったボールをしたたか顔面にぶつけた。

 まあ、まあまあのイケメンは、しょんぼりしゃがみ込んで、したたか顔を押さえて、しばらくしてからいきなり起きて叫んだ。かっる〜い関西弁で叫んだ。


「なんやぁ!? なんでいきなりアホみたいに運動神経よくなっとんや!」


 ……あーそう言うことか。


 オレは納得できた。そして考えた。そして考えたがめんどくさくなった。だからに言った。本当のことをに言った。


「ワタシの名前は、葛城かつらぎイルカ。背が低いのと、ほんのちょっとだけスレンダーすぎる以外は、パーフェクツに可愛すぎる絶世の美少女!」


「はぁああ!?」


 パニックになっていた。まあ、まあまあのイケメンはパニックになっていた。パニックになって、同じことを三回聞いてきたから、三回とも同じことを答えた。そしてその結果、


「はぁああはぁああはぁああ!?」


もっとパニックになっただけだった。パニックが、三倍になっただけだった。


 この、まあ、まあまあイケメンの名前は十流九とるくトルク。

 この、結構な進学校の、首席入学者だった。

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