ミノ肉がベヒーモスより美味いか、確かめに行くぞー!!
「ここがミノタウロスとかいう牛がいる迷宮か!」
もう少しでエルフの王国に着く……その手前にあった謎の建物を、オメガは腕組みしながら見上げた。
巨大な扉があり、その周りを囲うのは堅牢な壁だ。
一見レンガのように見えるそれらをスキャンしたオメガは、その素材に首を傾げた。
ーーー霊子結合強化のコーティング?
物質の強度を飛躍的に引き上げるその技術を、オメガはこの世界で初めて目にしたのだ。
しかしこの技術が存在するのなら、エルフの装備や魔王城などにも使われている様子がないのは何故なのだろうか。
「ここは、通称『ミノスの迷宮』と呼ばれています。古代文明の産物ですね」
「古代文明?」
「ええ。かつて、今の文明が隆盛する前に存在した、とされる古代人の文明です。稀に出土するのですが……遥か太古には、陸を空に浮かせることすら出来たとか」
「ふーん? 浮遊都市みてーなもんか」
「ふゆ、え?」
「俺サマが住んでた世界にも、同じようなもんがあったって話だよ」
というか、人類が滅ぶまではそこに住んでいた。
まぁどうでもいい話だ。
「だけどコレ、普通に壁飛び越えられるんじゃねーの? 迷宮とか言っても、上から行ったら良くね?」
中が迷路になっているとしても、壁の上を辿ってしまえば特に踏破は難しくなさそうだが。
そんな風にオメガが思っていると、アーレンハイトは首を横に振った。
「地上部分は、かつてあった城か街の廃墟だと言われています。なぜ破壊されているのかは不明ですが、迷宮はその中心から繋がる地下なのです」
「……んじゃ、なんでこんな厳重に扉で塞いでるんだ?」
扉に霊子強化コーティングが施されていないので、コレは後付けだろう。
「一応、警戒のため……ではないでしょうか。魔術的な封印の気配があるので、もしかしたら地下から、魔物が出てきたことがあるのかも知れませんね」
「なるほど。まぁ、とりあえずぶっ壊すか!!」
オメガが腕組みを解くと、カルミナが慌てて制止する。
「いやちょっと待て!」
「待たねー!
右手を突き上げて吼えると、黄色の外殻が身を包み、巨大な柄頭と長い柄のウォーハンマーが手の中に現れる。
右腕が補助強化装甲に覆われており、オメガが持つ形態の中で、最も
「行くぞー!」
「待てと言っているだろうが! もし扉を壊して中から魔物が溢れてきたら、どうするつもりだ!?」
「飯が増えてラッキーだな!!」
「そういう意味ではない!」
相変わらず口うるさいカルミナに、オメガはウォーハンマーを肩に担いで、その褐色の美貌をジッと見る。
「カルミナ」
「何だ」
「未知なる飯の材料があるかも知れねーの。そんなしょーもないことで、いちいち止めんな」
「しょうもな……!?」
「とりあえず岩かなんかで塞いどきゃいいだろ! この辺りは外に強い魔物もいねーし、エルフ軍がここで待っときゃ問題ねー! ってことでウラァッ!!」
ブォンっ! と両手でウォーハンマーを構えながらオメガは腰を捻り、そのまま横薙ぎに扉に叩きつける。
均衡することすらなく、ハンマーヘッドの形にど真ん中を貫かれた扉が、何やらひび割れるような光を撒き散らしながら砕け散る。
「! 封印結界を、一撃で……!?」
「まぁ、オメガ様ですし……」
「よっしゃー! さー、ミノ肉がベヒーモスより美味いか、確かめに行くぞー!!」
オメガがテンションを上げて拳を突き上げると、カルミナが肩を落としてボソリとつぶやく。
「なぜこう、寄り道ばかりするのです……?」
「今回に限って言えば、オメガ様が貴女を助けてくれた、ご褒美ですねー」
「……そう言われてしまうと、何も言い返せないのですが」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます