第1話 羊毛パーマの敏腕探偵
「ワカちゃんとペア組んでとある捜査に行ってきてちょうだい。」
重要書類を渡され、3日前にそう告げられた。紫がこの探偵事務所に来て3年になるが、俺は極力紫と距離を置いていたため、殆ど関わることなく、平和に過ごしていた。それなのに所長はあっさりと俺の努力を崩した。所長曰く、「プロ同士切磋琢磨する姿は美しい。」らしい。正直勘弁して欲しい。
さっきも言ったが、紫がこの探偵事務所に来て3年になる。そして紫は東京大学文科一類卒のエリートにもかかわらず就職で大失敗。行く果てをなくし院に進むことを決意するが、院試でまたしても失敗。こうして途方に暮れていた紫は、近くの公園のブランコに腰掛け、缶ビールを片手に何やら早口でブツブツと呟いていたそうだ。不審に思った所長がそこで紫に声をかけた。それが紫若葉と所長の初めての接触だ。
話を聞いて貰えたのが嬉しかったのか、紫は自分の失敗を話しながらわんわん泣き喚いたらしい。見かねた所長は、「うちにおいで。」と、紫を雇うことにし、探偵事務所の一角には紫の部屋ができた。
初めて事務所に顔を見せた時には驚いた。ふわふわの羊毛のような天然パーマは首元まで広がり、まん丸お目目は
それでも俺はこの子と打ち明けようと趣味を聞いた。そしたら、「前までカビの胞子を観察することだったんですけど、最近は広辞苑を全部覚えるのにハマってますヨ。」と照れながら言われた。声色は明るめで気取ってる感じでもない。黙っていれば普通にかわいい女の子なのに、言動と行動がやばい。俺には住む世界が違うと悟ったのだ。
紫若葉の書斎は汚い 雀羅 凛(じゃくら りん) @piaythepiano
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