シーカの愛


アルド、エイミはキナを連れてチャロル草原の奥の暗い森を進んでいた。そこは昼間でも薄暗く、なんとも不気味な場所だ。


エイミ「うぅ、薄気味悪いわね。」


アルド「エイミ、大丈夫か?」


エイミは強がって声を張り上げた。


エイミ「平気よ!リナと約束したんだもん、最後までやり遂げなきゃ。」


キナ「リナ、、、?」


アルドとエイミは顔を見合わせて苦笑いした。


キナ「そういえばここ、、、よくシーカと並んで座っていた切り株です。彼、ここは魔物があまりいないからっていつもここに呼んでくれて。」


キナはそこまでいって何かを気づいたようだった。


キナ「あそこの青色の果実がなっている道!あの果実を取ろうとしてあの道に入ろうとしたら、怒鳴られたんです。そこの道の果実はまずいからやめろって、、、もしかしてこの道の奥に魔女の棲家があったのかも、、、。」


アルド「それだ!エイミ、キナ、この奥へ行こう。くれぐれも気をつけるんだ。」


二人は頷いて彼女に続いた。エイミはキナに小声で耳打ちする。


エイミ「キナ、シーカに大事にされてたんだね。」


キナは弱々しく笑った。


しばらく奥に進むとなんとも禍々しい空気に包まれた空間にたどり着いた。


アルド「行き止まりみたいだな。」


エイミ「、、、、はっ。アルド!危ない!」


アルドに目掛けて飛んできた攻撃をエイミは拳ではらった。


エイミ「誰!?」


「ふっふっふっ、、、人の棲家に入り込んどいて、ずいぶん大口を叩くじゃないか。」


キナの顔が青ざめる。


キナ「あなた、、、魔女!」


魔女「くっくっくっ。誰かと思えば、裏切り者の娘じゃないか。あの獣は死んだのに、お前まだ生きていたんだね。」


キナ「シーカ!シーカはあなたのせいで死んだの!?答えて!」


魔女「黙れ!人間の小娘!」


魔女はキナを攻撃した。アルドが咄嗟に盾となる。


アルド「キナ!下がって!」


魔女「あの獣はお前のせいで死んだんだろ。」


キナ「私?私のせい?なぜ!」


魔女「あの時、私はこの大魔女を蔑ろにして、楯突く村人たちが気に入らなくてね。どうにか侵略する隙を狙っていたんだ。その時、お前たちが親密な仲であることに気づいたんだ。



シーカ「突然なんのようだ。俺は暇じゃないんだ。」


魔女「お前、私に逆らえる立場なのかい?まぁいい、人間の恋人がいるようじゃないか。」


シーカ「なっ、お前!」


魔女「私にばれないとでも思ったのかい!愚かな獣だね!あの娘もその家族も皆殺しにしてやる!私も可愛いしもべたちに手を出したんだからね!」


シーカ「やめろ!キナには!キナとその父親だけには手を出すな!」


魔女「くっくっくっ、、、醜い獣のくせに。いいだろう。キナとその父親には手を出さない。その代わり村に侵入する方法を教えろ。」


シーカ「、、、本当に彼女には手を出さないんだな。」


魔女「あぁ、お前にその見た目と引き換えに力を与えた時と同じ。これは闇の契約だ。約束しよう。」


ーーーーー



キナ「そんな、、、私を守るためにシーカが村の抜け道を教えたの?」


魔女「そうさ!でもあの汚い獣!村に侵略した瞬間暴れ回って、私のかわいいかわいい魔物たちを次々殺しやがった!私の復讐の邪魔をしたんだ!」


キナ「!!!!」


アルド「何だって?シーカは村人を傷つけていない。守っていたのか!」


魔女「そうだ!醜い魔物のくせに!私の邪魔をしおって、、、だから私がとどめを刺してやったんだ。刺し違ってわたしも致命傷を負ったがね。しかし私は復活した!あの獣は死んだがね、所詮私が与えた力、勝てるわけがない!」


エイミ「醜い魔物なんかじゃない!シーカは人間の心を持っていたのよ!キナやキナの大事な人々を守っていた!」


キナ「うっ、、、シーカ。許せない!」


魔女「黙れ、私のしもべだ。どう使おうが私の自由だろ。」


アルド「これ以上お前の好き勝手にはさせない。キナの気持ち、時を超えて信じているリナの気持ち。俺たちが代わりに相手になる!」


アルドとエイミは魔女と闘った。


魔女「なんて力、、、普通の人間ごときにこの私が負けるとは、、、」


魔女は深い闇に消えていった。


キナ「二人とも、ありがとう。あの、なんて言ったらいいか。」


エイミ「とりあえずこの辺りは魔物もまだ多い。村の近くに戻りましょう。」


三人は村を出た。




アルド「キナ、これで真実がわかったな。」


キナ「はい、シーカのことをこれで信じて生きていくことができます。二人ともありがとう。」


キナはアルドとエイミに深々と頭を下げた。


キナ「すみません、そろそろ父の様子を見に行かないと。またしっかりお礼させていただきますね。」


キナはアルドたちに見送られ、草原の奥へと走っていく。その足取りはどこかリナを思わせた。

キナを見送るとアルドはエイミに声をかけた。


アルド「未来に戻ってリナに伝えに行こう。うまく伝える自信ないけどな。」


エイミ「そうね、行きましょう。」



最果ての島に戻ってきた二人はリナの家に向かっていた。


リナ「おにいちゃーーーん!おねえちゃーーーん!たいへんたいへんたいへーん!」


リナが手を振りながらこちらへ走ってくる。


リナ「大変なの!私納得いかなくて家中をくまなく調べたんだ!そしたらもう一つ手紙が出てきたんだ!」


アルド「なんだって?!!!!」


二人は驚いてリナについて家へ向かった。そこにはリナの祖母がありその手には緑色の葉っぱが握られている。


祖母「リナが見つけてくれたんじゃ。私はこの首飾りのこと勘違いしていたのかもしれぬな」


そこにはこう記されていた。


"この首飾りは私の一族を命がけで守っり、私が生涯愛したひとの形見です。"


エイミ「これは、、、キナが。」


アルド「間違いない。サルーパに生えている植物だ。」


祖母「リナの言っていたことが正しかった。これは守り神だったんだねぇ。」


リナ「おばあちゃん。」


二人は強く抱きしめ合った。アルドとエイミの真実を求める旅が導いた奇跡だ。


その時家の外では満足そうに、見守る黒猫の姿があった。扉の向こう側を走っていった猫を見たリナは祖母に尋ねる。


リナ「そういえば、やっぱりあの猫飼ってもいいかなぁ。すごい懐いちゃって。」


祖母「お前が餌をやり続けるからだろう。ちゃんと世話するんだろうね?」


リナ「もちろん!もう名前も決めてるの!


シーカ!あの子はシーカだよ。」


終わり

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真実の旅 @funyuusa

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