第17話

 あれからベッドに戻り寝転がった俺は特にすることもないので懐からステータスカードを取り出し——うん?


 「あれ?」


 ステータスカードが無い。

 と、そういえば今の俺の格好は外に出ていたときと違うんだから今の俺がどこかに持ってるわけないよな。

 そんな簡単に捨てられたりするものでもないだろうと思い、辺りを探す。予想だと少なくともこの部屋の何処かには置いてあるはずだ。


 「お、あったあった」


 ベッドの近くにある小さな棚の上にステータスカードが置いてあった。ちょっと身体を捻ってステータスカードに手を伸ばす。


 「あてててて……」


 身体が鈍った身体を無理やり動かした時のような痛みが起こるが気にしない。手に取ったステータスカードを顔の前まで持ってきて内容を見る。


 「あれ、前と違うな」




名前:リン ミヤマ

性別:男

職業:異界の狩人

LV:14

HP :82%

筋力:32=109(↑77)

体力:30=96(↑66)

精神力:27=60(↑33)

耐力:23=56(↑33)

敏捷:36=91(↑55)

運:29=33(↑4)

スキル

『異界の狩人』(派生あり):異界より現れしそれは全てを狩る。

『身体強化LV2』:自身の基礎ステータスを上昇させる。UP

『武具適正B』(『異界の狩人』より派生):全ての武器(盾含む)に玄人級の適正を得る。

『鑑定(EX)』(『異界の狩人』より派生):自身の強さに応じて様々な情報を取得することが出来る。

『素材回収RANK2』(『異界の狩人』より派生):RANK1等級の素材を獲得できる。UP

『薬品生成(EX)』(『異界の狩人』より派生):手に入れた素材で異界の狩人御用達の薬品を生成する。 NEW

『アイテムBOX(EX)』(『異界の狩人』より派生):手に入れた素材を収納しておける。NEW

『当たり』(待機中)

称号:なし




 「いやすげぇ増えてる!」


 レベルは上がってるわステータスも上がってるわもう何これ。

 さらに『アイテムBOX』はともかくスキルの数も増えている。(『異界の狩人』より派生)ってことはこの先もどんどん増えていくってことなのか?

 ちょっと詳しく見てみたくなって、『異界の狩人』と記されている場所を指先で叩いてみる。


 「え〜、反応なしかよ」


 どうやらそこまで親切な仕様ではないようだ。普通はなんか細かい説明とかが出てきたりするもんだけどなぁ……。

 軽く落胆したが、気を取り直して次に気になる場所を見てみる。


 「え〜と、なになに『薬品生成』……」


 ヴァンッ


 「っとぉーなんだ?」


 スキル名を読み上げた途端突然宙に浮かんだ画面が2つ出現した。そこにはまず調合内容という文字と三角フラスコのような形が二つ表示され、間には『×』と言う記号があった。さらにその下には生成結果という文字とまた三角フラスコが表示されていた。

 もう一つのウィンドウは小さく表示され、その内容は『アイテムBOX』の中にあるはずのものが表示されていた。とは言っても大量の『マアルの実』なので表示自体は簡潔にまとめられて『マアルの実×28』というように表示されていた。


 例の如く使い方はなんとなく分かった。俺は『マアルの実』を選択して二つのフラスコが並んでいるうちの左側に『マアルの実』を入れる。同じく右側にも『マアルの実』を選択して入れた。すると——


 [以下の素材で生成を開始します。(『マアルの実』×『マアルの実』)成功率95%]

 はい   いいえ   


 迷わず『はい』を選択する。すると右側のフラスコがゆらゆらと揺れだし選択した後に表示されていた液体のようなものを左側のフラスコの中へと移していく。すると移されて水かさの増えたフラスコに蓋がされ、激しく震えだす。それは中身は高速でかき回しているように見えた。


 ピカン!


 振られていたフラスコがそんな音が聞こえた瞬間静止する。下に表示されていたフラスコに左側のフラスコの中身が移される。


 [生成に成功しました。(濃縮マアルジュース×1)]

 [アイテムBOXに収納します。]


 こんな表示が下の画面に表示された。俺は早速アイテムBOXを出現させて手を突っ込んだ。


 マアルの実×26

 濃縮マアルジュース×1


 『濃縮マアルジュース』を取り出してみると、そんなものは持ってなかったはずなのにいつのまにか牛乳瓶のようなものに入れられていた。容器を軽く振ってみるとマアルの実の群青色の液体がチャプチャプと音を立てて揺れる。

 不思議に思いつつもとりあえず頭の中で鑑定、と唱えてみる。



 『濃縮マアルジュース』:『薬品生成』でのみ獲得できる、マアル100%ジュース。『薬品生成』なのにジュースとはこれ如何に。使用者のHPを50%回復させる。とても美味しい(重要)。



 なんだかツッコミどころ満載な説明が頭の中に出てきた。ウィンドウ表示とかではなく瞬時に理解できたような感じだ。まぁそれはともかくとして。


 「回復薬か、HP50%回復ってことは今の俺が飲んだら全回復できるってことだよな。……よし、飲んでみるか」


 ちょっと不安だけど。まぁわざわざとても美味しいとか説明にあったし味は大丈夫だろう。

 刺さっていたちょっと幅広で大きめのコルクをとりまずは匂いを嗅いでみる。

 匂いは、いい香りだな。

 ちょうどブドウに近いような匂いが瓶から香る。

 飲めるものではあるようなので、恐る恐る口をつけて少しだけ口に含んだ。


 「ッうまぁッ!」


 なにこれうまい! 匂いと同じく葡萄のような味がするが同時にアセロラのようなほど良い酸味が絶妙に効いている!

 我慢できずに一気にゴクゴクと喉を鳴らす。量も少ないのですぐに飲み終わってしまった。それと同時に——


 「ん……、身体が! うおおすげぇ身体が痛くねぇ!」


 飲み干した途端に嘘のように痛みが消えた。まさかと思い俺はステータスカードを見た。


 「あれ、HP表示が消えてる……。あ、もしかしてそういうこと?」


 多分HPが満タンになったから表示が消えたんじゃないかな?

 俺の予想は多分当たっているはずだ。実際初めてステータスカードを確認した時もHPの表示はなかった。それは今回と同じくHPが減っていなかったからだろう。

 ……うん? じゃああの時教会に行く時までに感じてた痛みは一体なんだったんだ? 筋肉痛だったとか? ……う〜ん、分からん!

 まぁ、もう過ぎたことではあるのであまり気にすまい。それにしても——


 「これすげぇな……!」


 手に持った空き瓶をまじまじと見つめる。


 [空き瓶を取得しました。収納しますか?」


 「あれ、これも素材になるのか」


 許可を出すと見慣れたエフェクトに包まれて空き瓶が消える。しばし余韻に浸っていた俺は、アーリィにもこれを飲ませてやろうと思いついた。一度生成したら慣れたもので、サクサクと画面を出して次々と生成していく。

 俺は最終的に『濃縮マアルジュース』を合計12個生成しておいた。『マアルの実』を2個残しておいたのは単純に換金用だ。

 ベッドから降りて『アイテムBOX』から『濃縮マアルジュース』を取り出して部屋から出ようとドアノブに手をかけ——


 ガチャッ


 「あ、リンさん! ごはんの時間です!」

 「あ、ちょうど行こうと思ってたんだよ」

 「それならいっしょに行きましょう!」

 「ん、そうさせてもらおうかな」

 「じゃあ、はい!」


 そう言ったリラから手が差し出される。

 はーやれやれ。

 リラの手を取る。


 「んふふふ、行きましょうね!」

 「ああ」


 俺はリラに手を引かれ夕食の待つ食卓へと連れて行かれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る