第54話 北の皇帝は味方の敗戦に呆然としました
ノルディん帝国皇帝は切れていた。
「どういう事だ、第4師団が壊滅しただと。昨日までの報告では勝っていたのではないのか」
ノルディンの誇る精鋭3個師団を投入したのだ。マーマレードなどに負けるわけはないと送り出したのだ。それも今回は奇襲したのだ。準備のできていないマーマレード相手に初戦は圧倒していたはずだった。なぜ、追撃戦で殲滅された?
「も、申し上げます」
更に伝令兵が駆け込んできた。
「第2師団の生存者の報告によると、第2師団と第5師団はほぼ壊滅させられたと」
「何じゃと。マクシムはどうしたのだ」
「戦死されたとのことです」
「アレキサンドルはどうした」
「アレキサンドル様の安否は不明です」
「しかし、一部噂によりますと、アレクサンドル様が裏切られたというのもございます」
「何だと、あのアレクサンドルが裏切っただと」
「詳細は判りませんが」
「しかし、マクシムがいて負けるというのはどうかと思うが」
皇帝はいまだに信じられなかった。マクシムは残虐王子として凄まじい実績を残していたのだ。今回のもたとえうまくいかずともノザレの占拠は確実だと思われていたのが、逆襲されて殲滅されるとは。マーマレードには何がいるのだ。
「噂によりますと、伝説の戦神が蘇ったと言うのもありますが」
宰相が言った。
「はっ。シャラザールが蘇ったというのか。戯言は程々にせよ」
不機嫌そうに皇帝は言った。
「直ちにもっと情報を集めよ」
「御意」
皇帝の命令に宰相は平伏した。
しかし、アレクサンドルが裏切ったとなるとどうなる。皇太子に立てようとしたマクシムの戦死も痛かった。ダニールの戦死も。戦力の大半が無くなった計算になる。皇帝は頭が痛かった。
次の瞬間。
ヅッコーンという凄まじい爆発音がした。
宮殿の塔が切断されてゆっくりと倒れ込む。
凄まじい音とともに爆炎が上がった。
「な、何が起こったのだ」
「東方から巨大な飛行物体が、飛来した模様です」
「どこから飛来したのじゃ」
皇帝が誰何する。
「良くは判りませんが、その先をトレースいたしますとマーマレードとの国境付近かと」
宰相が応えた。
「ま、まさか。2千キロは離れているのだぞ。」
驚愕した皇帝が言った。そんな事ができるやつがいるのか。
そんな事ができるのは伝説の戦神シャラザールくらいしか思いつかなかった。
そう思って皇帝は唖然とした。
そんな馬鹿なことはない。
と強引に考えから締め出そうとしたが、状況がそれを許さなかった。
帝国始まって以来初めて帝都の宮殿が攻撃を受けた。
その事実でノルディン帝都は大混乱に陥っていた。
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