第53話 戦神は兵士達を鍛え直しました
戦いは終わった。
その後は飲めや歌えやの大宴会になった。
シャラザールは宴会好きだった。
酒盛りはいつしか、各自の芸になり、皆得意な一芸を始めていた。
「グレイブ、1曲歌います」
「よし。歌ってみよ」
グレイグがシャラザールの前で音痴な歌を披露しだした。
ジャンヌとブレットとライラはしんみりと飲んでいた。
少し前までは元気なジョンがいてメイナードもいたのだ。
彼らがいなくなったことが未だにジャンヌには信じられなかった。
ジャンヌがふと横を見るとそれ以上にしんみりとアレクが飲んでいた。
ノルディン軍は彼一人だった。
ブレットがジャンヌをつついた。
「ああ」
ジャンヌは麦酒の瓶を持つとアレクの横に行った。
麦酒の瓶をアレクに差し出す。
「ああ、すまん」
アレクがグラスを空にする。
それにジャンヌが注いだ。
「親を殺したのはショックか」
ジャンヌが聞く。
「いや、彼奴等は悪いことばかりしていた。引導を渡すのは実の子が最適だろう」
アレクが言う。
「まあ、そうは言ってもお前を生んでくれた親だろう」
「不倫のな。兄と思っていたやつが実の父親だったと気付いた時は本当に嫌になったぞ」
アレクがぽつりぽつりと話しだした。
「嫌になって逃げ出したんだ」
「それはよく分かるぞ。私も母の行儀作法教育が嫌でよく逃げ出した」
シャラザールは笑って言った。
「まあ、そんなやわなものじゃないが。そこで出会ったのが、イネッサだった。
でも、俺はその子のことなんて好きになるべきじゃなかったんだ」
アレクがポツリと言った。
「父親と母親に目をつけられておもちゃにされて殺された」
「…………」
ジャンヌは何も言えなかった。
「すまん。言っても詮無いことだった」
アレクは麦酒を飲み干した。
それにジャンヌが注ぎつつ
「私には何も言えん。しかし、まあ、苦しければいつでも来い。訓練くらいならいくらでも付き合うぞ」
ジャンヌが言った。
アレクがその言葉に答えようとした時だ。
「ジャンヌの言や良し」
地獄耳のシャラザールが聞いていて遠くから叫んできた。
そう言うや、シャラザールは立上っていた。
「蛮族の小僧。むしゃくしゃしているのならば余が付き合ってやろう」
「えっ、いえ・・・」
アレクは断ろうとしが、
「遠慮をいたすな。マーマレードの者共もまだまだ全然なっとらんと思っていたところじゃ。まとめて面倒見てやろう」
「えっ、いやそんな」
ジャンヌらは呆然としたが、もう遅かった。
時は夏流ほとんど白夜だ。空は暗くなりようがなく、翌日の早朝まで徹底的にしごかれたマーマレードの兵士達だった。
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