第52話 戦神は勝利の高笑いをしました
戦神シャラザールが邪神と化した全能神ゼウスを倒した。
「久々に有意義な戦いであったわ」
シャラザールはご満悦だった。
その姿に兵士一同は平伏した。
「シャラザール様に置かれましてはマーマレードの危機に瀕してご助力賜り、感謝の言葉もございません」
ジャルカが平伏して言った。
「ふんっ。態とらしいの。その方全くそう思っておるまい」
苦々しそうにシャラザールが言った。
「いえいえ、決ししてそのような事は」
「その方、あのポセイドンとの戦いはなんだ」
「死にものぐるいで戦いましぞ」
胸を張ってジャルカが言う。
「最後はな。それまでは遊んでいたではないか。なんだあの弱々しい風魔術に翻弄されるふりをしていたのは」
「な、このジャルカの能力ではあれが精一杯でございます。適当に誤魔化しましたからあそこまで生き残れた次第でして」
ジャルカが精一杯誤魔化す。
「貴様はいつもそうじゃ。もっと真面目にやれ。次は助けんぞ」
「肝に銘じましてございます」
シャラザールの言葉に平伏するが、シャラザールは胡散臭そうにその姿を見ていた。
「アレク!仇は取れたか」
次に赤い死神を見つけて呼ぶ。
「はっ。積年のうらみ、晴らせました。感謝の言葉もありません」
アレクが頭を下げる。
「そんなのは当然だな。残虐王子は余の攻撃によって既に半身不随だったからな。まあ、しかし、実の父母を退治させたことは人倫に悖るとも言える。本来ならば余が自ら成敗スべきところであった。すまなかった」
シャラザールは謝った。その姿を見てジャルカは目が点になった。
あの傲慢なシャラザールが謝るなんて大地震の前触れかもしれない。ジャルカは本気で心配した。
「で、アレク。余からのささやかなプレゼントはどうじゃった?」
シャラザールが聞く。
「プレゼントでございますか」
アレクは不審そうに聞く。
「貴様とジャンヌの二人に送ったのだが」
「私らにですか」
キョトンとしてジャンヌが聞いた。
二人は訳がわからないと言う顔をしていた。
「まあ、凡人ではわかるまいか」
シャラザールは頭を振った。
「はあ」
二人はわけの分からぬ顔をする。
「まあ良い。アレクよ。余はこのマーマレードにしばらく居座ろう。蛮族の王に伝えよ。いつでも相手するとな」
「いや、二度と侵攻は致しませぬ。この身に誓って」
アレクが頭を下げた。
というかノルディンの全軍が束になってもシャラザール1人に絶対に勝てるはずはなかった。
皇帝もいかに残虐王子が瞬殺されたかを話せば判ってくれようとアレクは思った。
「まあ、その方は余の実力が判ったかも知れんが、蛮族共の中には判らぬ者もおろう。余の力の一端を見せておいてやろう」
そう言うや、シャラザールは草薙の剣を引き抜くとえいやっと無造作に投げた。それはあっという間に、ノルディン帝国帝都の方に消えていった。
「えっシャラザール様。宝剣を」
ジャルカは呆然とした。たしかあれはオオクニヌシの大切に大切にしていた宝剣のはずだ。
それを無造作に投げ捨てるなんて信じられなかった。後でオオクニヌシの愚痴に付き合うこちらの身にもなってほしいものだ。
「ふんっあのような剣。余には不似合いじゃ。余にはこの無名の剣がある」
シャラザールは腰の剣を掴んで言う。
いや、シャラザールが使って壊れないだけで既にそれは宝剣だ。絶対に名のある鍛冶が作ったに違いない。おそらくエクスカリバークラスの宝剣のはずだとジャルカは思った。
「蛮族の王に目にもの見せてくれるにはちょうどよい剣なので、使わせてもらった。オオクニヌシには邪神退治で協力してやったのじゃ。後は彼奴が回収するであろう」
そう言うとシャラザールは盛大に笑った。
それを皆呆然と見ていた。
後で何とオオクニヌシに文句を言われるか、ジャルカはそれを考えると憂鬱になった。
*************************************************************
ここまで読んで頂いて有難うございます。
後2話くらい書いてこの話の3年後の続編の
「皇太子に婚約破棄されましたーでもただでは済ませません!」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054917566155
記載始めます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます