第42話 最終決戦4 暴風王女は赤い死神を助け出しました
一方、ジャンヌとブレットとライラの生き残った3人は転移で粉砕された砦の上まで来た。
「こっちです」
諜報局に就職したいライラが案内する。
北の砦の見取り図は前もってジャルカから支給されている。
ライラにかかれば抜け道や通気口などお手の物だった。
そのまま、人の通りそうにない通路をライラが見つけて進んでいく。
「こっちであっているのか」
あまりにも人に合わないのでブレットが聞く。
「あってるわよ。そのはず」
半分自信のなさそうな声でライラが意う。
ライラもここまで人がいないとは想定外だった。
「しっ」
ジャンヌが注意する。
その先は牢屋になっていた。
牢屋の前には2人の護衛が立っていた。
その先に牢がいくつかあるようだ。
「この2人だけだと思うか?」
ジャンヌが聞く。
「戦闘中ですからね。大半の兵は戦いに駆り出されているのではないですか」
ライラが言う。
「俺もそう思う」
ブレットも頷く。
「牢の鍵はあれか」
ジャンヌは護衛の下げている鍵束を見た。
「おそらくそうかと」
ライラが頷く。
「よし、行くぞ。私は手前の男をやる」
ジャンヌは2人に合図した。
ジャンヌとブレットが剣を構える。
ジャンヌが転移した。それを見てブレットも転移する。
転移すると同時にジャンヌは手前の男の胸に剣を突き刺した。
「グワッ」
男は唸り声を上げて倒れた。
ブレッドも奥の男の胸に剣で刺し貫く。
男は倒れ込んだ。
ライラが駆け寄って鍵穴に鍵を指す。
牢の中を見ると多くの兵士達が捕まっていた。
その一番奥に赤い死神が両手足を防魔手錠で拘束されていた。
牢の鍵をライラが開ける。
ジャンヌがまっさきに牢の中に入った。
「イネッサ!」
一瞬、アレクには入ってきた女がイネッサに見えた。ここ十数年間夢で何度も見た顔だった。
しかし、よく見るとその女は暴風王女だった。
「何か言ったか」
ジャンヌがアレクの鍵穴にいろんな鍵を差し込みながら話す。
「姫様。私がやります」
ライラが代わって手際よく次々に鍵を差し込んでいく。
「何だ貴様ら。何しに来た」
アレクは相手が暴風王女だと気づき戸惑う。暴風王女らがアレクを助ける意味が判らなかった。
「シャラザールに言われたんだ」
「俺を助けろとか?」
アレクが信じられないという顔でいう。この前はたまたま許されただけだ。あの恐怖のシャラザールが自分を助けるなどするわけはなかった。
「シャラザールが言うにはお前の恋人を殺したのはマクシムだと」
「何だと。そんな馬鹿な。イネッサに手を出した王子は俺が確かに殺した」
きっとしてアレクが言う。
「そんなの知らん。シャラザールがそう言ったんだから。あいつが嘘をいうか?
そして、貴様の母親もそれに関係していたそうだぞ」
「何だと。それは本当か」
思わずアレクはジャンヌの胸ぐらをつかんだ。
ジャヌは驚いてアレクを見る。その顔がイネッサに見えてアレクも驚いた。
「すまん」
思わずアレクは手を離した。
「その仇討をお前も手伝えと言われたんだが」
「嘘だ、そんな」
アレクは否定したいが、あの残虐王子ならばやりかねないのは事実だった。
母も息子の恋人をいたぶって楽しむということをやりかねなかった。
「ふんっ。そんなの本人に聞けばいいだろう」
ジャンヌは言い放った。
「もし嘘だったら貴様を許さん」
アレクがいきり立つ。
「それが助けてもらった恩人に言うことか」
ジャンヌが言う。
「出来ました」
その時にライラが叫ぶ。
アレクの手かせ足かせが外れた。
「ふんっ。その時は貴様のお付き2人は無事に返してやる。貴様は一生俺の奴隷としてこき使ってやるわ」
アレクが言い切る。
「おい、赤い死神。それはジャンヌに対して酷いぞ」
ブレットが言う。
「俺を赤い死神と言うな」
アレクは威圧をブレットに向かって放った。
ブレットが壁に叩きつけられる。
「貴様」
ジャンヌが思わずアレクに殴りかかる。
殴られてアレクが倒れた。
何故かアレクはイネッサに殴られたように感じた。
思わずその頬を抑える。
「姫様。止めて下さい」
思わず、ライラが止める。
「止めるな!ライラ」
ジャンヌが叫ぶ。
「時間がないんです」
ライラが声を抑えて叫んだ。
「俺はアレクだ」
立ち上がって顔を振りながら、アレクが言った。
「私はジャンヌだ」
アレクを睨みつけてジャンヌが言う。
「お前ら二人はここからは危険だ。俺とジャンヌで行く」
アレクは言った。
「貴様を信じられるか」
ブレットがアレクを睨みつける。
「ふんっ残虐王は巨大な魔力を持っている。貴様らでは足手まといだ。それよりもここに捕まっている俺の部下たちを逃してくれ。奴らには俺の命令で全軍退却させよと伝えろ。その方が貴様らにとって有利だろう」
「そんなにうまくいくのか」
「俺の命令は絶対だ。俺からの命令だと伝えれば良い。少なくとも第8師団は退却する」
二人は睨み合った。
「ブレット。言うことを聞いてくれ。これ以上味方を無くしたくない」
ジャンヌが言った。
「しかし」
「シャラザールの命令だ。なんとかなるだろう」
ジャンヌが言った。
二人は見合ったが、ブレットうつむくと頷いた。
「よし、アレク案内してくれ」
「こちらだ」
アレクがジャンヌの手を引くと転移していった。
残されたライラらは牢を次々と開けていった。
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