第38話 北の帝国に全能神が味方することが決定されました
一方天界ではゼウスがオオクニヌシの報告を苦虫を噛み潰したような顔をして聞いていた。
「シャラザール様は赤い死神を見ただけで逃走させ、第4師団を殲滅、ノルディンの第2師団も過半を消滅されました」
「オオクニヌシ、シャラザールはクリスとかいう大人しい小娘に封印されたのではないのか」
「そう聞いておりましたが、元々そうするようにジャルカに命じられたのはゼウス様ではありませんか」
オオクニヌシは白い目でゼウスを見る。
「たとえ私がそうしたとしてもそれをフォローするのが警察長官の仕事であろうが」
ゼウスはその事を思い出したが、都合の悪いことは横にどけて話す。
「そもそもシャラザール様を天界から地上に叩き落されたのはゼウス様です。こうなるのは火を見るより明らかだったのではないかと思いますが」
今日のオオクニヌシはいつもと違ってゼウスに反抗的だった。
「どうするのだ。ゼウス」
兄のポセイドンが訊ねる。
「これ以上天界のものが地上の戦に影響を与えるのは良くない。致し方ない。ここは私が出よう」
ゼウスが言った。
「しかし、全能神であらせられるゼウス様が地界に口を出されるので」
驚いてオオクニヌシが聞いた。
「もともと、シャラザールを地界に落とした余の責任なのであろう?」
ゼウスがオオクニヌシに向かって尋ねた。
「しかし」
「気にするな。シャラザールを倒したらすぐに戻ってくる。そんなに地界には影響を与えまい」
ゼウスは明るく言った。シャラザールなど片手でも片付けられようとゼウスは思っていた。
(無事に天界に戻って来られれば良いですな)
決して口には出来なかったが、オオクニヌシはそう思っていた。
一方こちらはノルディン帝国軍の北の砦。
最後は圧倒していたマーマレード軍が更に侵攻しなかったおかけでノルディン軍は自軍の北の砦で一息ついていた。
しかし、あのシャラザールの攻撃に兵士達は意気消沈していた。
「どうなると思う」
「あの、マクシム様も負けられたのだ。もう勝てる要素もなかろう」
「しっ」
兵士達の愚痴に近くにいた兵士が注意する。
普通このようなことを話しているのが上に知れれば即処刑だった。
ここまで完璧な敗戦は久しぶりだった。
「アレクサンドル。貴様が敵前逃亡したとはどういう事だ」
マクシムが帰ってきたアレクを問い詰めていた。
「どういう事だと言われても。勝ち目がなかったから逃げてきたのです。
あのシャラザールとかいうものは化け物です。人間が戦っても勝てません」
アレクは言い切った。
いまだに対峙した時に感じた恐怖を思い返すと体が震えるのだ。
「戦う前に逃げ出すなど、ノルディン帝国の王子のすることか」
「命を無駄に捨てても仕方がないではないですか。現実にダニール兄上は瞬殺されて、マクシム兄上も負傷されているではありませんか」
アレクは反論する。
「貴様、敵前逃亡は処刑ぞ」
「私が戦った所でダニール兄上と同じく瞬殺されたのが落ちですよ。そもそも兄上でもほとんど対抗できずに、大怪我を負われたではないですか。ここはなに不利構わず、降伏するべきです」
「何だとアレクサンドル。貴様それでも帝国の王子か」
マクシムが怒りで立ち上がるが、アレクはびくともしない。
「やっても瞬殺されればノルデイン帝国はあやつらに蹂躙されますぞ。ここは再起を誓うべきです」
「ええい、衛兵。このアレクサンドルを拘束せよ」
怒りに震えるマクシムの命令に衛兵たちが拘束する。
「地下室にでも放り込んでおけ」
衛兵たちはその言葉のとおりにアレクを連行する。
アレクは大人しく連行された。
「殿下。敵マーマレードは続々と援軍が来ているようです。いかがなさいますか」
副官のマラートが心配して尋ねた。
「ふんっ。貴様もアレクサンドルと同じく怖気づいたのか」
マクシムが鋭い視線で副官を見る。
「まさか。私は殿下にどこまでもついて参りますよ。ただ、明朝には敵が攻撃してきそうですが、その対処はいかがなさいますか」
「ふんっ。敵はあのシャラザールとかいう男女頼りであろう。気にするな。我が方にはあのシャラザールよりも強いお方が援軍について頂けると確約があったわ。それに帝都より、1個師団の増強も今日中に間に合う」
「シャラザールよりも強い味方でございますか?」
「詳しくは明朝に話そう。兵どもには最新兵器が帝都から届いた。それでシャラザールを無効にできると伝えておけ」
マクシムは自信満々に応えた。
「判りました」
半信半疑ながらマラートは頷いた。
マクシムがここまで自信満々なのだ。何か策があるのだろう。早速マクシムに命じられた内容の話を全軍に伝えた。
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皆さん。ここまで読んで頂いて有難うございます。
ゼウスは高々1戦神と戦うことを決めました。
本来ならば全能神の圧勝となる所。
シャラザール最大のピンチです。
本日20時より最終決戦勃発です。
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