第36話 幕間 悪い神のシャラザール教科書は焚書されました
とある天界の学校の国語の授業の中の一コマ。
「じゃあ。ジョン君。教科書の100ページを読んで」
先生がジョンを指名した。
「題名 悪い神のシャラザール…………先生!題名が間違っているよ」
「そうだよ先生。正義の戦神シャラザールだよ」
「そうだそうだ」
生徒たちが騒ぎ出す。
先生は頭を抱えたくなった。そう、こんな題名で授業やったら皆そう言うに違いないのだ。
この授業をするように命じた校長を先生は恨みたくなった。
「はい。皆さん。今は音読の時間です。ジョン君。悪いけどそのまま読んでね」
「えええ!」
不満そうにジョンは言うが、
「ジョン!」
先生が威圧的に言うと仕方無しにジョンが読みだした。
「天界のある所に悪い神のシャラザールという男女がいました。シャラザールは意地悪で、いつもゼウスの事を注意していました。
『奥さん以外の女の人に手を出してはいけません。そんな事をしていると』」
「ジョン。何を読んでいるの」
「正義の戦神シャラザール物語」
ボン
先生が頭を叩いた。
「今読むのは悪い神のシャラザールよ。何で読む物語を勝手に変えているの」
「だって先生。シャラザールは正義の味方だよ。悪い奴らをいつもやっつけてくれるってお母ちゃん達が言っているよ」
「そうだ。そうだ。」
「先生。嘘付は泥棒の始まりだよ」
「はい。シャラーーープ」
先生は叫んでいた。
「先生もこの本で授業やれって上から言われているの。はい。アンナさん。あなたが読んで」
先生は秀才で言うことをよく聞くアンナを指した。
アンナならきちんと読んでくれるはずだ。
「はいっ」
アンナは立上がって本を読みだした。
「シャラザールはいつもいじ・・・・・」
しかし、すぐに詰まる。
「アンナさん。どうしたの」
「すいません。シャラザールは・・・・」
またアンナはつまる。
「どうしたの。いつも意地悪ででしょ」
と言ってアンナを見るとアンナは目に大粒の涙を溜めているではないか。
「そんな嘘、言えません。シャラザール様は見た目は怖いけど、とてもお優しいんです。
私、一度本読みながら歩いていてアフロディーテ様にぶつかりそうになってその護衛に殺されそうになったんです。その時にシャラザール様に助けて頂いて、なのに、こんなひどい本読める訳ありません」
そう言うとアンナは泣き出した。
「アンナさん」
先生は絶句した。
「先生。こんなひどい本を教科書にするなんて間違っていると思います」
男の中の秀才で級長のケンが言った。
「そうだ。シャラザールは見た目はおっかないけど、俺達弱い者の味方なんだ」
「ゼウスにも悪いことはしてはいけないって正しい事を言ったのに地上に叩き落されたって」
「そう、シャラザールが可愛そう」
「何だよこの本。マルスが正義の神だなんて嘘ばっかり」
「単なる女たらしの悪役代官だろ」
「そうだそうだ」
「こんなひどい本はこうしてやる」
一人の男の子が本を真っ二つに裂いた。
「えっちょっと君たち」
「そうだ。こんな本なんて」
「破いちゃえ」
その日そのクラスでは精魂込めてゼウスが書いた『悪い神シャラザール』の本は焚書されてしまいました・・・・・・・
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ゼウスの悪巧みは子供達の純粋な心で粉砕されました
そろそろゼウスも全能神から降格???
次話からついに最終決戦突入です。
本日20時更新
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