第33話 ノザレ退却戦8 戦神は騎兵師団を一撃で壊滅させました
グレイグは腰を抜かして倒れ込んでいた。
何とか助かった。
グレイグは神に感謝していた。
「き、貴様何奴だ」
何とか巻き込まれなかった騎士の男が聞いた。
馬に乗った騎士を一撃でそれも十数騎の騎士もろとも空の彼方に弾き飛ばすことなど普通の騎士では出来るわけはなかった。
「人に名を聞く時はまず自ら名乗れ。蛮族よ」
女は言った。
「何だと」
男はかっとしたが、後ろの騎士に止められた。
「ふんっ。マーマレードにも中々の騎士がいると見た。
私はノルディン帝国第4師団長ダニール・ボロゾドフだ。
その方が暴風王女か」
第五王子のダニールが聞いた。
ダニールにとってこんな事ができるのは暴風王女くらいだろうと思っていた。しかし、この女に比べれば暴風王女など本当に可愛いものだった。
「暴風王女など、ガサツなだけじゃ。余の名はシャラザール」
シャラザールは名乗った。
「何だ、そのふざけた名前は。千年前の女帝の名前を出してどうする」
最初の男が言った。
「愚かなものじゃな。見ただけで敵わぬ敵の強さも判らんとは」
「何だと。貴様のような男女に…」
男が更に言いつのろうとした所でシャラザールは無詠唱で爆裂魔術を男に叩き込んでいた。
男は一瞬で後ろにいた数十人を巻き込んで弾き飛ばされいた。
大半の者は即死だった。
ダニールは飛び退いてかろうじて生きていた。
「余に生意気なことを言うなど千年早いわ」
シャラザールはニヤリと笑った。
「そこな、弱っちい王子よ。直ちに降伏せよ。しからば命だけは許してやろう」
シャラザールは見下して王子に言った。
「おのれ、我もノルディン帝国の王子。戦わずに降伏は出来ぬ」
ダニールは何とか立ち上がった。
「そうか、赤毛の男は形振り構わず逃げていったぞ」
「何、アレクサンドロが…………」
ダニールは目が点になった。
アレクはおそらく魔力においても残虐王子の次に強いはずだった。その赤い死神が戦う前に逃げ出しただと。ダニールは信じられなかった。
ダニールは全魔力を剣に込めて
「喰らえ」
シャラザールに向けて一閃した。
強力な爆裂魔術がシャラザールに命中する。
凄まじい爆発が起こった。
しかし、爆風が収まった時、そこにはびくともしていないシャラザールが立っていた。
「ふんっ。そのような魔力では世に対抗も出来ぬな」
シャラザールは呆れて言った。
「では、次は余の番じゃな。貴様らに殺されていった者の苦しみ味わうが良い」
言うやシャラザールは剣を横に軽く一閃した。
そこから凄まじい雷撃がほとばしり、第4師団に襲いかかった。
彼らは一部障壁を張ったが、障壁もろとも次の瞬間には雷撃によって弾き飛ばされていた。
そこにいた第4師団の面々はシャラザールの一撃にして大半が黒焦げとなって跡形もなく砕け散っていた。ダニールは恐怖を感じる瞬間も無かった。
無敗を誇ったノルディン機兵師団はシャラザールの一撃にして消滅した。
それを腰を抜かしたグレイグとダミアンと荷物持ちのボリスは見ていた。
「そこの小僧ども。生きておるか」
シャラザールは振り返って聞いた。
「はい、なんとか」
グレイグが応えていた。グレイグには目の前の人物が女帝シャラザールだとは判らなかった。
と言うか信じたく無かった。
しかし、見せつけられたその力の前に信じるしか無いような状況だった。
「余は今から蛮族共を退治する。余とともに来よ」
「はっ」
その威の前に二人は平伏した。
シャラザールはお供3人連れて5万人以上のノルディン軍に逆襲を仕掛けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます