第32話 ノザレ退却戦7 士官学生たちはノルデインの兵士達によって次々に狩りのように殺されていきました

学生たちは死にものぐるいで逃げていた。

しかし、ノルディン軍の兵士達は執拗で容赦なかった。


元気に笑っていたシリルは最初の爆裂魔法で殺された。


ステーキを「こんなうまい肉は産まれて初めて食った」と喜んで食べていたデニスは最初の攻撃では何とか助かった。しかし、盾となってくれた教官の騎士たちが殆どやられた後、逃げている途中で爆裂魔術を受けた。


左腕が消し飛ぶ。そして、地面に投げ出された。


なんとか立ち上がった時に、傍まで兵士が来ていた。

男はニコリと笑った。

次の瞬間デニスは胸に剣を突き立てられていた。



学生たちは動物たちが狩りに会ったように次々に殺されていった。


グレイグは必死に走って逃げた。

いつの間にか1人になっていた。

もう疲労困憊の状態だった。


そこに馬に乗った騎兵が駆けてきた。ノルディン第4師団の一部だった。

アレクの死神師団を駆けて追い抜いてきたのだ。

既に男は北方師団の連中をここまで何人も、槍で串刺しにしてきた。

男は馬を駆るとグレイグに向けて駆け出した。

グレイグは恐怖で後退りする。


もう終わりだ。


思った時だ。足を滑らせて、倒れ込んだ。


今までグレイグがいた空間に槍の穂先が走る。

グレイグは馬に蹴られることもなく、何とか、助かったと思った。


しかし、馬がUターンして戻ってきたのだ。

そのまま行けよ、と思いつつ、もう隠れるところもなかった。

慌てて立ち上がるとそこに馬を駆った騎士が踊り込んできた。


最後の力を振り絞って馬鹿力で剣を振る。

何をトチ狂ったのか、魔力を込めたその剣は騎士の槍の穂先を切り飛ばしていた。


「おのれ小僧」

騎士はそう叫ぶと、剣を抜いて馬から飛び降りてグレイグに切りかかってきた。

剣でかろうじて受けるが、そのまま押し倒される。

男は力任せに、剣でグレイグに切りつけてきた。

グレイグは必死に受けるが、もう力はなかった。


剣が弾き飛ばされる。

騎士がニヤリと笑って剣を振り上げた。

終わった。

思わずグレイグは目をつむった。

爆発音がする。

そして、男がゆっくりとグレイグの上に倒れ込んできた。

視界が、死んだ男の顔で塞がれた。


「うわああああ」

血まみれになりながらグレイグは何とか男をどけた。


「命はあるか」

そこには魔術でグレイグを助けた疲れ切ったダミアンが立っていた。


「何とか助かった」

グレイグがその横に倒れ込んだ。


二人は、はあはあ言いながら少し休憩した。

「ここにいてもまずい。すくに逃げよう」

そう言った時だ。


二人のすぐ傍の地面が爆発した。


顔を上げるとすぐ傍まで、騎兵の大軍が迫っていた。


「やばい」

二人は慌てて駆け出した。

しかし馬には敵わない。


グレイグは先頭を駆けてきた騎士に切りつけられた。

終わった。

今度こそ本当にそう思った。


しかし、そのグレイグの前に女騎士が現れ、剣を横殴りにした。

見た目は軽く振っただけだった。


ザンっ!


しかし、その剣は剣を振り下ろそうとした騎士を馬ごと弾き飛ばしていた。

騎馬の騎士は一瞬にして中空彼方に弾き飛ばされていたのだ。

後ろに走っていた十数騎の騎士と馬を巻き込みながら。

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