瀬戸菊は、老夫婦が営む昔ながらの弁当屋「ころりん」のおにぎりに惚れ込み、パートとして働いていた。しかし経営難から「ころりん」は廃業。菊は、キッチンカーでの「ころりん」の復活を夢見て、資金を貯めるためにスーパーで働きはじめる。一方、ビジネスマンとして出世街道を歩むも仕事に意欲を見いだせない男・島津は、そんな菊の姿に憧れ、そっと手を貸すことに……。
潰れてしまった「ころりん」の思い出を引きずって立ち直れない菊と、励ますつもりが菊を傷つけてしまう島津のすれ違いがもどかしいです。
自分は良かれと思っていても、相手にとっては「余計なお節介」や「ありがた迷惑」と思われてしまう。みなさんにも思い当たる経験があるのではないでしょうか。せっかくの善意も押し付けではいけないし、受け取り方次第でもあります。
菊もひとりで抱え込まず、クラウドファンディングという手段を取ることで、たくさんの人々の善意と出会い、夢を叶えます。
仕事や人間関係がうまくいかないと周囲が敵ばかりに見えてしまいがち。ですが、見えないだけで世の中は善意で満ちています。善意がつまった菊のおにぎりが食べたくなる心温まるヒューマンストーリーです。
(「注目の自主企画から選んだ作品」4選/文=愛咲優詩)