家で食べるカレー

「なあ、この間店で食べたカレー美味しかったじゃん?」

「うん、美味しかったね」

「だから、俺初めてカレーを家で作ってみようと思ったんだよ」

「おー、偉いね」

私は彼のチャレンジを呑気な口調で賞賛しておいた。


「だけどこのカレー、なんか味が変なんだよな」

「味が変?」

「そうなんだよ、なんか塩っ辛いというか味が凝縮されてると言うか……」

「塩っ辛いの? スパイスとかの辛さじゃなくて?」

そう言うと、背中を向けていた彼がこちらを向いて頷く。そのときに違和感に気づいた。


「いや、そりゃ味がおかしいに決まってるでしょ」

彼が食べている茶色い長方形のものを見て納得した。それをカレーとは言わないのに……。


「ねえ、それカレーじゃないからね?」

私は呆れて指摘すると、彼は驚いた表情をする。

「たしかに店で食べたカレーはこんな固形状のものじゃなかったけど、じゃあこれはなんなんだよ?」

「まったく……。それはチョコレートよ。板チョコ。そんなのも知らないの?」

「いや、チョコはもっと甘いし、それにこの箱見ろよ」

そう言って彼がこちらに箱を差し出してくる。


「あれ? ほんとだ。カレーって書いてる……」

「だろ? ちょっと食べてみろよ」

そう言って彼がこちらに一かけら渡してくるから食べてみると、たしかに変わった味をしていた。


「うえっ、変わった味……。これチョコじゃないね……」

「な? 変わったカレーみたいなんだよ」

「ほんと、マズいね……」

文句を言いながら私は彼と一緒に変な味のカレーを食べ続けるのだった。

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ヘンテコ物語集 西園寺 亜裕太 @ayuta-saionji

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