前のエピソード――時間割

アタシ、体のなかにマグマだまりがあるんだよね。え〜、いやマジなんだって。まあもちろん、本当のマグマだまりじゃないよ。マグマだまりっていうのはさ、なんか地球のマグマ溜まってる部分のことなわけじゃん。あたしのマグマだまりには、血が溜まるんだよね。五千万人だっけな？　それくらいに一人の人が、生まれたときから心臓の右心室ってところに血が溜まる場所を余分に持って生まれちゃうんだって。

右心室とか、多分フツーに生きてたアタシだったら「なにそれ？」って全然意味わかんないまま終わっちゃってたと思うんだけど、流石にガキの頃から自分の病気のこと何回も説明されたら分かるよね。理科の授業で出てきたときはちょっとうれしかったなー。

でさ、マグマだまりっていうくらいなら噴火もあるんじゃないの？　って気になるくね？　え気にならないの？　なんでよ〜ノリ悪くね？　

あるんだよね、噴火。血が溜まるだけじゃ「マグマ溜まり」なんてわざわざ呼ばないよね。噴火とセットなんよ。だからこれが結構深刻な病気なワケ。難病指定もされてるよ。正式名称は、心臓異形成多血症候群。噴火って具体的にどうなるかっていうと、心臓が破裂しちゃうんだよね。え、そうだよ死ぬよ。

だから絶対に噴火しないように、定期的にマグマだまりから血を抜いてもらわないといけないんだよね。うん。これがめっちゃ大事なの。病院で胸あけて、心臓に直接注射針刺して採血みたいに血とるんだ。まあ麻酔かかってるからよく分かんないけど。3年に１回やれば十分らしくて、頻度が高くないのは助かるよね〜。毎週胸あけるとかだったら大変すぎて自殺してたかも。

そ、それで先週学校休んでたの。３年に１回って言ってもさすがにもう何回も胸あけてるから、アタシの胸の真ん中、ばっちり傷あるよ。見てみたい？　やだ〜えっち。うーん、じゃあ、もっと仲良くなったらね。

注：お題は「カスの嘘」「マグマだまり」でした