時間割
先生の時間割というものを、初めて見た。
昼休みの職員室はすこしざわめいていて、私みたいに質問や相談に来ている生徒が他にもちらほらいた。
私は二次関数がわからなくて皆川先生のところに質問にきていた。そのへんにあった折りたたみ椅子に座って、コーヒーを淹れにいった皆川先生が帰ってくるのを待っている。
「ヒントをあげるから自分で解いてみなさい」と言われて与えられた時間だったけれど、自分じゃやっぱり全然わからないしやる気もないので、デスクに置いてあるものをひたすら眺めていた。そうしたら、デスクの透明なカバーの下に時間割を見つけたのだ。わたしたちの時間割には科目がかかれているが、先生用の時間割には「1年B組」とか書かれている。
そして隣の席の柏田先生のデスクにも同様に、先生用の時間割が置かれていた。
皆川先生の時間割は、カラフルだった。コマごとにいろんな色のマーカーが引いてあって、ざっと見たところ学年ごとに色分けしてるみたいだった。
授業のないコマには色は塗られていないなあと思って眺めて、2コマだけ例外があることにきがつく。
「次、皆川先生も柏田先生も授業がない時間なんですね」
「んー?」
皆川先生が例の時間割にちらりと視線を遣る。
「そうだね、この時間はいつもおしゃべりしてるかも」
「仲良いんだ」
「いや別に」
「どんなこと話すんですか」
「大したことは話してないよ」
すこし考え込む仕草。
「最近は九州の土着文化についてとかかな」
「ドチャク……?」
なんだそれ、と思いながら2つの時間割を見比べてニヤニヤしていたら、二次関数の問題がちっとも進んでいないことに気がつかれて普通に怒られた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます