たずねる

 死者に会えるという場所があるという。毎週通っている除霊の先生が教えてくれた。なんでも、一番あいたい人にあえるらしい。

 除霊の先生はいつもわけがわからないことを言ってきて(毎週ラッキーアイテムを言い渡されて、それを一週間食べ続けなければならないのだ。それはバナナなこともあれば、セブンイレブンの金のハンバーグなこともあった)僕も熱心に信じているわけではないのだが、行って先生に「手当て」をされると、体のちょっとした不調が楽になるので通い続けていた。暇だし、そんなに高い金銭を要求されるわけでもないし。

 特別あいたい故人がいるわけではなかったが、だから興味があった。今の自分が行ったら、誰が出てくるんだろう。

 それは神社とかお寺とか宗教的な場所ではなくて、だけど都心からは遠く離れたところにある町にあった。駅からバスで40分ほど、そのバス停からさら15分。8月の日差しが容赦無く照りつける中、川の近くの畦道を歩いた。

 蝉と蛙の鳴き声、風が吹き抜けて田んぼの青をゆらす音、陽炎。


 目的地は、小さなマンションだった。小さいとはいえ、田舎には少し不釣り合いな綺麗な外観で、本当にここで合っているのかと握りしめた地図を二度見した。

 着いたあとのことを聞くの忘れたなと思ったが、杞憂だった。ガラスの自動ドアを開けるとそこにもう立っていたから。


「ひさしぶりだね」


そうやって穏やかに笑っていたのは、僕の、大好きな


「姉さん」


 どうして姉さんがここに。病院にいるはずじゃ。昨日もお見舞いにいったばかりだった。お見舞いといっても、着替えとかを持っていって、チューブに繋がれて反応がのない寝顔を眺めて帰っただけだけど。

 あれ、どうしてここにきたんだっけ。そう、除霊の先生に教えてもらって。そもそも除霊に通うようになったきっかけは? 姉さんが眠ってしまって、それで、必死にたすけてくれる人探して、たすかりますよっていってくれたから、毎週通って「手当て」を受けて、それで……。


ずっとあいたかったと微笑む姉さんをみて眩暈がした。


除霊ってなんだ?



 




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