第32話 それぞれの役を果たせ
ここは
「日曜午後一時、天候は晴天、風はなし。いやあ、絶好の大捕り物日和だねえ」
『本当に
繋げたままの通話の向こうから
「いけると思うぜえ。ああいうプライド激盛り野郎は日常がルーティン化しがちなんだよお。見張ってりゃあどっかに現れる。
そう伝えると通話が切れる。
調査の結果、複数の店から毎週同じ時間帯に
「これで嗅覚は十分。目はどうだあ」
振り返る。そこには六個のモニターに囲まれた
「街中でクメセキュリティと契約している店舗のうち、二十三か所から許可をもらったよ。監視カメラの映像はここに繋げてるから、ぜんぶチェックしてる。飯開先生が現れたら報告するね。というか、
「ぼ、ぼくはだい、大丈夫」
「おう頼りになるう。ま、暇になったらな手伝うよお。ようし。んじゃ最後は
『準備オッケーです。いつでも走れます。でもプレッシャーかけるのやめてください。お腹痛くなっちゃう』
「お前そんなんで大会のほう大丈夫う?」
『やめて言わないで。今日は息抜き気分なんです、思い出させないでください!』
「もうちょい真剣に取り組んでえ?」
苦笑して、
ニヤリと口角を上げて目を細め、
「さあて、いよいよクズとクズの決着だあ。
◇ ◆ ◇
『グループC:原ジャンクション前から喫茶Lansur方面へ』
『グルA:同洋服店からしばらく動きなし』
『グループD:川沿いを通り公園へ移動中』
「……とするとこっちに穴ができるな。
『南ってどっちですか!? 右!?』
「落ち着け古本屋さんのほうねえ! 次から方位磁石常備しとけ、さもねえとスマホに位置情報筒抜けアプリ仕込むぞ!」
『それはやめてください!』
「
「十八は牛丼屋だったな。了解。そろそろ九にグループCが映るはずだ」
絶え間なく情報が飛び交う。
「す、すごい……」
思わず称賛をもらすと、
「一番すごいのは七つのグループと同時にラインしながら行き先を聞き出してえ、ついでにこっちの要望通りにそいつら動かしてる
皮肉げに眉を吊り上げる。その目じりの端にはどこか劣等感が漂っているように見えたが、それは
「!
「っ了解よ。でも遠いかな。裏手門通りは一切目がないのよ」
「分かってる。
『待ってました。ウォーミングアップは万全ですよ。ここからなら三分で行けます』
「指示しといてなんだがこの距離でどうやってえ? いや、文句はねえけど。怪我しないでねえ」
『モチですとも!』
「ロンでも信じる。
◇ ◆ ◇
発見から二十分が経過していた。
あちこち走りまわって切れた息を整え、
「────いた」
公園の真ん中に男は立ち尽くしていた。
広々とした芝の公園だった。遠くの日陰には遊具があり休日の母子が何組か遊んでいるくらいで、芝には他に人がいない。
そこは
確かに整った容姿をしているが、天に与えられた超絶ルックスを持つ
もしかすると
(とめき先輩たち、まだかな。また逃げそうになったら足止めって言われたけどどうすればいい?)
「君、見ない顔だな」
聞きなれない声に顔を上げると、いつの間にか
(いつの間に!?)
驚いて体が硬直する。思わず反転しそうになる。だが急に逃げ出すのはそれこそ不自然だ。というか何をどうすればいいか分からず思考が停止している。
「在校生の顔はみんな覚えている。地元の子じゃないとすれば、一年生かな」
「──っ」
言い当てられ表情に出てしまった。
「今日は懐かしい顔をよく見る日だ。
(や、やっぱりバレてる!?)
「君もよくあんな奴の言うことが聞けるね。脅されでもしてるのかな」
表情が暗くなった。
「とめき先輩は悪い人ですけどわたしを脅したりは──」
「だって、
「……はい?」
思ってもいなかった単語につい聞き返してしまう。
「四年前の
意識へ浸透させるように繰り返し、男はまるで正義の代弁者のように訴えかけた。
「あいつは、自分のために親を殺したんだ。そんな奴をどうして君は信じてられるんだい?」
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