第20話 忌まわしインタビュー
口をつぐんだ
「十二月に
「詳しくもなにも、去年先輩方が記事にした通りですけどお?」
「せやろか。
メガネの奥の瞳が鋭さを増す。この件は先ほどよりも確信があるらしい。口調がさらに丁寧に、探るようなトーンになる。
「事後処理に生徒会長が関わっていながら、君には何一つお
「さあなあ。
「せやろか。こっちもだいぶおかしいんよな。
「優秀な先生が居なくなったのがよほどショックだったんだろお。ご愁傷様ですねえ」
「先生の教育免許が剥奪された件についても……
「どおなんすかねえ。そっちは生徒会長にでも訊いてくださいよお」
回答を他者へ丸投げすると、
「はあ〜。まあ……ええわ。今回は
「あいつの情報は高くつきますぜえ」
「おおきに。この間の破局記事でも……稼がせてもろうたわ」
「記事は割りかしまともだったけどお、その後に変な噂流したの
「ああ、君が無理強いしたとかしなかったとか? あんな低俗なもん……知らんがな。じゃあ最後に……初彼女に浮かれてた頃の君の空回りっぷりについて──」
「『
「写真部っ録画せい!」
「は、はい!」
「このまま撮影会やで!
「くそおっ『
「ほとんどまともに答えて……くれへんやったからな。追加はなしや」
「んだとお!?」
手で作ったハートマークを胸元に、
「必要最低限分は……すでに与えとるで?」
「はあ?」
「ひひっ。今後ともまたご
「はい。じゃあこっちに立って、ここに目線お願いします。そうです。いいですね。いいよ。すごく良い。別のポーズも行ってみましょう。そうそう、つぎは腕で顔隠してみようか。見えないからこそ期待と想像を掻き立てる、いいじゃん! こんどは腰もひねって見返り美人!」
勢いに押されるまま、部室の隅にある小さなスペースで撮影会が始まってしまう。
「付き添いの二人も……今日は感謝や。口挟まんとってくれて助かったで。お土産に……ここ数か月の壁新聞バックナンバー……持って帰る?」
「あっ、
写真を撮りつつ
「あれ……そやったっけ? ごめんなあ二人とも。手土産もなしになってもた。しゃあないから……今日撮った
「ありがとうございます」
「えっ、いりません」
「では
「ほな用意しとくわ」
軽く手を振って部員に指示を出し、自身はパソコンに向かってしまう。
手持無沙汰にする
「どうしたの? さっきの
優しい瞳に気遣いが見える。だが
「え、いえ。とめき先輩と
「そ、そう……。けっこうさっぱりしてるのね
「そこまで他人に興味ないのだけです。鳴乍先輩こそどうなんですか?」
「そういう噂があるのは知っていたもの。彼は目立つ人だから、悪評だけはこと欠かないのよ。本当かどうかは……はぐらかされてしまうでしょうけれど。私も
「わたしはただ、過去どうだったとか言われても、今目の前にいるその人くらいしか認識できないだけですよ」
「でも、
言いにくそうに忠告してくれる。
「言われてみれば──! 見れなかった壁新聞が気になってそこまで頭が回ってませんでした」
「
「わたしが入学してすぐインタビュー受けた時の記事もあるそうですし。知り合いも結構載ってるらしいのでちょっと見てみたいなって」
「確か今年度分のバックナンバーなら生徒会棟のどこかにあったはずだから、探してくるよ」
「ありがとうございます! 先輩って良い人ですよね」
クズい
「そうかしら。外面がいいのよ、私」
言いながら、なぜか目じりに皮肉げな微笑を浮かべ目をそらす。
「…………?」
褒めたつもりなのに、微妙な反応をされてしまった。
そのころ
「いいよー、その表情いいよー! 今度はもっと大胆にいこうか脱ごうか!」
「オレいつまで写真撮られてりゃいいのお? そろそろこの記事のギャランティ相談しねえ? なあ誰かあ……」
◇ ◆ ◇
「ったく。なんの時間だったんだよお」
ようやく撮影会から解放され、
新聞部のある文科系第二部室棟を出て、長い渡り廊下を進む。
「情報収集は失敗?」
「……どうなんだろうなあ」
新聞部部長、
だがこと取引に関して彼女は信用できる。情報を扱う者として、
だから
それが何なのか、まだ検討もつかない。
さてこの後の調査はどうするかと、渡り廊下の十字路で立ち止まった時だった。
「とっ、ととと、とめ──
どもりがちな弱弱しい声が後ろから聞こえてきた。
知らない声に振り返る。文化部棟のほうから『取材中』の腕章をしたままの少年が、どんくさそうな動きで駆け寄ってくるところだった。
「ああ? さっきの『後ろでそわそわしとるボーイ』じゃねえか。ってお前……」
やっと目の前にたどり着いた少年の顔をまじまじと見つめて、そこから
「よく見たらお前、去年となりのクラスだったよなあ。たしか
「うん、あ、ありがとう。まさかこんなざこ、ざこっぱちを覚えててもらえてたなんて」
「んでなんの用だあ? オレ忘れもんでもしてたか」
「いやそ、その、僕。き…………君の、ファンなんだ!」
「……ん?」
「な、何か調べものし、してるんだよね。それ、それって部長が言ってたせ、窃盗犯のこと? 僕も力になりたい。きっ、君が好きだから!」
「ぅおうえ?」
突然の展開についていけない
その後ろでは、
「────なんと……?」
なぜか
「急に告白するなんてあの人、正気かな……。最近暑いし頭が煮えてるのかも。どう思います
「大丈夫……大丈夫よ……私は彼の友達だもの。ショックとかそういうのはないのよ……。ないはずなの」
「ブツブツ何を言いながらどこに行くんですかー?」
「そこの人、危ない──!!」
「…………え」
野太い悲鳴に顔を上げると目前に迫る白い球。
「
どこからともなく飛んできた硬球が頭に激突し、
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