第18話 こんなん部屋の角に居たら泣く
日を改め、昼休みのチャイムが鳴った直後のことだった。
何事かと窓から身を乗り出すと、全力疾走してきた悲鳴の主が
「居たあ
「とめき先輩!? どうしたんですか良いフォームですね! なんで半裸!?」
目の前に滑り込み停止した
「うぅっ……もうやだあ。
「トメハラ? それ使い方あってます?」
「なんと哀れなお姿になって。上半身のフォームの良さに比べてまだ下半身とピッチへの意識がおろそかです。ちょっと
「もっと別のとこ気にしてえ」
「ごめんなさい、つい。それで何があったんですか? 早く左乳首を
落ちていたベルトを渡して服装を整えさせる。あられもない格好だが、親戚の集まりですぐ全裸になって踊りだす酔っ払い達に比べればマシだ。
「情報もらうためにアポ取って部室へ行ったら、待ち構えてたヤツにひん剥かれそうになって。やっぱ
「ヤツ……? 昨日言ってた情報通の人ですか」
もっと聞き出そうとすると、
「来たぞ
「どわっ、
しかし肩を掴む手が本気で震えているので突き出す気にもならない。
「ふっふっふふふふふ……。ようやっと追いついたわ
這い寄るような声で方言を話すのは、不健康そうな少女だった。重たいほどの黒髪長髪で、印象に反して
彼女の周りには不思議とおどろおどろしいオーラが漂っている。事故物件ばかり三か所ほど内見してきましたみたいな雰囲気だ。
やけに表情が掴めないと思ったら、
セーラーの袖には『取材中』と書かれた黄色い腕章が。
少女が幽鬼を思わせる足取りで近づいてきた。
「さあ……神妙にお縄について洗いざらい吐くんや」
「オレ悪いことはみんなバレてるから新しいネタなんて絞っても出ねえすよ!」
「ろくでもないなこの先輩っ。あの、新聞部の人ですよね、ごめんなさい。とめき先輩すごく怯えてて、このままだと廊下がいろんな汁で汚れそうなので一旦落ち着きませんか。というか
「ありゃ……こりゃすんまへん」
「あんたのインタビューの時はちょうど休んどったから……始めましてになるかいな。自分は新聞部部長……三年の
「雰囲気と自己紹介がいろいろと濃いのですが!」
「流されるな
「ネタバラし早いわぁ……。ジャーナリストは取材対象の印象に残ってなんぼ。濃い味付けにするんは……当然やね? ちなみになぜか幽霊部員と間違われることがあるけど……ちゃんと活動しとるわ。失礼しちゃう」
「あ、そこは無自覚なんですね」
幽霊部員は幽霊部員でも、霊障を起こすほうの幽霊と間違われている気がする。
「? 新聞部はむしろ……
「すごく気になるけど結構です。今月ピンチなので」
「そうかいな。そんでな……今日は
おいでおいでと手を差し伸ばしてくる。その手を取ったら何処か得体のしれない場所へ連れていかれそうだ。
「入室直後に人の服を
「なんか隠し持っとらんかな思うて。それに記事の写真を……撮るだけやないの。今月の記事……テーマが『ありのままの自分』なんやから」
「ありのままイコール
「中途半端にまともな倫理観しよってからに……なんや疲れたわ。しゃあない、インタビューの続きは放課後にな。情報欲しいんやったら……今度は逃げずに来るこっちゃな」
廊下に取り残された二人は、どちらからともなく顔を見合わせる。
「え~っと、ではわたしはこれで」
「待ってえ放課後ついてきてえ……」
逃げようとして、泣きべそをかく男子高校生に
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