第8話 ストーカーには特攻
翌朝、下駄箱によりかかった
「おはようさーん。さっそくだけどオレに届いた熱烈ラブレターを見てくれねえ?」
「はい、おはようございます……こっ、これは!」
渡された封筒から便箋を開くと、黒のインクで『死ね』『消えろ』という文字が用紙一面におびただしく書き散らされていた。見るからに危ない人間から届いた呪いの手紙だが、
黒一色の中にいくつか赤が差している。『死ネ』と書かれたところには赤ペンで『表記ゆれ』と印づけられ、『削えろ』となっている部分には同じく『誤字』と書かれている。
裏を見ると、『熱意は十分に伝わってきますが、単語の強い印象にばかり頼りすぎています。繰り返しを多用しすぎると幼稚な印象を与えかねません。まずは語彙を増やすことから始めてみましょう』との感想が丁寧な字でつづられていた。
「赤ペン先生だこれ!」
「おう、しっかり校正したから返しといてくれ」
「え、どういう意味です?」
意味が分からず手紙から顔を上げると、
「それの差出人はお前の言ってたストーカーだ。んで
「え? ええ?」
「
「そ、え、本当に?」
「容疑者絞って鈴原パイセンに確認して指紋も筆跡もばっちり照合できたから間違いねえよ」
「そんな……」
「んで、そのストーカー野郎にこういうの送ってみたんで」
「えっと、『あなたのやったことは全て知っています。今日の放課後、二人きりで話をしましょう。下の地図の場所で待ってます。
それどころか筆跡も真似て書かれている。たとえ家族でも
「つーわけで、話し合いでも殴り合いでもしてさっさとけりつけろよお。んじゃ健闘を祈るぜ
「え、ついて来てくれないんですか!? 怖いんですけど!」
腰に抱き着いて引き留めると、彼は面倒臭そうに顔を歪めた。
「再起不能なくらいボッコボコにしてやりゃあいいだろ、この間みたいに」
「この前は緊急事態だったじゃないですか。今度は学内で知人ですよ!? そんな勇気あったらドーピングなんて持ち歩きません」
「は? なにクスリ?」
「いえ
「はあ?
「それは──。……っでも孤独じゃなければ心強いもんなんです! それに普通は助けてくれるでしょう!」
「知るか。どんなご都合主義の普通だよ。んなもんオレに求めんな。こっちだって暇じゃないんだぜ。犯人特定してやっただけでもありがたく思えー」
デコピンで
振り向きもしなかった先輩に、身体を失望とも悲しみともつかない感情に震わせながら頬を膨らませる。
「実はいい所もあるのかなって思い始めてたのに。あんな人、絶対あのときの恩人さんじゃない!」
無性に腹が立って、孤独でもやってろうじゃないかと拳を握る。
「ん?」
ぐしゃりと潰したコピー紙の裏に、何やら走り書きを見つけた。
「これって……?」
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