異世界転生〜7日間の命だけ転生された男

龍鳥

第1話 雷鳴と共に、異世界の門は開かれた



 「はいはーい。貴方は死にましたー」



 真っ白な空間と共に、僕こと晴夫は目を覚ました。死んだ、僕が?




 「あなたは誰ですか?」


 「私は女神!!あなたは選ばれたのよ!そして異世界に行って世界を救うのよ!!」



 自暴自棄のような台詞を、いとも簡単に言うのにムカついて、僕は女神を正拳突きで殴ったが、簡単に避けられた。

 ならばと、隠し持っていたハンドナイフで女神の服の袖に、切り込みを入れてやった。



 「あらあら!!暴れん坊さんね!!」


 「うるさい。僕を元の世界に返せ」


 「それはできない。貴方は事故で死んだのだから」



 そういえば、僕がここに来る前の記憶が抜けている。まさか、この女神が記憶を操作して僕の事故死を捏造したのでは?



 「貴方には2つの選択肢しかない。地獄で無限の労働を強いられるか、それとも異世界に行って世界を救うか!!さあさあ!!どちらにする!!」



 ……こいつ、僕が選ぶ選択肢なんて存在しないじゃないか。ならば女神諸共、無理心中したいところだが、この女神、なかなか隙を見せない。



 「それなら異世界に行くしかな」


 「さあこれで決まりだ!!エデンの彼方より来られし男よ!!いざ行かん!!虹を夢見た少女のように歌え!!大いなる殉教者の1人となって……」



 どうやら異世界に行く前に、僕は死ぬ予定が決まってるらしい。ふざけるな!!僕の人生、社会の歯車の一部でしか満足できない性懲りも無く生きてきた僕が、意味不明な女神に釣られて死んでたまるか!!



 「ならお前も道連れだ!!」



 僕は女神の首根っこ目掛けて一気に飛び込み、首を掴んで思いっきり絞めていく。彼女は息ができない苦しそうな声を上げるが、容赦はしない。僕の人生は、僕が決めるのだから。



 「小賢しい!!」



 そう言われて、女神は持っていた杖らしき物を、僕の頭部へと殴りかかった。あまりの痛さに、両手で頭を抱え込んでるのを狙ったのか、女神は杖を持って呪文を唱え始めた。


 

 「お前に異世界転生へと行く権利を与えたが、7日間の命しか与えない!!精々と踠き苦しめて……死ねえええ!!」



 白い空間の中に、突然と僕の足元に穴が空いた。僕はされるがままに、穴に落ちていった。深い深い、見えない暗い底へと。



 僕の命は、7日間しかないらしい。女神に言われた突然の死刑宣告。これは僕が望んだ人生なのか。

 

 そうなれば、全力で生きるしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界転生〜7日間の命だけ転生された男 龍鳥 @RyuChou

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ