捏造日記 ~偽りと崖~

@porigon_porygon

第1話

…これは、冴えない普通の高校生の日常を描いたフィクションです。…


…僕の両親は、何でも平均以上は出来る人でした。

だから屹度、その間に生まれる子も出来る子になるはずでした。それは両親だけでなく、僕もそう思ってました。

「でも、実際はそうじゃありませんでした。」

両親は万能な人でしたが、短所が無かった訳じゃありませんでした。例えば、父親は数学がとことんダメだったり、母親はコミュニケーションをとるのが苦手だったり。それでも、それを上回る長所がありました。

それで、僕はと言うと、驚くほど綺麗に短所だけを受け継いでしまったみたいです。そのせいで、何でも出来るという長所は、「何もかも中途半端」という短所になってしまいました。正直、こればかりは遺伝子の問題なので決して両親を恨んではいません。それどころかとても感謝しています。本当ですよ?…

…なんて昔話はこの辺にして、僕は今、今世紀最大の危機に直面しています。…そう。陽キャの揉め合いに巻き込まれたんです。

高校生になってから早3ヶ月。高校生になったからといって変わることは特になく、僕は安定の隅っこ民(いわゆる陰キャ)です。常に目立たない、喋らない。なんなら存在も認知されていない存在。あぁ、平和。なんて平和なんでしょう。そんな圧倒的平和を妨げたのはクラスカーストトップの2人の喧嘩。正直、迷惑です。しょうもない。なんの理由もなく声を荒げないで下さい。馬鹿馬鹿しい。…なんて心の奥で愚痴をこぼしながらも時計を見て暇つぶしをします。この本音は決して外に出してはいけません。陽キャに本音を突きつけてしまったら次の日から居場所が無くなってしまいます。怖いですね。だから皆も、何も言わないし、言えない。これは間違っているはずです。でも、指摘できない。権力って恐ろしい。あぁ、怖い。

…そんな事を考えてボーッとしていたら、喧嘩している陽キャの片方と目が合ってしまいました。まずい、と思った時にはもう遅すぎました。

「なんだお前?」

鋭い視線で怒鳴られました。ひぇ、怖い。するともう1人も、

「なんかあんのか?」

とドスの効いた声で聞いてきました。いきなり2人の陽キャから責められた陰キャ日本代表の僕(自称)はパニックに陥っていました。上手く頭が回らないまま、陽キャ達から悪罵を投げられます。混乱しまくった僕は咄嗟に謝りました。何も悪くないし、するつもりも無かったけど謝りました。傍から見ればさぞかし滑稽だったでしょうね…暫くしてから恥ずかしくなってきました。何はともあれ、喧嘩が終わったので良しとしましょう…。

ちなみに、喧嘩の理由は日直の仕事をどっちがやるか、という非常にしょうもないものでした。それだけの為に僕が恥をかいたなんて酷い話ですね。全く。

…はぁ。次からは喧嘩が起こったら寝たフリをしよっと。




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