小さい時の約束
「マユー!!」
「何のようだ?」
「これ、忘れ物!!」
オレは特製データ入りのUSBを渡す。
「パソコンで見てくれよな!」
夜な夜な作った、オレ達の前世の動画だ。オレめちゃくちゃ頑張った。なのに――。
「忘れた覚えはない」
無造作に握りつぶされポケットにぽいっとほうりこまれた。
「あぁぁぁぁぁオレの1ヶ月が――」
「勉強しろ!! 前回何番だった! まったくこんなことに時間を費やして――」
「む、こんなこととはなんだ! オレの中ではそれはもう大切な、大切な――っておーーーい!」
ずんずんと先に進む氷の女魔王様。
今日も思い出してもらえないようだ。だけどオレはあきらめない。
次なる一手は決めている。
◇
「こんなもの見なくたって覚えている……」
家に帰り、渡されたUSBをパソコンに繋いだ。
「
頬が熱くなりながら、タクヤが作った動画に一人で突っ込んでいた。
「私だって、大好きなんだ。どっちの貴方も」
でも、タクヤは過去ばかり引っ張ってくるんだ。
私として見てくれることは無理なのかな。
とても難しいのはわかってる。だって、私は勇者で彼が魔王だから。
パソコンをとじる。
「違う、もう勇者でも、魔王でもないんだ」
タクヤに返すためにUSBを引き抜こうと手を添えた。
少しだけ手を止めて、私はもう一度パソコンを開いた。
◇
「マユーーーーー!!」
「なんだ、タクヤ。あ、これ忘れ物」
ぽいとタクヤに向かって投げると上手にキャッチしていた。
「見てくれたのか!」
「知らん」
「うぅ、次はもっとパワーアップさせてあのエピソードを」
そんなことを言っていたけれど私は聞こえないふりをした。
「なぁ、マユ。こっちが忘れ物だった」
「な、それは、それは――」
5歳の時に結婚を誓った結婚届(手書きのお手製)。まだもっていたなんて……。
「結婚出来る年になったら私が出しに行くねって言ってただろー?」
ニヤニヤしながらタクヤが寄ってくる。確かに言った。言ったけどーーーー!
「馬鹿だろう? まず男は18からしか結婚出来ないし、それ出したところで受け付けてもらえない。だからこっちによこせ! ちょうどいい、燃やしてやる!!」
私が手を伸ばすとタクヤは魔王の時にして見せたような邪悪な笑みを浮かべた。
「ふははは、ならば18までこれはオレの部屋の額の中で大切に保管してやろう!!」
最悪の魔王の復活という言葉が頭の中にぽんと浮かんで消えた。
「勝手にしろ……」
私はいたって冷静に言葉を発する。耳が熱いのはきっと気のせいだろうけど、バレないようにタクヤから顔を背けておいた。
お前が氷の魔王になった日、オレは魔王でなくなった 花月夜れん @kumizurenka
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- 羽鳥(眞城白歌)★近況☆ ↓カクヨムコン10参加作品 「竜世界クロニクル - 約束の竜と世界を救う五つの鍵 -【完結/挿絵あり】」 https://kakuyomu.jp/works/1177354054894409037 フォロー、星評価、よろしくお願いいたします! 読み→◇◇◆◇◇ 今年は参加作品の読み中心で回ります。楽しみましょう♪ ☆★☆ ※フォロー作品の更新、作品フォロー、作者フォロー、応援(ハート)、以上の通知はOFFにしております。 ※KSP開始にともない、広告表示をオンにしてます。 読みに寄ったファンタジー書きです。 ゲームっぽい作品が好き。人外大好き。エログロリョナホラーは読めません。 イラスト描きます。気になる方はTwitterを覗いてみてね。 星は、最後まで読了しなくても入れることが多いです。感覚的にゼロか★★か★★★を決めてるだけですので、作品の良し悪しはわかりません。星三つ入れた作品には、忘れた頃に突然レビュー文を入れたりします。(キャッチコピーが思いついたら) 自作品はほぼ全作品がカクヨムオンリー。 応援(ハート)の通知は切ってますので、気軽に覗いていってください。サイレント読みも歓迎です。 ☆★☆ 旧PN) 氷海せら 羽鳥さぁら(お絵描きネーム)
- 結月 花「すみませーん、流行りの溺愛作品、何か置いてますかー?」 「そこにないならないですね」 「じゃあ転生悪女からのざまぁは?」 「そこにないならないですね」 「ほのぼのスローライフは……」 「そこにないならないですね」 自分の書きたいものを書きたいだけゆるゆるのんびり書いている物書き。アタイの性癖、ここに置いておきますね(*^^*) ふんわりした可愛い女の子と肉体派系のメンズ(ようはマッチョ)の組み合わせがど性癖500%。長編はこの組み合わせが多いかもしれません。 恋愛ものをメインに書いています。読後に幸せな気持ちになれるような大団円のハッピーエンドが大好きです。 短編は基本的にカクヨムのイベントなどに合わせて書くことが多いのでジャンルは様々。 短編はコメディも書きますが、長編はシリアス多めです。短編からお越しになった方が長編を読まれるとコメディとシリアスの温度差でインフルエンザになります。 読むのも書くのも好きなので、たくさん絡んでください! ※当サイトに掲載されている内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。(Unauthorized reproduction prohibited.)
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