03 心
「ルゥゥゥウゥウ……ドコォオォオオ」
こ…こいつ…俺の名前を呼んでいるの…か?
いやいやいやそんな訳ないだろ。
なんで俺の目の前にシーがいる?
「アソボォォオォオオオ…ルゥゥウゥウウウ」
いやいやいやいやいやいやいやいや……そんな訳がない…
だって、シーはさっき逃げたんだぞ…なんで俺の目の前にいる?
ダメだ…頭が追いつかない。
落ち着け…落ち着け…落ち着け
これはシーじゃ無い、これはシーじゃ無い、これはシーじゃ無い。
違う…違う…違う…違う!!!!
「お前は!!!!!!アメストリア・シークスじゃ無い!!!!!!!!!!!」
「ルゥゥウゥウゥゥウゥウウウウ、コッチキテェェエェエエ…」
「黙れ!!!!!!!!それ以上来たらお前を殺「お兄ちゃん!!!!!」
「………お、お前はシー…だよな?」
「???どうしたの?お兄ちゃん」
俺の事をお兄ちゃんと呼ぶシーがいる。
こいつにはさっき、俺が路地裏に行けと指示した少女だ。
そして前には俺の事を「ルー」と呼ぶ一人の少女がいる
顔も、身長も、呼び方もシ・ー・だ。
だけど、おかしいだろ。
シーが化け物になったのなら、なんで後ろには俺がいつも見ているシーがいるんだよ。
あれか?夢でも見てるのか?ハッハハハハッ、ハハハハハハハハハハ。
「なあ!!神様!俺が悪かったんだろ!?俺が妹や家族に無愛想だったから、こんな事するんだろ!!!悪かったよ、許してくれよ!!朝みんなと会ったら必ず挨拶をするし、家事でもなんでもしてやる!!だから許してくれー」
「ーーお兄ちゃん!!これは夢なんかじゃ無い!これは現じー」
「ー黙れ!!!!!!ならお前は誰だ!?それに俺の妹は俺の事を「ルー」と呼ぶ!!!!それに、これが現実ならどうして神はこんな事するんだよ!?」
頼む…夢であってくれ…こんな事が現実に起こる訳が無いだろ。
まだ俺にはやる事がいっぱいいっぱいある。
チッ……こんな事を思っても、化け物はまだこっちにやってくるのかよ。
ああ…夢ってこんなに残酷なんだな…
「ルゥゥウゥウゥゥウゥウウウウ」
……ウルサイ…シズカニシテクレ…
多分食われたら目が覚めるんだろ…
もう少しだ、もう少しだけ頑張れ、俺…
目が覚めたら何しよっかな、ふっ…起きてから考えるか
はあ、早く起き
ペチン
…………?今、俺…ビンタされたのか?
痛い…
「…ルー、最低…妹にそんな事言うなんて、それでも家族?」
ル、ルー?今こいつ俺の事をルーと呼んだのか?
いや、ルート呼ぶのは、俺の妹だけだ。
まさか、こいつが俺の妹?違う、こいつはさっき俺の事を「お兄ちゃん」って呼んだ。
こいつは妹のふりをしてるだけ。
本物はそんな場所にいない。
今頃はみんなを先導して逃げているはずだ。
だけど…だけど…その判断を俺の頭が全力で拒絶している。
この無表情な顔や呼び方もいつもの「シー」だ。
「な、なあ…お前はシーなの…か?」
頼む…違うと言ってくれ…そうじゃ無いと…俺…
「はあ…当たり前でしょ。私は貴方の妹アメストリア・シークスだよ。こんな時に何言ってるの…」
あ…あああああ…
「シー…シーだ……」
ーーー何かが壊れた気がしたーーー
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