02 極限


……………………………………




『ルー、ルー、起きて、ルー、あれ?泣いてるの?プ…プププ…ごめ…ププププ…ルーの泣いてる所、見てると笑い止まらなくて』


どこだ…ここ…家…か?


『ルー、何で無視するの?ちゃんとこっち見て』


うるさい…静かにしてくれ…俺は今寝てるんだよ。


俺はベッドの上で寝てるのか?


周りを見渡せば、俺の見たことある人ばかりだ。


その人達がベッドの周りを囲んでて、それ以上奥が見えない。


誰だっけこの人達…そうだ、思い出した。


俺の後ろに立ってるやつはアメストリア・シークス。


こいつはいつも俺に絡んできて、うざったらしいけどそのせいもあってか、俺はいつも笑顔になっている。


後俺の妹だ。


俺の右横に立ってるのはアメストリア・パーシー。


俺の母親なのだが、めちゃくちゃ厳しい…だけど裏を返せばそれ程愛してくれるって考えれば、結構嬉しい。


俺の右斜め前に立ってるのはアメストリ・グリース。


俺の父親なのだが、何故だろう…この人だけ良く見えない。


俺の足先に立っているのはヒューズおじさん。


この人は兵隊なのだが、仕事は全くしないし金で女と遊んでいる。


しかし、昔から俺の面倒を見てくれたから俺は好きだ。


俺の左斜め前に立っているのはジョーンおじさん。


この人もヒューズおじさんと同じ兵隊なのだが、全く仕事をしない。


後ヒューズおじさんの事、“旦那”とか言ってるし、ちょっときもい。


だけどこの人は祭りの時俺に沢山の食べ物を奢ってくれた。


そして最後に左横に立っている人がトーマスおじさん。


トーマスおじさんは言い方が少しきつい…だけどその割にはやっている事はとても優しく俺はそんなトーマスおじさんが好きだ。


この6人、皆んな俺の本当に大切な人達だ。


その6人が今、俺の目の前にいる。


あぁ…思い出した、俺は飛行機の落下と同時に、建物が崩壊してそれに巻き込まれたんだ。


俺がこうしてる間、皆んな何してんだろ…


早く起きて伝えないと。


………え?……皆んな、何でここから離れるんだよ。


頼む、一人にしないでくれ…頼む………


「ルー」


!?なあ、俺を呼んだやつ、どうしてそこから離れるんだよ。


頼む…お願い…離れないで………


『『『『『『後は、お願いね』』』』』
























  いってえ……俺は何を…そうだ!早く皆んなに…くそ、瓦礫の下に埋まってて動けねえ……


早くここから抜け出さないと…くっ、おもいいぃ、だめだ、びくともしない。


俺が……俺が伝えないとダメなんだ!俺がやんないと皆んなどっかに行っちゃうんだ…


だから早く抜けないと……


…………!!!誰かの声がする!救急隊の人か?何にせよ丁度いい。


大声を出せば気付くか?


「あのーーーー!!!!!誰かーーーー!!!瓦礫の下に埋まってるんですけど、助けてください!!」


ドン……ドン……ドン………


っ!足音がする!誰かがこっちに来てくれるんだ!そも一人だけじゃ無い、大勢の人だ!!


こう言うのを不幸中の幸いとでも言うのだろうか、あと少しで皆んな伝えられる!


!!動いた!あと少しで出れる!………来た!!!!!!


「あの!!助けてくれてあり…が…え?あの…皆、さん?」


何だ?様子がおかしい、何だこれ?ドッキリか?何で皆んな目が赤くなってて肌も黒い…と言うか焼けているという表現が正しいのか…な、これじゃまるでゾンビ…いやいや今はそんな問題じゃない。


「あのー…皆さん?」


「オォォオオオォ……」「アァアアゥ…」「ア〜〜〜……」




……………え?






「「「ァァアァァァアァアアアアアアア!!!!!!!」」」




「!!!!!いっ………たぁぁぁあ!!!!!何で俺の左腕に噛み付いてくるんですか!!


痛い!痛い!!痛い!!!お願いします!!もうやめてください!!!!!!痛いのやだ!!!腕切れる!!!!腕切れる!!!!!!腕切れるから!!!!!!!!!!!」




「「「ォォオォォオォォォォォオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」」」








グシャ














…………




「い、い、い…」




「いやだあぁああああああ!!!!!!!!!!」




う…腕が…腕が無くなった………




俺がこんなに苦しんでるのに目の前の化け物は俺の腕を取り合って喰っている


その喰いつきぶりは極限まで腹を空かせた猛獣が品も気にせずただ己の欲を満たす、そんな喰いつきぶりだ


その腕が終わったら、次は俺の右腕か?


ハハ…笑わせるなよ…こんな事が現実であって溜まるかよ…


「オォオォ…ォォオオ!!!!」


「……もうやめて…くれ…家族に会わせて…」


俺は今どんな顔をして願っている?


俺は今どんな姿勢で願っている?


きっとそれは、今までに無いくらい絶望した顔と今までにした事がない、アスファルトに手と足を付けた姿勢だ。


こんな事しても、こいつらはこっちに来る…


あああ…もう終わ




ー後はお願いねー




………うるさい…






-ルー、帰ってきたらまた話そうね-




だまれ…




-ルー、シー、お母さんはあなた達の幸せそうな顔を見ると、とても笑顔になるは-




っ!!!……くっ……




「「「オオオオオオォォォオオ!!!「そこを!!!!!!どけえ!!!!!!!!」


「「「オォ…ォォォォオオオオオオ!!!!!」」」


やった!何とか離れる事ができた!


けど、左腕が…


きっと俺は出血死でもう直ぐ死ぬだろう。


360度見渡せば建物は全部崩壊して、火の海だ。


あれからどれくらい時間が経ったのだろう…シー達は無事か…


いいや、無事かじゃ無い、無事だ


今はとにかく早く皆んなの所に!!




『ルーク!!』




!?聞き間違いか?いいや、違う、まさか…この声は…




「シー!!!何処だ!どこにいる!!」




間違いない、シーの声だ、だけどこの火の海の中だ。


見るだけで目が焼けてしまう、見つけようにも見つけられない…


一体どこ『こっち!後ろ!』


!?見えた!!良かった…ちゃんとシーだ。


いや、まだ安心するな、次はおじさん達や母さんを!…


………ダメだ…足が止まる。


息がもまたない…


息を吐きながら上を見れば、空は墨のような闇に侵されている


俺が気絶したのが大体4時位だから、そんなに時間が経ったのか。


息が整う目処がない。


分かりやすく言うと、“糸が切れた人形”とでも言うべきか。


そう言えば、俺は必死に走ってる最中は燃えている建物しかなかったけど、もしかしたら全員避難したのか?


いや、もしそうだとしたら、目の前の化け物は一体何なんだ…


『ルーク!!何してるの!!早くこっち来て!!』


……そうだよな…俺はシーの妹だろ。


そんな事考えるのは後だ


妹の前で命を張らないお兄ちゃんなんて、お兄ちゃん失格だ!!


「うぉぉおぉおぉおおおおおお!!!!!」


気合いでどうにかなる訳じゃ無い、だけどこうでもしてないと倒れる。


頑張れ!後もう少しだ!!!!


「「「「「ォォオォオォォォオオオオオオオ!!!!!」」」」」


くそっ!あのゾンビみたいな化け物、またこっちに来ている。


さっき大声を出したせいか?だとしたらこいつらの習性は声に反応する。


ん?声に反応すると言う事は、シーにも行くはずだ。


なのに何故シーの所には行かない?


いや、むしろそっちの方が好都合だ。


今の状況を考えると。


俺はシーの所に走るけど、化け物が邪魔で上手く行けない。


シーの周りには化け物は近づいていない。


まさにフリーだ。


とすると、俺が今考える最善の方法は…


「シー!!!!路地裏に行け!!!!道は狭いが、充分に身を潜める事ができる!!」


シーは化け物に襲われないと確証はできない、建物の中に入れとも言おうとしたが全部崩壊しているし、して崩壊してなかったとしても化け物がそこに入ってて、もし襲われたりしたらそれこそ一貫の終わりだ。


それにシーは足が速い、どれくらいかも言うと、ここら辺ではTOPを争うくらいだ。


俺は声を出すだけでも精一杯だと言うのに、自信無くすよ本当に…


だからせめて俺が死んでも、シーだけは…


『分かった!!ルークも早く来てね!!!!!!!!!!!』


…よし、行ったな、それじゃやるか


「ふ〜〜…ぅぅぅううううおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」


ゲホ…ゲホ……


あぁ…今ので完全に声と集中力が枯れた…


でもそのおかげで大体の化け物はこっちに来た。


恐らくシーの方向にいる化け物もこっちに来ただろう。


シーの走る姿はあんまり見えなかったけど、きっと冷静な顔してたんだろうな。


あいつはいつも無表情だ、そんなシーでもさっきは真剣な顔をしていた。


ったく…あんな時だけあんな顔見せてくんなよ。


嬉し泣きするだろうが…くそっ…


「ォオォオオ…」「アゥウウゥゥウ…」「ウウウウウウウ…」


はぁーっ!もう無理だ!疲れた!


………きっとシーはどこかで身を潜めてたけど救助隊の人が助けてるかもしれない、


良かった。


最期は兄らしい事はできた!


ありがとう、皆んな












「良い人せ「ルゥゥゥゥ……」
















…………え?

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